ページ

2021年4月3日土曜日

ユニコーン「すばらしい日々」/1993年8月 CSA改めSMAちゃん祭り

 1月31日の奥田民生甲府公演<MTRY TOUR 2021>の生配信ライブについて以前書いたが、そのレポートが「DI:GA ONLINE」に載っていた。タイトルは〈奥田民生、3年ぶりのバンドツアー「MTRY TOUR 2021」がスタート!ツアー初日をレポ〉、取材・文は兵庫慎司。志村正彦やフジファブリックについての記事をたくさん書いているライターだ。こうしたレポートを読むと、記憶に刻まれやすくなる。

 僕が初めて奥田民生・ユニコーンのライブを見たのは、1993年8月1日、富士急ハイランド・コニファーフォレストで開催された「サウンドコニファー229 CSA改めSMAちゃん祭り1993」だった。「サウンドコニファー229」は富士急行グループ主催の野外フェスティバル、SMAはSony Music Artistsの略称。この日はユニコーンを中心とするSMA所属バンドのフェスとなった。この年の9月、ユニコーンの解散が発表されたので(その後再結成されているので、最初の解散と言うべきか)、その一月ほど前の貴重なライブとなった。

 30年近く前のことなので、記憶はすでにかなり失われている。ネットで調べたがあまり情報がない。どうしたものかと思っていたところ、「ロケンローラーはお熱いのがお好き?/CSA改めSMAちゃん祭り1993●夏」(「ARENA37℃」1993年10月号臨時増刊号、音楽専科社)という雑誌が見つかったので、早速注文した。表紙の写真には90年代前半の雰囲気が濃厚にある。本文を読んでいくと、当日の断片のようなシーンがいくつか浮かんできた。



 甲府から車で出かけた。とにかく暑い日だった。富士北麓とは思えないくらいに日光がとても強かった。暑さでクラクラするなかで、富士急の会場には爆音が響いていた。出演者は、Dr.StrangeLove、真心ブラザーズ、SPARKS GO GO、すかんち、ユニコーン、そして全員によるセッション。この順でステージに立った。

 ユニコーンの演奏曲は次の通りだ。

  おかしな雪が降レゲエ町
  あやかりたい'65
  時には服のない子のように
  薔薇と憂鬱
  裸の王様
  感謝ロック
  すばらしい日々
  大迷惑


 僕のお目当ての曲は「すばらしい日々」だった。この年、1993年4月リリース。この曲の歌詞は、それまでの日本語ロックにはない世界を創り上げていた。奥田民生の言葉の才能は抜きん出ていた。演奏されることを期待して行ったのだが、それは叶った。富士急という会場でこの歌を生で聴くことができ、僕にとってすばらしい日となった。

 付言すると、この2年後の1995年8月19日、同じ会場の「SOUND CONIFER 229 エレキな若大将たち! 」で、志村正彦は奥田民生の音楽に遭遇した。

 当時のミュージックビデオである。



    

        すばらしい日々  作詞・作曲:奥田民生


  僕らは離ればなれ たまに会っても話題がない
  いっしょにいたいけれど とにかく時間がたりない
  人がいないとこに行こう 休みがとれたら
  いつの間にか僕らも 若いつもりが年をとった
  暗い話にばかり やたらくわしくなったもんだ
  それぞれ二人忙しく汗かいて

  すばらしい日々だ 力あふれ すべてを捨てて僕は生きてる
  君は僕を忘れるから その頃にはすぐに君に会いに行ける

  なつかしい歌も笑い顔も すべてを捨てて僕は生きてる
  それでも君を思い出せば そんな時は何もせずに眠る眠る
  朝も夜も歌いながら 時々はぼんやり考える
  君は僕を忘れるから そうすればもうすぐに君に会いに行ける


 君は僕を忘れる。君の中で僕が忘却される。そして、君の中で僕が不在になる。どれほどの時が流れるのだろうか。ようやく、「その頃」という時にたどりつく。その時が到来すれば、僕は「すぐに君に会いに行ける」。

 「君」の中で「僕」が不在になり、その不在が行き渡ることによって初めて、僕は君と再会できる。その時、その不在はひとつの在へと変わるのだろうか。その時間の歩みは「すばらしい日々」となるのだろうか。

 不可思議な世界と時間を創り出したこの歌の魅力は、三十年近い時が経った今日でも失われていない。

 

0 件のコメント:

コメントを投稿