But if ye come, when all the flowers are dying, If I am dead, as dead I well may be. Ye'll come and find the place where I am lying. And kneel and say an Ave there for me.
村上春樹は「シーク・アンド・ファインド(seek and find)」が自らの物語の基本構造であることを明かしている。他者(多くの場合は女性)を探し求め(seek)、見つけ出す(find)」というレイモンド・チャンドラーの探偵小説の影響を受けた枠組である。男性が主人公の場合、その他者はほとんどが女性である。男性は女性を探し出そうとするが女性はすでに失われている、あるいはかろうじて女性を探して見つけるがその女性はすぐに失われてしまう。探索・発見・喪失という構造である。
《街とその不確かな壁》物語を総合すると、遭遇(発見)・喪失・探索・再遭遇(発見)・喪失あるいは共生というさらに複雑な複雑を持つ。中編『街』は遭遇(発見)・喪失・探索と再遭遇(発見)・喪失という「シーク・アンド・ファインド(seek and find)」を反復する構造であるが、長編『街』は遭遇(発見)・喪失・探索と再遭遇(発見)・共生を経て最終的に喪失という「シーク・アンド・ファインド(seek and find)」を二重に反復する構造である。この二つに対して、長編『世界』の「世界」パートは再遭遇(発見)から始まり、過去の記憶にある遭遇(発見)・喪失と探索に遡行した上で、共生に至るという時間的に錯綜させて多層化した構造を持つ。この複雑に多層化した構造の小説を脚本化、舞台化することはかなりの困難を伴っただろう。というのか、ほとんど不可能とも言えるような作業であっただろう。さその困難や不可能に直面しながら、『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』の制作チームがこの舞台を完成させたことは充分に評価できる。
2月にフジファブリックが活動を休止した。「フジファブリック LIVE at NHKホール」という休止前最後のライブがあったが、2010年以降の楽曲だけが演奏された。山内総一郎・金澤ダイスケ・加藤慎一の所謂「三人体制フジファブリック」の集大成となっていた。2024年8月の「フジファブリック 20th anniversary SPECIAL LIVE at TOKYO GARDEN THEATER 2024「THE BEST MOMENT」」は志村曲を映像と共に演奏するという特別な演出によって、志村への感謝とリスペクトを表現した。このライブは「志村正彦・フジファブリック」の集大成という意味合いが濃かった。2024年8月と2025年2月の二つのライブによって、フジファブリックの活動の円環は(ひとまず、をやはり入れるべきなのだろうか)閉じられた。