ページ

2019年3月24日日曜日

『Sugar!!』のPanorama Ball Vision【志村正彦LN215】

 フジファブリック「Sugar!!」は、あのスミス監督(初期の『桜の季節』『陽炎』『赤黄色の金木犀』『銀河』などの素晴らしいMVを制作した)による実験的なミュージックビデオが制作されている。橋本典久氏の研究している「Panorama Ball Vision」という4台のカメラを使って360度の方向から撮れる手法を使って、葛西臨海公園などで撮影された。「fuji-emistaff」のブログでそのときの様子が記されている。


「Sugar!!」のPVの監督は、デビュー時から数多くのフジのPVを撮ってくださっているスミスさんです。何か新しい撮り方とかありませんか?」という志村くんのリクエストに応えてスミス監督が提案してくれたのが、橋本さんが研究している360度ぐるり一周撮って、天地が入れ替わったりする、というあの撮影方法でした。
4台の一眼レフタイプのカメラを4方向に向くように設置して、その周囲にメンバーが立って撮影したのですが、360度全部映ってしまうので、監督含めスタッフは全員、カメラが回っている間は壁の後ろなどに隠れていました。「それじゃ(カメラ)回しまーす」と言われると、スタッフがみんなどわーっと散って隠れて、きっと他の人が見たらいい大人たちが何をやっているかと思われただろうな。。


 愉快で大変な撮影現場だったようだが、このMVを見てみよう。




 「全力で走れ 全力で走れ」を視覚化するように、映像が走り回っている。この2次元映像でも充分に新鮮なのだが、「Panorama Ball Vision」の球体ビジョンという設備で上映すると、この映像が球体になって映し出されるそうだ。さぞかし不思議な映像体験になったのだろう。

 この映像はぐるぐる回転し、全力で走り回っている。その動きのホットな熱量に比べて、映し出される志村正彦の表情はクールである。無表情というのではないが、どこか虚ろで掴み所がない。的確に形容できないのだが、「外」に現れる表情と「内」に隠される心情とが分離しているような感じとでもいえるだろうか。

 この歌詞には「36度5分の体温」という表現があるが、志村はこれについて興味深いことを「OKMusic」のインタビューで述べている。


“平熱じゃん!”って一瞬思ったんですけど、すごい体が温まってるってわけでも、逆に冷めきってるわけでもなく、そのどっちでもいける準備万端な状態で、あとは自分が動くだけっていう、そういう状況を言い表したかった一節なのかもしれません。


 すごく温まっているのでもなく冷め切っているのでもない体温の状態といわれているが、どんな体温なのか想像するのは難しい。どちらにもいける準備万端な状態ともあるので、一種の「スタンバイ」の状態なのだろう。静止から運動へと切りかわるためにはその狭間の状態が必要である。ミュージックビデオの志村の表情はそんな狭間の状態、一種の中間の状態にも見えるが、これは考えすぎかもしれない。


0 件のコメント:

コメントを投稿