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2021年3月5日金曜日

レスリー・ウェスト/志村日記「レスポールスタンダード」[志村正彦LN269]

 志村正彦は、ギターリストとしてのレズリー・ウェストの存在を認めていた。志村日記の2017.11.27に次のような記述がある。(『東京、音楽、ロックンロール 完全版』p243)


 レスポールスタンダード

 このツアー、ホテルに帰ったらまずすること。
 それは、テレビを付けて一服するでもなく、ライブを録音した音源のチェックだ。いわゆるライン録音というやつで、PAモリタ氏からライブ後、すぐもらう。ライン録音つうのは、客席に置いたマイクで録音したものとは違って、PA卓のOUTの音を直に録音したものなので、かなり自分たちの演奏がシビアに聴けるものであります(何か説明下手でスマン)。
それをひたすら聴いている。ここをああすべきだったとか、音のヌケがどうだとか、一人反省会だ。もちろん客席に聞こえている外音のことも視野に入れつつ。
 結果、新しく入手したギター、Gibsonレスポールスタンダードはしばらく弾かないことにした。俺が、まだ未熟で弾けてないからだ。音がスタンダードの音をしてないのかとも思う。う~ん分からん。ローディーの人は良い音してると言ってくれているのだが。それほど、レスポールスタンダードが中学の頃から憧れていた楽器です。名器です。だからもう少しちゃんとしなきゃなー。
 レスポールスペシャル(シングルカッタウェイの黄色のやつ。ちなみにレスポールのダブルカッタウェイは俺はあんま好きじゃない。いくらストーンズが使っていたとしても、 レズリー・ウェストが使っていたとしても。もうこれはあくまで俺個人のこだわり。弾く時が来るのは、ボトルネックが弾けるようになってからかなー)はもうずっと弾いてる。。だから何となく分かる。が、スタンダードは難しい…。


 このツアーは、フジファブリック「武者巡業ツアー」2007/10/14~ 2007/12/15。北海道、広島、福岡、大阪、愛知、宮城と回り、最後は東京の両国国技館だった。このライブ映像が『フジファブリック Live at 両国国技館ライブ』として発売された。あわただしいツアー中の「一人反省会」。志村の音楽に対するストイックな姿勢が伝わる。入手したGibsonレスポールスタンダードを「まだ未熟で弾けてない」と言う。レスポールスタンダードが中学の頃から憧れていた名器だが、高校の頃からレスポールスペシャルはもうずっと弾いてると書いているように、志村正彦が始めて購入したエレクトリックギターは、レスポールスペシャルだった。

 高校入学の春、志村正彦は、甲府の岡島百貨店内の新星堂ロックイン甲府店で、ギブソンレスポールスペシャルを購入した。もちろん高校生にとってはかなり高価なものなので、両親に代金を出してもらい、本人が新聞配達などのアルバイトを続けて支払ったそうである。最初からギブソンにしたことから、プロのミュージシャンになるという決意が感じられる。退路を断つような覚悟だったのかもしれない。

 ここで志村は、レスポールスペシャルの「シングルカッタウェイの黄色のやつ」が好きであり、「レスポールのダブルカッタウェイは俺はあんま好きじゃない。いくらストーンズが使っていたとしても、レズリー・ウェストが使っていたとしても」と述べている。ストーンズというと、キース・リチャーズのことだろう。そして、レズリー・ウェストに言及している。(志村はレズリーと書いている。Leslieのカタカナ表記はレズリー、レスリーの二つがある)確かに、レスポールスペシャルを弾くギターリストの代表は、キース・リチャーズとレズリー・ウェストである。ネットの情報によると、シングルカッタウェイは中低音が豊か、ダブルカッタウェイは抜けの良い音といいようように、音色が違うようだ。 

 実際に志村正彦がマウンテンやレスリー・ウェストの音楽をどのくらい聴いていてのかは分からない。それでもこのように書いているので、ギターリストとしてのレスリーをある程度までリスペクトしていたのだろう。

 レスリー・ウェストがレスポールを弾いている映像で比較的最近のものを探した。(最初にある白色のギターはレスポールスペシャルのように見えるが、黒色のギターはレスポールスタンダードのようだ。ギターについては詳しくないので、間違っているかもしれません)


Leslie West @Rock/Ribs, Augusta, NJ 6/28/14 Nantucket Sleighride



 2014年6月のRock Ribs and Ridges Festival。レスリーはすでに車椅子に座って演奏している。楽曲はマウンテンの名曲「ナンタケット・スレイライド "Nantucket Sleighride (For Owen Coffin)"」 (F. Pappalardi, G. Collins) 」。捕鯨船エセックス号(ハーマン・メルヴィルの『白鯨』の素材ともなった)の悲しい物語をモチーフとした作品である。この映像には、冒頭のチューニング、往年を彷彿とさせる間奏部分のインプロビゼーションやレスリー独特の奏法もある。歌詞は前半しか歌われていないが、その部分を引用する。


  "Nantucket Sleighride (For Owen Coffin)"
    (F. Pappalardi, G. Collins) 


              Goodbye, little Robin-Marie
              Don't try following me
              Don't cry, little Robin-Marie
              'Cause you know I'm coming home soon

              My ships' leaving on a three-year tour
              The next tide will take us from shore
              Windlaced, gather in sail and spray
              On a search for the mighty sperm whale

              Fly your willow branches
              Wrap your body round my soul
              Lay down your reeds and drums on my soft sheets
              There are years behind us reaching
              To the place where hearts are beating
              And I know you're the last true love I'll ever meet
              And I know you're the last true love I'll ever meet

               ………

 捕鯨からの帰還、愛する人との再会を歌っているが、その帰還と再開が果たされることはないのだろう。オリジナル音源では、フェリックス・パパラルディが歌っている。レスリー・ウェストはこれまで自分のバンドでこの曲を演奏してきたが、自ら歌ったことは少ない。録画年からして、彼がこの曲を歌ったライブ映像として最後のものかもしれない。 


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