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2019年6月2日日曜日

フジファブリックのネトネト言わせて #112 -『同じ月』1[志村正彦LN220]

 フジファブリック 志村正彦没後10年 2009年映像作品集 特設サイト内で、ネットラジオ「フジファブリックのネトネト言わせて」の2007年~2009年に配信した114本を一挙にアーカイブ配信という知らせがあった。「ネトネト言わせて」のアーカイブ化がついに実現したことになる。

 オフィシャル・ブートレグ映像のリリースや「ネトネト言わせて」配信など、志村正彦・フジファブリックの映像や音声資料が「アーカイブ」化されていくのは、志村正彦没後10年というタイミングがあってのことだろうが、そのこととは無関係に今後も、この不世出の詩人・音楽家の足跡を示すものを公開してほしい。権利関係が複雑なのだろうが、音楽フェスティバルの映像などもいつかアーカイブ化できるといい。

 早速少し聴いてみたが、たまままクリックした「#112」は「ネトネト言わせて」の公開収録の回だった。出演者は志村正彦と金澤ダイスケの二人。『CHRONICLE』リリースを記念したもので、ネットで調べると、2009年5月30日、大阪タワーレコードNU茶屋町店での録音のようだ。本人たちのいう「グダグダ」のおしゃべりの後、『同じ月』のライブ演奏が収録されている。29分頃からそのシーンとなる。




 ネトネト音源を聴きながら言葉を追えるように、歌詞を引用したい。


 同じ月(詞・曲:志村正彦)

この星空の下で僕は 君と同じ月を眺めているのだろうか Uh〜

月曜日から始まって 火曜はいつも通りです
水曜はなんか気抜けして 慌てて転びそうになって

イチニサンとニーニッサンで動いてくこんな日々なのです
何万回と繰り返される めくるめくストーリー

君の言葉が今も僕の胸をしめつけるのです
振り返っても仕方がないと 分かってはいるけれど

にっちもさっちも どうにもこうにも変われずにいるよ Uh〜

木曜日にはやる事が 多すぎて手につかずなのです
金曜日にはもうすぐな 週末に期待をするのです

家にいたって どこにいたって ホントにつきない欲望だ
映画を見て感激をしても すぐに忘れるから

君の涙が今も僕の胸をしめつけるのです
壊れそうに滲んで見える月を眺めているのです

にっちもさっちも どうにもこうにも変われずにいるよ Uh〜

君の言葉が今も僕の胸をしめつけるのです
攘り返っても仕方がないと分かってはいるけれど

君の涙が今も僕の胸をしめつけるのです
壊れそうに滲んで見える月を眺めているのです

僕は結局ちっとも何にも変われずにいるよ Uh〜


 「イチニサンとニーニッサンで動いてくこんな日々なのです」「にっちもさっちも どうにもこうにも変われずにいるよ」。ゆるい雰囲気の言葉が独特の味わいを醸し出す。
 一、二、三。月、火、水、木、金。ルーティーンのように、数字や曜日が進んでいく「こんな日々」の「変われずにいる」「僕」。志村はその「僕」を率直に歌っていく。でも幾分か距離を置くように歌っている感じもある。歌い方そのものは、高いキーの音が不安定でやや声もかすれている。一種の愛嬌のようにも聞こえてくる。加工されていないので、志村の声と節回しが生々しい。どのように形容したらよいのか適切な言葉が見つからない。これは「志村節」としか言いようがない。

 『同じ月』はあまり注目されることがない曲だが、『東京、音楽、ロックンロール 完全版』の「インタビュー」(p202)で、志村はこう語っている。


  この頃はまだポリープ中で、人の提供曲ばっかり書いていたけど、自分のためだけに作った曲を7月30日に書いて。これは4枚目のアルバム『CHRONICLE』に入っている”同じ月”って曲です。そのへんから徐々に回復していきました。


 「この頃」というのは富士吉田ライブを終えた2008年の6,7月頃を指している。『同じ月』は、自分のためだけに作った曲であり、この曲を作ったあたりからスランプ状態から徐々に回復してきたという重要な証言である。

      (この項続く)


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