公演名称

〈太宰治「新樹の言葉」と「走れメロス」 講座・朗読・芝居の会〉

公演概要

日時:2025年11月3日(月、文化の日)開場13:30 開演14:00 終演予定 15:30/会場:こうふ亀屋座 (甲府市丸の内1丁目11-5)/主催:甲府 文と芸の会/料金 無料/要 事前申込/先着90名 *下記の申込フォームからお申し込みください。

公演内容

公演内容:第Ⅰ部 講座・朗読 「新樹の言葉」と「走れメロス」講師 小林一之(文学研究 山梨英和大学特任教授)朗読 エイコ、第Ⅱ部 独り芝居 「走れメロス」俳優 有馬眞胤(劇団四季出身、蜷川幸雄演出作品に20年間参加、一篇の小説を全て覚えて声と身体で演じる)・下座(三味線)エイコ

申込案内

下記の申込フォームから一回につき一名のみお申し込みできます。記入欄に ①名前 ②メールアドレス  ③メッセージ欄に「11月3日公演」と記入して、送信ボタンをクリックしてください。(ご要望やご質問がある方はメッセージ欄にご記入ください) *申し込み後3日以内に受付完了(参加確定)のメールを送信しますので、メールアドレスはお間違いのないようにお願いします。3日経ってもこちらからの返信がない場合は、再度、申込フォームの「メッセージ欄」にその旨を書いて送ってください。 *先着90名ですので、ご希望の方はお早めにお申し込みください。 *申込者の皆様のメールアドレスは、本公演に関する事務連絡およびご案内目的のみに利用いたします。本目的以外の用途での利用は一切いたしません。

申込フォーム

名前

メール *

メッセージ *

2016年7月13日水曜日

愚痴と虹-クボケンジのtweet、Analogfish『No Rain (No Rainbow)』

 志村正彦の誕生日7月10日。twitterでは沢山の呟きがあふれていた。なかでもひときわRTされていたのがクボケンシのtweetだった。

  メレンゲ(クボケンジ) ‏@kubokenji   7月10日 

 志村、誕生日おめでとう。36才だな?
 何もかもを失ったと思って唄った
 そんな歌にも続きはあったよ
 ただね、一緒に年を取りたかったね
 生きてたら何十年も後に、
 ようやく見つけた煙草が吸える喫茶店で年よりかは若く見える白髪姿の君は向か      い側の僕にやっぱり愚痴を言ってるはずだったんだ

 何十年も後、「煙草が吸える喫茶店」で、すっかりお爺さんになった「僕」クボケンジと「君」志村正彦は向かい合って座る。「白髪姿」の「君」は「僕」に「愚痴」を言っている。
 
  「愚痴」ってなんだろう?分かっているようで分からない。辞書を引くと、「言ってもしかたのないことを言って嘆くこと」とある。なるほど。過不足のない、簡潔で明確な定義だ。「愚痴」は要するに「嘆き」の言葉。それは「僕」と「君」との間で共有される。というか、「僕」と「君」との間でしか共有されない。二人の間で「嘆き」が共有されることが暗黙の前提となり、「言ってもしかたのないこと」を言うことができる。
 「君」の「愚痴」は嘆きの言葉。そうなる「はずだった」という「僕」の呟きもまた「嘆き」の言葉となる。
 それでも、その光景は幸せなものにちがいない。

 その光景からある歌のことを思い出した。Analogfish『No Rain (No Rainbow)』(作詞:下岡晃 作曲:Analogfish)。最近公開されたミュージックビデオ(Director : 笹原清明)も比類ないほどすばらしい。


 歌の主体の「僕」はこう語る。

 寄った居酒屋は値段の割に酷いもんで
 それを愚痴る僕に君は思い出したように
 「ただ好きなだけでこれはサービスではないの
 ただ美しいだけで虹は雨の対価ではないでしょ」

  「でも…」 she says
 “No Rain No Rainbow”

 一組の男女の対話劇が繰り広げられる。
 この時代に、値段の割に酷い「居酒屋」で、「僕」と「君」は向かい合って座る。「愚痴る僕」に向かって、「君」は「ただ美しいだけで虹は雨の対価ではないでしょ」と諭す。日常の断片の嘆きと諭し。
 それでも、その光景は幸せなものにちがいない。

 “No Rain No Rainbow”。雨がなければ虹が現れることはない。でも、虹は雨の対価ではない。虹は、ただ美しいだけ、そういうあり方で出現する。この歌では「代償」「支払う」「サービス」「対価」という言い回しが反復される。何かと何かの価値が交換される世界。資本の世界と言い換えてもいいだろう。この世界の中で、虹は何物とも交換されない。虹が虹として存在するのは、虹が私たちへの純粋な贈与であるからだ。かけがえのない贈り物だからだ。そのことを伝える「君」「she」の言葉もまた美しい贈与のように響く。

 クボケンジのtweet、下岡晃(Analogfish)のlyric。
 「愚痴」を言う「僕」たち、男たち。
 それでも、虹は現れる。
 そう祈る。

 No Rain No Rainbow。

0 件のコメント:

コメントを投稿