映画『みらいのうた』を見ることができた。吉井和哉と彼をロックに導いたERO(高林英彦)の生の軌跡を追ったドキュメンタリー映画。監督はエリザベス宮地。2025年制作。
吉井和哉については志村正彦との関係で関心を持ち始めた。
志村正彦・フジファブリックは、THE YELLOW MONKEYのトリビュートアルバム『THIS IS FOR YOU~THE YELLOW MONKEY TRIBUTE ALBUM』で「Four Seasons」をカバーした。このアルバムの発売日が2009年12月9日であったことから、志村の声が生前最後に録音されてリリースされた音源だとされている。
そのような関係があったことから、吉井和哉は、翌年の2010年7月17日に富士急ハイランド・コニファーフォレストで開催された志村正彦の追悼の意味合いが濃いコンサート『フジフジ富士Q』で『マリアとアマゾネス』と『Anthem』を歌った。筆者はこのコンサートを収録したDVDを見ただけだが、特に『Anthem』を歌う吉井の声と瞳、その時間の富士山や茜色に彩られた夕景は、心に深く刻み込まれるものだった。
この映画に関しては〈人生の7割は予告編で 残りの命 数えた時に本編が始まる〉という紹介文に惹きつけられた。昨年の12月5日公開以降、劇場でなんとか見ようと上映館を探したのだが場所と時間の問題で見ることが叶わなかった。配信されるのを待っていたところ、幸いなことに4月27日からU-NEXTで独占配信が始まった。さっそく先の連休中に視聴したが、心を深く動かされる作品だった。3日間のレンタル期間中、毎日一回、結局三回見ることになった。この配信の本編終了後には14分ほどのU-NEXT限定特典映像 があった。これも興味深いものだった。
まずこの映画の予告編を紹介したい。
予告編にある内容を簡潔にまとめる。吉井がEROとの40年ぶりのセッションを行うために撮影を開始するが、EROは大病を患っていた。吉井の喉頭がんも発覚した。2022年から2025年までの3年間、二人が闘病しながら人生と音楽に向き合っていく姿を記録していく。
これから見る人のために具体的な内容に触れることは控えるが、一つだけ、本当の夢はどういうものだったか、というインタビュアーの問いに対する吉井和哉の回答を引用したい。
静岡の少年の時のまま
変わらずに
すべてを成し遂げたいなと思っていることが夢かもしれない
どれだけ自分の心を汚さずに成功できるかっていうこと
汚れたけどだいぶ 汚れたけどいかにそこを残したまま
いろいろ成し遂げたいというのがもしかしたら夢かな
吉井の〈静岡の少年の時のまま 変わらずに すべてを成し遂げたい〉という言葉には、故郷の静岡という場と少年という時代への無垢な思い、そこから発する夢への強い思いがあふれている。
吉井は1966年東京で生まれたが、五歳の時に不慮の事故で父親を亡くした後、母親の故郷静岡で暮らすことになる。静岡での少年時代と青年時代の始めまでの日々が吉井の人生を決定づけた。ERO(高林英彦)との出会いによってロックの世界に入り、やがて、EROがリーダーでボーカルのバンド「URGH POLICE アーグ・ポリス」に加入しベースを担当する。1988年、THE YELLOW MONKEYを結成し、ボーカル・ギターと作詞・作曲担当。1992年にメジャー・デビュー。その後の活躍は音楽ファンのよく知るところだろう。
この映画の英語タイトルは『Time Limit』。ストレートな題名だが、人生の終わりが少しずつだが確実に訪れてくる年齢の人間の心に染みこんでくる作品だった。僕はこの映画に深く共感した。〈人生の7割は予告編で 残りの命 数えた時に本編が始まる〉という言葉が迫ってきた。吉井和哉やTHE YELLOW MONKEYのファン、ロック音楽を愛する人だけでなく、自分の人生そのものについて考えたい人にとって必見の映画である。ご覧になることを勧めたい。
(この項続く)
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