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2013年11月4日月曜日

ベスト3 (ここはどこ?-物語を読む 6)

 『笑ってサヨナラ』を聴いていて、私的に志村正彦のベスト3を作るとしたらこの曲は外せないなと思った。細々と状況を伝えることばを連ねるわけではないのに、彼女との関係や状況が目に浮かぶようだし、サビの部分の「どうしてなんだろう」には後悔や悲しみや迷いや割り切れなさ……さまざまな心の動きが凝縮されていてとても切ない。それはおそらく多くの人が一度や二度体験したことがあるもので、この曲を聴くとその時の感情が呼び戻されるような気がするのだ。

  恋愛などというものからとっくに遠ざかっているオバサンでも、人生には「どうしてこうなってしまったのか」とか「どこでまちがえたんだろう」とくよくよする事態は降ってくる。若い頃は年を重ねたら少しは賢くなるかと思っていたのに、現実はたいして成長せず、同じ間違いを繰り返しては反省の堂々巡りをする。だからオバサンにもこの歌は沁みる。

 ベスト3(順不同)のあとの2曲はと考えて、さてどうしたものか、かなり迷う。 『陽炎』はね、入れなきゃ。『茜色の夕日』もね。でも、そうすると『赤黄色の金木犀』とか入らないし、『TAIFU』や『虹』みたいなアップテンポのものも入れたい。 うーん、どうしようとしばらく悩んでいて、いいことを思いついた。

 ベスト3だからいけないんだ。ベスト5にしよう。なんで早く思いつかなかったんだろう。我ながら妙案に気をよくして、指を折りながらもう一度並べてみる。 『笑ってサヨナラ』『陽炎』『茜色の夕日』『虹』『TAIFU』……あれ、『赤黄色の金木犀』は? それに『夜汽車』好きなんだよな。『ペダル』や『ないものねだり』も。『ルーティーン』を落とすのはしのびないし、『地平線を越えて』も大好きだし、『若者のすべて』や『桜の季節』が入らないのは納得がいかない。仕方がない。いっそベスト10にしよう。

 ……馬鹿である。そもそも誰に頼まれたわけではないのに勝手にベスト3を選定しようとしてさんざん悩んだあげく、姑息に範囲を拡大したのだが次々に候補曲が頭になだれ込んで収拾がつかなくなってしまった。三〇分ほど考えたが、結局決めあぐねて諦めることにした。

 こう書いていると「それはあなたが優柔不断だからでしょう」と言われそうだが、「それがそうでもないのです」と申し上げたい。例えば、好きな映画ベスト3とか、好きな役者ベスト3とか、好きな果物ベスト3とかだったら即座に答えられる。だから、やはりこれは志村正彦の責任なのである。

 すみません、志村正彦さん。わかっていたつもりだったけど、まだまだあなたを甘く見てました。粒ぞろい、それも大粒の粒ぞろいのこんなにすばらしい歌をいっぱい作ってくれてありがとう。
 さて、皆さんのベスト3はどの曲でしょう?
                         

2 件のコメント:

  1. 初めてコメントします。
    いつも楽しみに読ませて頂いております。
    ベスト3・・・選べないですよね。
    一度は挑戦してみるけれど、結局選びきれずにギブアップしたというファンの方がほとんどではないでしょうか。
    それほどにも志村くんの曲は本当に大粒ぞろいで、私にとっては全ての曲がベストです。

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  2. いつも読んでいただいて、また今回はコメントをありがとうございます。
    まったく志村さんの曲はみんないい曲ですね。最初はそれほどでもないと思っていた曲もある日突然胸に迫ってきたり、じわじわ沁みるように入り込んできたりして、あらためてすばらしいと感じることもしばしばです。すべての曲がこれほどの質の高さをもっていることに今更ながら感動しています。それでも
    時々性懲りもなくベスト3を考えてしまうんですが。

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