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2023年9月17日日曜日

ヴァンフォーレ甲府にチカラを! ACL「真っ向、アジア」

  ヴァンフォーレ甲府のACLでの闘いがいよいよ始まる。9月20日、オーストラリア・メルボルンでアウェイの試合、10月4日、東京の国立競技場でホームの試合が開催される。山梨という小さな県の経営的にも小規模のJ2チームが、海を越えて、アジアの大舞台に登場する。添付画像にあるように「真っ向、アジア」。畏れるものもなく、失うものもない。純粋にサッカーによって、オーストラリア・タイ・中国のチームや人びとと交流することができる。



 ACLは、アジアサッカー連盟(AFC)主催の「AFCチャンピオンズリーグ」の略称。2023年9月からグループリーグがスタートし、2024年5月に決勝が行われる。VF甲府の全日程は以下の通り。全試合がDAZNで放送される。


① 9.20(水)19:00 アウェイ:Melbourne Rectangular(オーストラリア) 
   メルボルン・シティVS 甲府 

② 10.4(水)19:00 ホーム:国立競技場 
   甲府VS ブリーラム・ユナイテッド  

③ 10.25(水)19:00 アウェイ:Huzhou Olympic Sports Center(中国) 
   浙江FC VS 甲府  

④ 11.8(水) 19:00 ホーム:国立競技場 
     甲府 VS 浙江FC   

⑤ 11.29(水)19:00 ホーム:国立競技場
     甲府 VS メルボルン・シティ  

⑥ 12.12(火)19:00 アウェイ:Buriram Stadium(タイ) 
       ブリーラム・ユナイテッドVS 甲府   



 AFCの公式ページには、VF甲府のレジェンド山本英臣の記事も掲載されている。WED, 13 SEPTEMBER, 2023 〈Ventforet legend Yamamoto ready to cherish AFC Champions League™ experience〉こういう記事を読むと、甲府がアジアで闘う実感がわいてくる。


 佐久間悟社長は「山梨日日新聞」2023年9月5日付の記事で、ACLに出る意味と目標を次のように述べている。


「存続の危機を乗り越え、サポーターや山梨県サッカー協会、行政ら多くの人に支えられてきた。Jリーグの中で地方クラブのモデルケースとなり、昨季に天皇杯を優勝して出場できる。県民や県ゆかりの皆さまとともに出るということはあるが、同時に今まで関わりのない東京や首都圏の人にクラブを知ってもらえる」

「試合の設営や戦い方などでVF甲府らしさを表現し、『面白いね』と思われればいい。ローカルなクラブから全国、世界へ一歩を踏み出すようなきっかけにしたい」

「国立競技場で行うホームゲームの観客動員数は平均1万人を超えたい。県民にとっては交通費もかかり、(チケット価格を抑えて)多くの人に娯楽としてフットボールを楽しんでもらいたいと考えた。みんながスタジアムに足を運び、一体感をつくる場にしたいし、それがクラブの目指す方向」


 本来は山梨県でホームゲームを行うのだが、小瀬スポーツ公園陸上競技場(JIT リサイクルインク スタジアム)がACLのスタジアム基準を満たしていないので、代替として国立競技場になった経緯がある。かなり前から新しい総合球技場(サッカー等の専用スタジアム)建設の構想があるのだが、まだ実現に至っていない。極めて残念なことだが、佐久間社長が言うように、東京や首都圏の人が観戦や応援をしてくれるというポジティブな価値もある。チケット価格は、プレミアムシートは別として、通常のシートのカテゴリー1~7までが5,000円~2,000円と国立競技場開催の国際試合としては破格の安さである。

 10.4(水)のチケットの先行販売(シーズンシート個人会員やヴァンクラブ会員向け)が昨日から始まったので、私も早速チケットを購入した。夕方仕事を終えてから国立に向かう予定だ。一般の発売は9月23日からで、Jリーグチケットなどで購入できる。


