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2018年8月27日月曜日

「関ジャム 」作詞・作曲者としてのリスペクトー『若者のすべて』[志村正彦LN195]

 ご覧になられた方が多かっただろう。(と言っても日本国内限定だが。このblogは海外からのアクセスもあるので、視聴不可能な方のために正確に伝達することを心がけたい)
 昨夜8月26日(日)、テレビ朝日「関ジャム 完全燃SHOW」で、フジファブリックの三人と関ジャニ∞の錦戸亮、大倉忠義が『若者のすべて』を演奏した。
 今回は、20~50代100名にアンケートして決めた「世間が選ぶ“夏の終わりソング”ベスト10」特集。「若者のすべて」は第9位になった。

第9位 フジファブリック「若者のすべて」('07)作詞・作曲:志村正彦

という文字情報が映された。歌詞や楽曲に焦点を当てる番組だけに「作詞・作曲:志村正彦」と明示されていた。「若者のすべて」のミュージックビデオが流され、あの寡黙な表情で歌う志村が画面に登場した。
 各作品について、作詞家・音楽プロデューサーのいしわたり淳治[元SUPERCAR]が歌詞を、寺岡呼人[JUN SKY WALKER(S)]が楽曲を分析していた。いしわたり淳治のコメントで画面に文字化されていたものを引用する。


とても具体的な風景描写と主語が無いまま語られる空白だらけの状況説明。それが聴き手の心にポッカリと穴を空けて、夏の終わりの切なさとシンクロしているのが魅力的です。

歌詞に主役となる「君」という言葉がなく 重要な要素がない喪失感を生んでいる


 優れた作詞家らしい的確な分析だった。特に、「君」という言葉がないという指摘は興味深い。確かに、「若者のすべて」には「君」という二人称代名詞は出てこない。登場するのは「僕」と「僕ら」という一人称の単数・複数の代名詞である。このことには必然性がある。そもそも「若者のすべて」には「君」という存在そのものが不在となっている。だから「君」という代名詞の表現がないというよりも、そもそもその代名詞で表象される存在自体がない。すべては、「僕」の独白と「僕ら」の夢想として語られている。
 なお、いしわたり淳次と志村正彦は各々『音楽とことば あの人はどうやって歌詞を書いているのか』 (SPACE SHOWER BOOks – 2013/6/24)で歌詞論を述べていることも付記しておきたい。
 欲を言えば、寺岡呼人は「Golden Circle」で志村と共演しているので、彼による「若者のすべて」楽曲の分析も知りたかった。

 番組最後の時間帯でジャムセッションが行われた。
 山内総一郎(Vo&Gt)・金澤ダイスケ(Key)・加藤慎一(Ba)・錦戸亮(Vo&Gt)・大倉忠義(Dr)・サポートギターの6人編成だ。
 山内は「志村君が作った曲でずっと大切にしている曲なのでこうやって皆さんと一緒にできるのがほんとうに嬉しいです。ありがとうございます。」と発言していた。画面に志村の写真と共に次の文字が映し出された。

志村正彦 フジファブリックのVo&Gtで主に作詞作曲を担当。2009年に他界。

 志村のプロフィールは簡潔ではあるが正確に伝えられていた。
フジファブリックの三人は緊張した様子だった。今、まさにこの番組が伝えているように、「若者のすべて」は「夏の終わり」の代表曲となった。今年はLINEモバイルのCMでも流れている。ある意味でフジファブリックの作品という枠を超えてきている。これまでにない事態が押し寄せてきたので、現メンバーの三人はこの曲を演奏することに責任や重圧を感じているのかもしれない。よい意味でもう少しリラックスして演奏する方がこの曲の複雑なニュアンスが浮かび上がるだろう。関ジャニ∞の錦戸亮・大倉忠義を含めて、皆がこの曲を大切に歌い奏でていた姿には共感したが。

 残念だったのはフルヴァージョンの演奏でなかったことだ。地上波の人気番組ゆえの時間の制約だろう。2番のブロックのすべてと最後のブロックの次の箇所が省略されていた。 


  ないかな ないよな なんてね 思ってた
  まいったな まいったな 話すことに迷うな


 この箇所は、「若者のすべて」物語の展開の上で重要な場面である。15秒ほどの時間で歌えるので、ここだけは欠落させてほしくなかったが。

 最後に「“夏の終わりソング”ベスト10」中9位の「若者のすべて」の前後を挙げてみたい。画面の文字情報をそのまま転記する。

第10位  山下達郎「さよなら夏の日」('91) 作詞・作曲:山下達郎
第 9位  フジファブリック「若者のすべて」('07) 作詞・作曲:志村正彦
第 8位  松任谷由実「Hello,my friend」('94) 作詞・作曲:松任谷由実

 何よりも日本語ロック・ポップスの二人の大家山下達郎・松任谷由実に挟まれてこの順位につけているのは、志村正彦にとって名誉なことだ。とても喜んでいるにちがいない。

 全体を通じて、作詞・作曲者としての志村正彦に対するリスペクトと高い評価があった。この番組の見識だろう。

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