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2017年2月5日日曜日

生徒は『桜の季節』をどう評価したか [志村正彦LN149]

 「思考と表現のデザイン」教育フォーラムでは、生徒中心の「思考のデザイン」学習の新しい方法について報告した。しかし、思考力を育成するためには「方法」の開発だけでなく、生徒の思考を触発させるような「作品」「教材」も開拓されねばならない。

 『変わる!高校国語の新しい理論と実践』には字数の制約があって掲載できなかったが、一連の授業の中で、生徒が志村正彦・フジファブリック『桜の季節』について評価や分析を行った。
  生徒は『桜の季節』を高く評価した。(段階評価の結果を数値化すると、「とても優れた作品」71%、「優れた作品」23%、「普通の作品」6%となった。教材の評価を明確にするためにあえて数値化した。)生徒の評価理由を簡潔に紹介したい。

・歌詞に問いかけの形が入っているから、色々と考えられる。
・何度聞いても全てが解釈できるわけではない歌の世界観に引き込まれた。
・今までにない桜ソング。独創的でいい。
・聴く人が一人ひとり自分のストーリーを作ることができる。
・「桜が枯れた頃」というように歌自体の季節感が味わえないどこか不思議な世界を持つ。
・繰り返しには誰かへの強いメッセージ性が感じられた。
・自分にあてた手紙のようなものだと思った。

 生徒は『桜の季節』が優れている理由を自分の視点で述べている。この歌の「問いかけ」や謎、世界観や独自の季節感。「自分のストーリーを作ることができる」「自分にあてた手紙のようなもの」だという記述は志村の歌詞の世界の本質に迫っている。
 志村正彦・フジファブリックの作品の授業において、私自身の「解釈」や「分析」を講義のような形で生徒に伝えることはない。そんなことをすれば生徒の自由な思考を損ねてしまう。だから、志村正彦のプロフィールや作品に関する基本データを簡潔に知らせることと、歌を集中して聴き、言葉を丁寧に読みとることだけを指示している。
 つまり、教師が一方的に教えるのではなく、生徒が考え表現することを尊重するのがこの授業の根本にある。生徒の言葉が彼ら自身の思考と表現の言葉となることを目指している。

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