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2018年8月19日日曜日

真夏のピークが去って、VF甲府 [志村正彦LN193]

 一昨日、真夏のピークが去ったようだ。
 まだ暑いのは暑いのだが、朝晩に吹く風は秋風を想わせる。湿気も少なくなり過ごしやすくなった。LINEモバイルのCM効果でフジファブリック『若者のすべて』は依然として話題となっている。ついにNHKの気象予報士のコメントにも「真夏のピークが去った」が使われたそうだ。志村正彦が作ったこの表現はもはや「真夏」に関わる言い回しとして日本語に定着してきたのかもしれない。天気予報士ではなく気象予報士という呼び方に変わってしまったのが残念だが。「気象」は科学的な語彙であり、生活の実感としては「天気」の方がしっくりする。

 今回、『陽炎』論は一休みさせていただく。昨日のヴァンフォーレ甲府の試合について触れてみたい。前回VF甲府について書いたのは2016年11月、J1残留を決めた時だった。あれから2年近く経つが、この間、2017年度にJ1降格、今年2018年度からJ2で闘っている。
 昨夜の相手は愛媛FC。前半14分、カウンター攻撃から失点。ポスト直撃など何度か決定機を作ったが得点はなかった。
 前半終了近く、西の空は青色を残し、雲は茜色に染められていた。メインスタンドの向こう側に見えるのは南アルプスの連山。VF甲府のシンボルカラー「青赤」そのままの夕景だった。後半に期待した。



 後半、新加入の選手を使ったが機能しない。結局、0:1で負けてしまった。結局、試合の方は夕景とは違い「青赤」は輝けなかった。
 このところ前半早々の失点が続く。堅守速攻というJ1時代のイメージはもうない。攻撃の形を作ることはできるのだが、最後まで押し込めない。中途半端に終わってカウンターを受ける。同じことの繰り返し。全体として、試合のコントロールができていない。事前の分析・対策、ゲームプランを練り上げているのだろうか。
 現在14位。勝点は37、自動昇格圏2位チームとの差が16、プレーオフ進出圏6位チームとの差が9ある。残り試合は13しかないので、J1昇格はきわめて難しくなったと言わざるをえない。観客数もこのところ減少、今後さらに少なくなっていくだろう。

 2005年12月のJ1初昇格決定から13年、降格したり昇格したりの年月だったが、全体としてはまずまず順調な歴史を送ってきたと言えるだろう。しかし、今回の降格はこれまでとはどこか異なる。サポーターとしての予感のようなものだが、これからは厳しい時代が続く気がする。チームにもサポーターにも疲れというのか諦めのようなものがある。
 何度か引用したが、志村正彦は2009年12月5日付の日記に「甲府がJ1に上がった日は嬉しくて乾杯したな、そういやあ。」と書いてくれた。残念だが、2005年度の昇格以来ずっと持続していたVF甲府のピークがついに去っていくのかもしれない。

 1999年のJ2加入から20年が経った。最大の問題点は自前の(完全に専用の)練習場もクラブハウスも建設できなかったことにある。未だに借り物の大学グラウンドが主な練習場であり、練習後にケアできる施設やクラブハウスがない。メディカルなチェックも不十分になる。実質的に怪我人が多い原因であるのは間違いない。選手やサポーター・ファンにとって本当の意味での「場」がないのだ。
 財政的に厳しいのは分かるが、運営会社は少なくとも中長期計画は作成しなければならないはずだ。しかし、その準備をしてきたかどうかは大いに疑問である。チームだけでなく会社を含めての全体的な成長と発展が求められているのに、その姿が見えないことに多くのサポーターは失望している。山梨という地域に根ざしているのだから、もっと自らの方向性やビジョンを公に発表し、ファンやサポーター、地域の人々と対話して、この状況を打開していく必要がある。


 ハーフタイムで印象深い出来事があった。
 アウェイ側ゴール裏の巨大モニターに、藤巻亮太主催のイベント「富士山世界文化遺産登録5周年記念 Mt.FUJIMAKI 2018」(10月7日(日)、山梨県・山中湖交流プラザきらら)のCMが流された。

「Mt.FUJIMAKI 2018」公式webから

 主催は、藤巻亮太(最近事務所から独立したので個人としてのプロジェクトなのだろう)、山中湖村、(株)テレビ山梨、FM FUJI。出演は、ASIAN KUNG-FU GENERATION、浜崎貴司(FLYING KIDS)、宮沢和史、山内総一郎(フジファブリック)、和田 唱(TRICERATOPS)。記憶をたどってみたが、この種のイベントのCMが流れたことは一度もないはずだ。最近、藤巻亮太はヴァンフォーレ甲府スペシャルクラブサポーターに就任した。9月1日(土)のFC町田ゼルビア戦でミニライブ(16:45頃~17:05頃)が行われる。「皆さまと一緒にヴァンフォーレ甲府を応援し、山梨の魅力を発信していきたいと思います。サポーターの力で、チームを盛り上げ、J1を目指していきましょう!」というコメントも寄せている。クラブとの関係や「富士山世界文化遺産登録5周年記念」という趣旨から異例の扱いになったのかもしれない。

 一瞬だが、小瀬・中銀スタジアムのスクリーンに、山内総一郎の顔が大きく映ったことには感慨を覚えた。フジファブリックの現フロントマンということで参加することになったのだろうが、志村正彦が存命であれば当然、彼が、あるいは彼のフジファブリックが出演したはずだ。さらに言えば、甲府の宮沢和史(ザ・ブーム)、御坂の藤巻亮太(レミオロメン)、吉田の志村正彦(フジファブリック)という山梨の誇るロック音楽家が集うイベントになったことだろう。それは真夏の夜の夢のように消えてしまったが。「途切れた夢の続きをとり戻したくなって」(『若者のすべて』)という一節も浮かんできた。だが、取り戻すことはできない。

 ハーフタイムの最後に花火が上がった。花火大会に行く習慣がないので、毎年このスタジアムで夏の打ち上げ花火を見ている。


 最後の最後の花火が落下してくる。途切れた夢のように儚い。

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