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2016年9月6日火曜日

歌詞のイメージ、声の響き[志村正彦LN139]

 前回、anderlust越野アンナの声を「わずかばかりだが夾雑物が混じっているような感触の声」「硬い金属的な感触」と形容した。そのことに関連する本人のインタビューをネットで見つけた。 【インタビュー】anderlust、「いつかの自分」にこめた2つの意味と、カバーにこめた“自らの色”(取材・文◎村上孝之)である。                     

  越野は『若者のすべて』カバーについて「自分の声をお寺とかにある鐘に見立てて歌った」と注目すべき発言をしている。「声の響き」に重点を置き、Bメロを「ビブラートを掛けずに、体内に響かせるように」したとも述べている。なぜそう歌ったのかという問いに対してこう答えている。

越野:歌詞に引っ張られて、そういう歌い方をしようと思ったんです。Bメロに出てくる“夕方5時のチャイムが”という文節もそうですけど、全体的に幻想とか、フラッシュバックを思わせるような歌詞だなと思って。そこで、なぜかお寺の鐘とか、ハンドベルといったイメージが浮かんできたんです。

 「硬い金属的な感触」と感じた「声」はどうやら意図的に作り上げたもののようだ。僕には「お寺の鐘」や「ハンドベル」のようには聞こえなかった。少し硬質で独特の共鳴が含まれる声であったが、綺麗に響く声でもあった。そのように発声した意図がそもそも『若者のすべて』の歌詞にあるというのが面白い。「全体的に幻想とか、フラッシュバックを思わせるような歌詞」という指摘は肯けるが、「夕方5時のチャイム」が「鐘」の響きであるかどうかは歌い手の解釈の自由の領域にある。志村正彦自身が想い描いた「夕方5時のチャイム」はもっとやわらかい響きの音のような気がするが、これも聴き手一人ひとりの自由に属する。
 それにしても、越野アンナの話、歌詞のイメージからカバー曲の「声」の響きを構築したという試みはとても興味深い。

 アニメ「バッテリー」ティザーPV3という映像がyoutubeの公式チャンネルにあり、30秒を過ぎたあたりから、anderlust「若者のすべて」が流される。歌詞の第1ブロック「夕方5時のチャイムが」から「まぶた閉じて浮かべているよ」までの部分だ。


 CDと同じ音源なのだろうが、どこか印象が異なる。ティザー映像ということもあり、細かい部分で調整されているのだろうか。声の響きの特徴があまり出ていないようだが、この方が映像のBGMとしては聞きやすいかもしれない。

  アニメ『バッテリー』(フジテレビ"ノイタミナ")そのものは、先日放送された第8回を見ることができた。エンディングでは、「真夏のピークが去った」から「まぶた閉じて浮かべているよ」までの第1ブロックのすべてが使われていた。1分30秒程の時間だ。途中で、「作詞 志村正彦/作曲 志村正彦/編曲 小林武史」というクレジットが映し出される。

 アニメのエンディングは次回のオープニングにつながっていく。
 anderlust『若者のすべて』は、「夏の終わり」というよりも、「夏の終わり」を遙か彼方に予感しながら「夏の始まり」を歌っているように聞こえてくる。

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