 佐久間社長は先ほどの記事の終わりでこう述べている。

「みんなでVF甲府を応援してもらいたい。国立競技場だからいってみようかなという、他クラブのサポーターもいると思う。そういう人も含め、サッカーを楽しんでもらえるイベントにしたいと考えているので、ぜひスタジアムに足を運んでいただければと思う」


 このブログでは何度か紹介したが、今回もやはり、志村正彦の言葉を紹介したい。2009年12月5日付の志村日記には〈甲府がJ1に上がった日は嬉しくて乾杯したな、そういやあ。〉と書かれている。志村も天皇杯優勝やACL出場を喜んでくれたことだろう。

 東京やその近郊の方で、サッカーファン、スポーツ観戦の好きな方、山梨に親しみを感じている方々にお願いを申し上げます。10.4(水)、10.25(水)、11.8(水)に国立競技場開催のACLホームゲームに足を運んでいただき、ヴァンフォーレ甲府を応援してください。

 よろしくお願いいたします。


2023年9月10日日曜日

夢の領野の〈ソレ〉 [志村正彦LN337]

 志村正彦・フジファブリック『唇のソレ』(詞・曲:志村正彦)の楽曲は夢のなかで「睡眠作曲」によって作られたが、歌詞も夢に影響によって作られたのではないだろうか。「催眠作詞」、夢工作による作詞の過程である。

 『唇のソレ』の結びの一節である。


  それでもやっぱそれでいてやっぱり唇のソレがいい!


  〈それでも〉〈それでいて〉〈ソレがいい〉の〈それ〉音の反復と連鎖。〈やっぱ〉〈やっぱり〉の音の反復。それらの音がもつれ合いながら複雑に絡み合って、〈唇のソレがいい!〉と歌われる。音の連鎖と反復によって〈ソレ〉は発話されたのだが、イメージとしても夢の領野に登場したのではないだろうか。


 ジャック・ラカンは『精神分析の四基本概念』の「Ⅵ 目と眼差しの分裂」で、〈夢の領野ではさまざまなイメージの特徴とは、「それが現れる」ということです〉と指摘し、次のように述べている。(改訳文庫版「上」p.166-167)


  夢テクストを座標の中に位置づけ直してみてください。そうすれば「それが現れる」が前面に出ているのが解るでしょう。それは、それを位置づけるさまざまな特徴とともにあまりに前面に出ているので――それらの特徴は、覚醒状態において熟視されているものなら持つはずの地平という性質を持たず、閉じているということや、また夢のイメージの方から出現してきたり、陰影をなしたり、シミになったりするという性質、さらにはそれらのイメージの色が強調されたりすることなどですが――夢における我われの位置は、結局のところ本質的には見ている人の位置とは言えないほどです。


 夢の中で〈それ〉が現れる。〈それ〉はあまりにも前面に出ている。〈それ〉は陰翳をなしたり、シミになったり、色が強調されている。夢の中の〈それ〉とは〈それ〉としか名付けられないものである。私たちは夢の中で〈それ〉に出会う。〈それ〉は人であったり物であったり風景であったりするが、現実の〈それ〉とは異なっている。また、説明しようもなく、〈それ〉としか伝えられない感触がある。〈それ〉は覚醒後に消えていく。覚醒直後は記憶が残っていたとしても、時間の経過と共に、実質が失われ、〈それ〉としか言いようのないものに変質する。


 志村正彦が『唇のソレ』で歌いたかった〈ソレ〉は、具体的には〈唇の脇の素敵なホクロ〉だった。唇の〈ホクロ〉は、〈僕〉の欲望の対象である。フロイトもラカンも、夢は主体の欲望を成就すると述べている。

 唇の〈ホクロ〉が〈僕〉の夢のスクリーンに登場する。〈ホクロ〉は夢の前面に現れて、陰翳をなし、シミのように浮かんでくる。〈ホクロ〉は次第にその具象性を剥ぎ取られ、〈ソレ〉としか名付けられない、曖昧なとらえがたいものに変換されてゆく。夢のなかで欲望の対象は次第に享楽の対象となっていく。〈ソレ〉は〈僕〉の享楽の対象と化す。