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2022年9月4日日曜日

『若者のすべて』-CDTV「思い出の夏ソングBEST60」第1位[志村正彦LN315]

 前回、この夏は『若者のすべて』についてのニュースは特段なかったようだ、と書いたが、その翌日の8月29日、TBSで『CDTVライブ!ライブ!』夏の4時間スペシャルが放送され、フジファブリックの『若者のすべて』が「思い出の夏ソングBEST60」1位となった。

 僕はこの番組を見逃してしまったのでネットの情報によった。これはこの夏の特筆すべき出来事だ。テレビ番組のあらゆるランキングの中で、志村正彦の歌がナンバーワンになったことは初めてだろう。

 3万人の一般リスナーの投票で決まったようだ。最近のこの曲の人気からすると、30位以内には入る、もしかすると10以内もありえる、そんな予想はできただろうが、結果は1位。真夏の夜の夢のような気もしたが、これは事実である。

  5月のテレビ朝日「関ジャムJ-POP史 最強平成ソングベスト30!!」では「若者のすべて」が4位になったが、これは若手人気アーティスト48名による一斉アンケ―トの結果だ。アーティストの投票による4位も嬉しいが、一般リスナー3万人の投票による1位の方が断然すごい。驚きと嬉しさでいっぱいになる。

 ネットで放送の一部を見ることができた。両国ライブ(DVD『Live at 両国国技館』)で志村正彦が歌う映像が使われていた。テレビで紹介される場合、ミュージック・ビデオが使われることが多いが、この番組はライブ演奏や中継があるなど「ライブ」が中心なので、両国ライブの方が選ばれたのだと思われる。現在のフジファブリックもこの歌をよく演奏しているが、やはり、志村正彦が歌う『若者のすべて』でなければ『若者のすべて』ではないのだろう。歌詞、楽曲、歌い方、声、眼差しのすべてが志村独自の表現となっている。そして、『若者のすべて』が、志村正彦という一人の若者が作詞作曲した作品であることが広く認知されてきたのだろう。


 ネットで見たランキングによると、僕らの世代の夏歌として有名な下記の歌は次の通りの順位だった。

44位 井上陽水『少年時代』
36位 松任谷由実『真夏の夜の夢』
22位 TUBE『あー夏休み』
18位 サザンオールスターズ『真夏の果実』

 サザンオールスターズやTUBE、そして松任谷由実や井上陽水。10位代から40位代に入っているが、これらが夏歌の上位を占める時代は終わってしまったのだろうか。10位から2位までは、BTS、キマグレン、平井大、3代目J SOUL BROTHERS from EXILE TRIBE、KARA、湘南乃風、緑黄色社会、桐谷健太の順だが、10代から20代の若者によって支持される曲だろう。

 このような曲が並ぶ中で『若者のすべて』が1位となったのは、現在の若者世代からの支持も多いことを示す。『若者のすべて』は、かつて若者であった者にも、今若者である者にも、そしておそらく、これから若者となる者にも、つまり、若者のすべての世代によって愛される作品になりつつある。すべての若者の『若者のすべて』。

 それにしても1位となった要因はどこにあるのか。やはり、「思い出の夏ソング」というテーマ設定、特に「思い出」というモチーフが大きい。


  何年経っても思い出してしまうな

  ないかな ないよな きっとね いないよな


 〈何年経っても思い出してしまう〉歌の主体が〈ないかな ないよな きっとね いないよな〉と歌うのは、思い出す行為そのものである。思い出したものではなく、思い出すこと、そのこと自体を歌う。思い出す行為がそのまま聴き手に作用していく。聴き手自身が思い出す行為に誘われる。これが「思い出の夏ソング」第1位となった要因ではないだろうか。


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