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2021年7月3日土曜日

山梨の聖火リレー[志村正彦LN280]

 先週の土日、山梨県で東京オリンピックの聖火リレーがあった。二日目の終着点は富士吉田。最終ランナーは、グループランナー「やまなし大使」の四人、 宮沢和史、藤巻亮太、山梨出身の女優白須慶子、そして富士吉田出身のプロレスラー武藤敬司が富士山パーキングの入口まで走った。東京オリンピックそのものの問題点はひとまず置いて、今日はこの聖火リレーから想像したことを書きたい。

 

 僕はニュース映像を見だけだが、宮沢和史、藤巻亮太となると、どうしても志村正彦のことを思ってしまう。彼が健在であれば、宮沢和史、藤巻亮太と一緒に故郷の道を走っただろうか、と。やるせないような仮定だが、しばらくの間、想像の世界に入っていった。

 志村がグループランナー「やまなし大使」に選ばれた可能性は充分にあっただろう。しかし、その(内々の)オファーを受けて彼が受諾したかどうか。〈「ロック」とは、何かを打ち破ろうとする反骨精神、逆らうべきところは逆らうという精神じゃねえのかな~〉[ 『東京、音楽、ロックンロール』(志村日記)「ジャケ深読み」2008.01.25 ]と語っているので、〈聖火リレーなんてロックじゃねえ〉と一蹴したこともありえる。

 でも、どうだろうか。他ならぬ富士吉田で走るのであれば、案外、渋々にしろ、OKしたような気もする。そうなったとしても、一番隅っこで、いるのかいないのか分からないように走る。そんな像が浮かぶ。

 NHKの「聖火リレー」サイトに、大会組織委員会に提出された「志望動機」が掲載されている。


宮沢和史 Kazufumi Miyazawa

東京オリンピックの聖火ランナーとして、長距離走の選手だった学生時代を思い出しながら無心で走る私の姿を見ていただくことで、少しでも生まれ故郷に貢献できるのであれば嬉しい。

藤巻亮太 Ryota Fujimaki

東京オリンピックの聖火ランナーとして、歴史ある聖火を絶やさず、世界へ、そして次の世代へ向けてつないでいきたい。そして、世界中にふるさとの魅力を伝え、「YAMANSHI」ファンを増やしたい。


 宮沢の〈少しでも生まれ故郷に貢献できるのであれば嬉しい〉、藤巻の〈「YAMANSHI」ファンを増やしたい〉。二人とも故郷山梨への貢献を志望動機としている。この二人に劣らぬくらい(いや、それ以上に)故郷を大切にしていた志村のことだから、真面目でなおかつロック的な動機を書いたかもしれない。

 志村は先の日記で「富士山」もロックだと述べていた。理由は、富士山は火山活動で隆起し、〈地球の重力に逆らっているから〉らしい。だから、その富士山の裾野を聖火でリレーすることもロックだ、なんていう志望動機を考えたかもしれない。志村が聖火をリレーするなんて〈ないかな ないよな きっとね〉とも思うが、あるかな、あるよな、きっとね、とも想う。やるせない仮定の想像ではあるが、そのままここに記してみたかった。


 志村正彦が宮沢和史、藤巻亮太と一緒に富士吉田の道を走る。「聖火」をリレーする。その幻想は、宮沢和史、藤巻亮太、志村正彦と続いていく、山梨の「ロック」のリレーの光景でもある。


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