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2016年9月14日水曜日

吹田スタジアムの音と光

  先週末、大阪の万博公園にある吹田サッカースタジアムに行ってきた。ヴァンフォーレ甲府vsガンバ大阪の応援のためだ。関西に行くのは十年ぶり、前回も甲府の応援だった。

 スタジアムという場そのものに興味がある。2006年、甲府はJ1に初挑戦した。それから十年の間、二回降格したが、2013年の三回目の昇格以降四年間J1になんとかとどまり続けている。この間、関東圏を中心にJ1の主なスタジアムにはひととおり出かけた。今年2月、ガンバ大阪の新たなホームとなる吹田スタジアムがオープンした。凄い臨場感だという評判を聞いて、予定が合えば行こうと決めていた。

 甲府から身延線、新幹線と乗り継いで新大阪に着いた。茨木駅まで戻り、万博公園に向かった。しかしアクセスが分かりにくく、道に迷ってしまった。到着したのはキックオフ二十分ほど前。甲府側の席はほぼ満員。やっと空席を見つけて座ることができた。
 スクエアな形が基本だが囲まれ感がある。LED照明のせいか、芝生の緑もあざやかで眩しい。サッカー専用のためピッチが違く、スタンドの傾斜も適度で見やすい。評判通り、いやそれ以上に素晴らしい。華やかさではなく、機能的な美を追究している。

甲府アウェイ側から見たホーム側

 しばらくして前方を見ると、会場のLED照明が消されて、無数の青い光が視界に浮上する。サポーターがLEDブレスレットやサイリウムを点灯している。ガンバ大阪のナイトゲームで評判となっている演出だ。黒色の闇の中に青色の光。青と黒はガンバのテーマカラーでもある。

 声や音もクリアに響き渡る。ガンバのゴール裏のコールがかなりの音圧で会場に広がっていく。ゴール裏側のスタンドの上中下層の三層が一体となり、全体が大きな面となって、スピーカーの反響板のようなっている。設計段階から音響効果を綿密に計算しているのだろう。スポンサー企業のパナソニックの技術が入っているのかもしれない。

 コールの声に合わせて青い光が綺麗にゆれる。スタジアムが幻想的で非日常的な場となり、サッカー場というよりロック・コンサートの会場にいるような気分になる。アウェイサポを含めて一体感が醸し出され、これから始まるゲームへの期待感が高まる。この雰囲気を含めて国内最高のスタジアムであることは間違いない。
                   

 午後7時キックオフ。開始5分で甲府が先制。甲府のサポーターが歓喜に包まれる。だがすぐに失点。前半はほぼ互角の闘い。後半に入るとガンバの猛攻に遭う。80分までは持ちこたえたのだが、ミスがらみで失点。結局1:2で敗れた。J1残留のために引き分けの勝ち点1でも持ち帰りたかったのだが、叶わなかった。ガンバ大阪はやはり強い。

 サポーターの歌やコール、その存在は古代ギリシア劇の合唱隊「コロス」(コーラス)に擬えられることがある。東本貢司氏は「劇場としてのスタジアム思想」というエッセイで次のように述べている。(『イングランド―母なる国のフットボール』日本放送出版協会 2002/04 所収)

イングランドのスタジアムは《劇場》そのものと言えるかもしれない。それも、舞台(ピッチ)に上がった俳優(プレーヤー)の演技(プレー)を観客が観て感動し拍手を贈るといった彼我の関係ではなく、観客そのものもプロットの中で重要な脇役を担う、スタジアムの中のすべての人々が一体となった”フットボール劇”が演じられる劇場である。ミクロな比喩に喩えれば、古代ギリシャ悲劇のメインキャストとコーラスの関係のようなものだ。
       
 この日の吹田サッカースタジアムはまさしく「劇場」そのものであった。甲府サポーターも千人はいた。関西在住のサポーターや山梨出身者も駆けつけていたそうだ。応援のために大きな声を張り上げていた。ガンバ大阪のサポーターも甲府のサポーターも共に劇場の合唱隊「コーラス」として、「フットボール劇」の一員となっていた。

 山梨では今、ヴァンフォーレ甲府の新しいスタジアム建設の動きがある。まだ検討段階だが、実現の道を歩み始めることを願っている。吹田スタジアムの建設費は140億円。3万2千席の規模の割にはかなりのローコストであり、練りに練った設計を試みたようだ。また、費用のすべてが法人や個人の寄付で賄われたそうだ。吹田スタジアムの建築のありかたはこれからのモデルとなる。

 甲府の新スタジアムは2万席の規模で、リニア新幹線の新甲府駅近くが候補地だと言われている。財政を圧迫しないためにも、建築費・維持管理費を含めて可能な限りローコストなスタジアムを目指してもらいたい。吹田のように寄付を募ることも必要だ。質素でありながらも、山梨という場にふさわしいデザインを工夫する。一サポーターとしての長年の夢である。

付記
 今回は妻と母(現役甲府サポである)と一緒に出かけた。母は足にやや痛みがあり杖を突いていったのだが、会場のボランティアの方がわざわざこちらまで駆け寄り、エレベーターまで案内していただいた。3階まで上がると、エレベーター近くに車椅子席があった。コンコース沿いのかなり広いエリアであり、ピッチも見やすそうだ。バリアフリーが徹底されている点でもこの設計は優れている。
 係員に案内されて、私たちはビジター自由席に向かった。ホームアウェイに関係なく親切でホスピタリティが高かったことを記しておきたい。ありがとうございました。

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