2026年5月29日金曜日

〈生きてきた名声〉ERO「Getting The Fame」-映画『みらいのうた』3

 映画『みらいのうた』には二人の主人公がいる。吉井和哉と、彼をロックの世界に導いたのERO(高林英彦、バンドURGHPOLICEのボーカル)の二人である。


 ERO作詞の「Getting The Fame」という歌が、吉井和哉の「みらいのうた」と共に、この映画の中心軸となっている。映像はEROが「Getting The Fame」の2番の歌詞を新しく作っていく姿を追っていく。

 最後の教会でのライブでEROはこの歌を歌う。吉井がアコースティックギターで伴奏する。この歌は英語で歌われている。映画では歌詞の日本語訳が添えられていた。ぜひ映画でそのシーンを見ていただきたい。

 印象深いサビの日本語訳は次の通りである。


 毎日、毎晩、いつでも

 耳をふさぎ、目を閉じて

 生きてきた名声を手に入れるまで


 最後の「Getting The Fame」の「The Fame」が「生きてきた名声」と訳されている。「名声」に「生きてきた」という修飾語があることに感慨を覚えた。

 1985年当時のオリジナルヴァージョンでは、この「名声」は通常の意味、つまり、ロックバンドとしての名声を得ること、音楽シーンで成功すること、を指し示していたのだろう。しかし、40年度の現在、EROは自分の人生を振り返り、「生きてきた」ことそのものによって得られる「名声」というように、この「Getting The Fame」の意味を読み換えたのではないだろうか。さらに、「生きてきた名声を手に入れるまで」とすることによって、EROはまだその過程にいること、そのたびの途中にいることを力強く歌い上げていた。


 なお、7月22日リリースの『映画「みらいのうた」オリジナル・サウンドトラック』では「Getting The Fame」の次の音源が収録される予定だ。

Getting The Fame(Kichijoji Zenshinza Gekijo, 1986.12.21 -Short size)/ URGH POLICE

Getting The Fame(from 映画「みらいのうた」) / ERO / 吉井和哉 / 鶴谷崇

Getting The Fame(Instrumental -Organ Ver.)


 URGH POLICE時代の「Getting The Fame」の音源がYouTubeにある。12分近い大作だ。編成は、Vo,G: 高林 英彦 (ERO)、G: 高林 正則 (MARBOH)、B: 吉井 和哉 (ROBIN)、Ds: 栗田 卓展 (TACKTEN)。なお、URGH POLICEのアルバム『URGH !』はインディーズから1987年にLPレコードとしてリリースされ、1995年12月にCDとして再発売された。全8曲中の最後の曲が「Getting The Fame」である。



  YouTubeには当時のURGH POLICEのライブ映像がある。

  URGH POLICE  I`m Bad Hang Over



 若き日のERO(高林英彦)や吉井和哉が映っている。1980年代の半ばにはビジュアル系のハードロックバンドが流行っていた。メジャーデビューする可能性もあったのだろうが、EROが静岡での恋人との暮らしを大切にするために東京に来ることを拒んだことで実現しなかったようだ。


 最後に、シネマトゥデイのインタビュー「THE YELLOW MONKEY・吉井和哉、喉頭がんからの復活が描かれたドキュメンタリーの制作秘話語る 映画『みらいのうた』 東京国際映画祭」を紹介し、AIでテキスト化したものを重複する言葉などを省略した上で引用したい。


 

 吉井和哉はEROさんを起用した理由をこう語っている。

僕のドキュメンタリーを撮ってもらおうっていう話になった時に、僕のドキュメンタリーって何も面白くないだろうと思って。その数ヶ月前にその病気で倒れた、EROさんをちょっと、まあ、なんか彼に出ていただいて、少し生活の援助とかできたらいいなということで彼を説得して。そうやって回してみて、何に使うかわかんないけど、本当に映画にする予定もなかったので、あの、回してみてもいい?って言ったら「いいよ」ってことで。あの日初めて行った時の映像がまさに初めて行った時でした。

 エリザベス宮地はEROの存在感や魅力についてこう述べている。

はい、魅了されてました。最初からなんか、もちろんかっこいい、見た目のカッコよさっていうか。なんか、なんとなく撮影してると、なんて言うんですか、カメラが喜ぶような感覚があって。なんかすごい華があるなと思って、EROさん。

「お二人の復活ライブまでを撮ろう」っていうのは変わらずだったんですけれども、ただそれを決めた半年後に吉井さんの喉頭がんだったりが見つかってしまって、そこからは正直、先が読めなくなりました。全く、はい。EROさんもあそこまで、最後の教会のシーンまでギターを弾いて歌えるようになるまでが、やっぱり3年間必要だったので。その、結果的に3年間かかりましたけど、どれくらいの期間でどうなるかっていうのは、正直途中から特に分からなくなりました。


 このように、吉井和哉・ERO(高林英彦)二人の復活ライブまでには大変な紆余曲折があったのだが、この映画はその過程を丁寧に追いかけている。

 〈生きてきた名声を手に入れるまで〉歌い続ける姿が、〈人生の7割は予告編で 残りの命 数えた時に本編が始まる〉ことを静かに伝えている。


0 件のコメント:

コメントを投稿