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2020年5月6日水曜日

メレンゲ『火の鳥』 [S/R005]

 S/R(Songs to Remember)第5回は、メレンゲの『火の鳥』。
 このブログでもう何度も取り上げたのだが、前回の記事「空を飛ぶ鳥の視線[志村正彦LN255]」を書き終わったときに、次の[S/R]はこの曲しかないと思った。
 レクエイムとしてこの作品は記憶されるべき歌である。

 フジファブリック『若者のすべて』音源のUTY「STAY HOME」60秒version。「いつもの丘」の上空を飛ぶ4Kドローンの速度と高度から、空を飛ぶ鳥を想像した。空をゆるやかに旋回する鳥の視線から眺めている風景の映像に、フジファブリック『若者のすべて』が重なることによって、空を飛ぶ「鳥」になった志村正彦が「いつもの丘」を眺めながら歌っている、そのような想像が浮かんできた。その直後に、メレンゲ『火の鳥』を想起した。この曲は「まっすぐに空を鳥が飛ぶ」光景を歌っている。クボケンジが志村正彦を追悼した作品だと言われている。

 メレンゲ『火の鳥』にはミュージックビデオがある。以前、この歌について次のように書いた。

 海辺の光景。荒れた白い波。波打ち際に寄せられた無惨な花。赤い花、青い花、橙色の花。上空で旋回する一羽の鳥。黒い影。鳥が落ちてきて、花と化したのか。それとも、これから、花が鳥と化して、飛び立っていくのか。

 この映像の冒頭部分は、海、波、花、鳥、空で構成されている。空を飛ぶ鳥と波打ち際の花は、その対比が際立つがゆえにある象徴性をもつ。「STAY HOME」映像は、僕の想像の中で、鳥があたかも桜を愛でるようにして空を飛んでいく。「いつもの丘」を慈しむようにして旋回していく。
  メレンゲ『火の鳥』の映像、UTY「STAY HOME」映像。偶々の取り合わせであるが、この二つの映像が「偶景」のように現れてきた。志村正彦が愛した花の光景が互いを照らし合う。

 クボケンジは「世界には愛があふれてる 夜になれば灯りはともる」「世界中を見に行こう ツンドラのもっと向こう」と語っている。ツンドラは地下に永久凍土が広がる凍原。凍りつく世界の向こうへと鳥が飛び立っていく。そのような光景を思い浮かべることができる。そしてツンドラの凍原にも花が咲く季節はあるだろう。


   メレンゲ『火の鳥』MV 2011.10
(監督 / 編集: 江森丈晃、撮影監督 / 編集: 北山大介、カメラマン: 林洋輔、制作: 前田久美子)


   


 メレンゲ『火の鳥』 (作詞作曲:クボケンジ)

      まっすぐに空を鳥が飛ぶ
      急いでいるのでしょうか どちらまで?
   
    急いでいるように見えましたか?
      実は私にもわからないのです

      意味もなく 意味もなく ただ羽があるから飛んでたのです
   
      泣きそうな声 悲しい事言うなよな
      ならその空の旅を 僕と行かないかい?
      道はなく壁もなく ただ空は青く その青さがゆえに 青い海

      争ったり 仲直りしたり 勝った方が正義か 遊びじゃないんだぜ
 
      いろんな人と いろんな命と 微妙なバランスで青い地球

      他人事みたいに 世界中を見に行こう ツンドラのもっと向こう
      君にだって会える 言えなかった事言おう 言えなかった事を言うよ

      世界には愛があふれてる 夜になれば灯りはともる
      それでも僕ら欲張りで まだまだ足りない
 
      他人事みたいに 世界中を見に行こう ツンドラのもっと向こう
      優しくなれるかい 人は変われるって言うよ?
      同じように僕も 他人事じゃなくて 他人事じゃなくて
      ツンドラのもっと向こう
   


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