公演名称

〈太宰治「新樹の言葉」と「走れメロス」 講座・朗読・芝居の会〉

公演概要

日時:2025年11月3日(月、文化の日)開場13:30 開演14:00 終演予定 15:30/会場:こうふ亀屋座 (甲府市丸の内1丁目11-5)/主催:甲府 文と芸の会/料金 無料/要 事前申込/先着90名 *下記の申込フォームからお申し込みください。

公演内容

公演内容:第Ⅰ部 講座・朗読 「新樹の言葉」と「走れメロス」講師 小林一之(文学研究 山梨英和大学特任教授)朗読 エイコ、第Ⅱ部 独り芝居 「走れメロス」俳優 有馬眞胤(劇団四季出身、蜷川幸雄演出作品に20年間参加、一篇の小説を全て覚えて声と身体で演じる)・下座(三味線)エイコ

申込案内

下記の申込フォームから一回につき一名のみお申し込みできます。記入欄に ①名前 ②メールアドレス  ③メッセージ欄に「11月3日公演」と記入して、送信ボタンをクリックしてください。(ご要望やご質問がある方はメッセージ欄にご記入ください) *申し込み後3日以内に受付完了(参加確定)のメールを送信しますので、メールアドレスはお間違いのないようにお願いします。 *先着90名ですので、ご希望の方はお早めにお申し込みください。 *申込者の皆様のメールアドレスは、本公演に関する事務連絡およびご案内目的のみに利用いたします。本目的以外の用途での利用は一切いたしません。

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2019年7月28日日曜日

「めくるめくストーリー」-『同じ月』4 [志村正彦LN226]

 一月ぶりに志村正彦・フジファブリックの『同じ月』に戻りたい。
 前回は第一ブロックを論じたので今回は第二ブロックとなる。このブロックは次の二つからなる。


  月曜日から始まって 火曜はいつも通りです
  水曜はなんか気抜けして 慌てて転びそうになって

  イチニサンとニーニッサンで動いてくこんな日々なのです
  何万回と繰り返される めくるめくストーリー


  木曜日にはやる事が 多すぎて手につかずなのです
  金曜日にはもうすぐな 週末に期待をするのです

  家にいたって どこにいたって ホントにつきない欲望だ
  映画を見て感激をしても すぐに忘れるから


 月曜日、火曜日は「いつも通り」だが、水曜日は「気抜け」し、木曜日は「やる事」が多すぎて、金曜日になると「週末」に期待する。
具体的な描写があるわけではないが、歌の主体の一週間のリズムが伝わってくる。「慌てて転びそうになって」「多すぎて手につかずなのです」「イチニサンとニーニッサンで動いてく」などというユーモラスな語り口から、作者志村正彦の素顔が現れている。飾り気のない実直さとでも言うべきか。そうして冷静に自分を観察している。

 志村正彦は、「イチニサンとニーニッサンで動いてくこんな日々」の中に「何万回と繰り返される めくるめくストーリー」を物語っていく。彼は繰り返される日々の出来事から、あまり気づかれることはない微細なものであるが、何かを契機に輝きはじめるものを見つけ出す。例えばそれは「四季盤」の作品に傑出した形で表現されている。一年という単位の繰り返しは、春・夏・秋・冬という季節の循環となる。その反復の中で、「桜」「陽炎」「金木犀」「銀河」の物語を紡ぎ出す。定型的な表現ではなく志村の眼差しが捉えた独特の景物の「めくるめくストーリー」でもある。

 この『同じ月』では繰り返しの単位が一週間となっている。月・火・水・木・金そして週末という、より日常的な単位での反復である。題名に「月」が入っていることも示唆的である。一週間が何度か繰り返されると「月」の単位となる。また、「昨日、明日、明後日、明明後日」と歌われる『ルーティーン』は、一日単位の繰り返しを描いている。
そして、アルバムタイトルの『CHRONICLE』は年代記・編年史のことだから、一年単位の繰り返しによって築かれていく人生の年代記を指している。

 「家にいたって どこにいたって ホントにつきない欲望だ」という表現がある。志村のすべての歌詞の中で「欲望」という言葉が使われているのはこの箇所だけである。尽きることのない欲望とは何か。具体的な文脈が語られていないのであくまでも想像になるが、歌うことの欲望、作品を創ることの欲望だと僕は捉える。
 時間の反復の感覚は、一年、一月、一週間、一日という単位で繰り返し表現されてきた。そのような時間の中の「めくるめくストーリー」を歌うのが志村正彦の欲望である。志村はその欲望について何も譲ることがなかった。欲望に忠実であった。優れた表現者の欲望とはそのようなものである。

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