今朝は、昨日の雨も上がり、五月のすがすがしく晴れた空が広がっていた。いつもの場所、勤め先の入口にある桜の樹の向こう側に富士山を見た。雪解けが進んでいた。八合目あたりから上にはまだ残雪がところどころあるが、山肌は青みがかり、夏の富士へと移ろいつつある。これから一月半ほど経つと、すっかり夏山へと変わる。
 日中の気温は29度を超えた。それでもこの時期らしく不愉快な蒸し暑さはなかった。帰宅後、NHK甲府の夜のニュースで、「富士吉田市で、富士山の雪どけに伴って現れる鳥のように見える雪形、『農鳥(のうとり)』が12日確認された」という報道があった。(NHK NEWS WEBにその記事と映像が載っている)
 農鳥はさすがに甲府盆地からは見えない(それらしきものが見えないこともないのだが、形がはっきりしない)。富士北麓の地では春の訪れを告げる風物詩として、農家が農作業を始める時期の目安とされてきた。寒冷のこの地の桜の開花は遅い。桜の季節が過ぎてまもなく五月を迎える。しばらくすると、農鳥が現れる。大地にも街にも活気が出てくる。短い期間で、春から初夏へ、そして山開きの時へと向かっていく。
  志村正彦『桜の季節』の「桜の季節過ぎたら/遠くの町に行くのかい?」にも、このような時節の背景があるのかもしれない。
 数回にわたって、『桜の季節』について書いてきた。この一年間、ある桜の樹を見つめ続け、その経験をもとに考えた。巡り合わせのように視た二つの番組、「桜守」佐野藤右衛門の話、岩崎航の「桜吹雪」の詩にも触発された。番組との出会いは半ば偶然だが、その偶然によって動かされるのは大切な作用となった。今日の農鳥のニュースもそのように働いた。
 『桜の季節』と桜についてまだ書いてみたいことがあるが、季節も移り変わったので、今年はひとまず終わりとする。いつかまた再開したい。季節の循環のように、書くことも循環していく。
 この「偶景web」も開始以来、三年半ほどになる。今年になって、回数が増えた。単純に書いてみたいことが多いからだが、「志村正彦ライナーノーツ」を中心として、他の音楽に関すること、日々の風景や出来事、小さな旅や遠くへの旅など、様々な事柄について記している。お節介ながら紹介したい音源や映像、VF甲府の話題もある。個人的な備忘録のような感じもある。少しでも書くことで、その後展開していく契機を得られる。長文のもの、短文のもの、量や質は異なるが、とにかく続けていくことにする。
 私の住む甲府でのイベント、例えば「桜座」でのライブについては、記録する意味合いもある。東京と異なり山梨では、何かを書き記す人の絶対数が少ない。誰かが書き残しておかねば、忘れられてしまう。そのことへの抗いでもある。
 春夏秋冬、時や季節に応じて、風景を眺めることは心を動かす契機となる。僕の場合、この年になって、それを志村正彦・フジファブリックの歌から教えられた。誇張ではいささかもなく、そう言いきれる。五十歳代の摩り減って衰えた感受性であっても、何かしら動いていくものがある。この動いていくものを少しでも捉え、記してみたい。
公演名称
〈太宰治「新樹の言葉」と「走れメロス」 講座・朗読・芝居の会〉の申込
公演概要
日時:2025年11月3日(月、文化の日)開場13:30 開演14:00 終演予定 15:30/会場:こうふ亀屋座 (甲府市丸の内1丁目11-5)/主催:甲府 文と芸の会/料金 無料/要 事前申込・先着90名/内容:第Ⅰ部 講座・朗読 「新樹の言葉」と「走れメロス」講師 小林一之(山梨英和大学特任教授)朗読 エイコ、第Ⅱ部 独り芝居 「走れメロス」俳優 有馬眞胤(劇団四季出身、蜷川幸雄演出作品に20年間参加、一篇の小説を全て覚えて演じます)・下座(三味線)エイコ
申込方法
右下の〈申込フォーム〉から一回につき一名お申し込みできます。記入欄の三つの枠に、 ①名前欄に〈氏名〉②メール欄に〈電子メールアドレス〉③メッセージ欄に〈11月3日公演〉とそれぞれ記入して、送信ボタンをクリックしてください。三つの枠のすべてに記入しないと送信できません(その他、ご要望やご質問がある場合はメッセージ欄にご記入ください)。申し込み後3日以内に受付完了のメールを送信します(3日経ってもこちらからの返信がない場合は、再度、申込フォームの「メッセージ欄」にその旨を書いて送ってください)。
*〈申込フォーム〉での申し込みができない場合やメールアドレスをお持ちでない場合は、チラシ画像に記載の番号へ電話でお申し込みください。
*申込者の皆様のメールアドレスは、本公演に関する事務連絡およびご案内目的のみに利用いたします。本目的以外の用途での利用は一切いたしません。
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