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2015年1月6日火曜日

映画『百円の恋』、テアトル石和で。

 2015年、年が新しくなり、数日経つ。
 山梨県は内陸にあるが、気候は太平洋側に属するので、年末から年始にかけて晴天が続いた。寒さは厳しいが、日の光には恵まれている。富士山を始めとする山々も美しい。
 今年も《偶景web》をよろしくお願い申し上げます。

 新年早々、映画『百円の恋』を見た。
 あのクリープハイプによる主題歌も話題となっている作品。あるきっかけでたまたま調べてみると、今、山梨でも上映している、しかも、あのテアトル石和で!と、かなり驚くやら嬉しいやらで、早速出かけることにした。

 テアトル石和(http://www.csc.co.jp)は、石和温泉郷のややはずれにある。「昭和の田舎の場末」感が漂う、とでも形容すべきレトロな小屋。そのせいか、映画やMVのロケ地として何度も使われているようだ(昔の映画では、崔洋一監督『月はどっちに出ている』にも確か登場していた)。

 以前は、映画の「二番館」、「三番館」というか「名画座」のようなプログラムだったが、最近は、新作の封切り映画も上映しているようで、そのことを知らずにいた。(もっと前に気づくべきだったと後悔しきり。まあ、何事も遅すぎることはない。これからチェックしようと納得させた)
 封切り(12月20日から、新宿、名古屋、福岡、山梨・石和の4館で公開)にもかかわらず、二本立てなのが「謎」というか「お得」というか、愛すべき貴重な映画館である。(併映の『マダム・イン・ニューヨーク』も半年前ほどに公開されたものだ)
 

 テアトル石和に着くと、少しばかりタイムワープ感があった。
 学生の頃、早稲田松竹、池袋文芸座地下、飯田橋佳作座などの名画座によく通ったことを思い出した。ネットもレンタルビデオすらも無い時代、映画を見ることは名画座に行くことと等号で結ばれていた。
 地方から上京した鬱屈した学生にとって、街を歩き、映画館の暗闇で数時間を過ごすことは、愉しみ、悦びであり、そして学びでもあった。

 『百円の恋』は、心とそして身体の方も深く激しく動かされる映画だった。新しい年の初めに素晴らしい作品に出会えて感謝した。物語の内容は「ネタバレ」になってしまうので、ここでは何も記さないが、簡潔に書きたいことがある。

 物語そのものはありがちな定型だと言われそうでもあるが、この映画の演出と脚本はその定型を打ち倒している。映画でしか描きえない出来事を定着しているという点で、非常に映画らしい映画だ。別に映画にしなくてもいいのではと感じる映画が多い中、そのことが何よりも賞賛されるべきだ。
 監督の武正晴、脚本家の足立紳、「一子」役の安藤サクラ、「祐二」役の新井浩文(『モテキ』でいい味出していた)、スタッフやキャストは皆、物語と静かに闘っている。

 『百円の恋』は「闘い」の映画だ。安藤サクラ演じる「一子」は、誰と、何と、闘っているのか。そのような問いを、この作品は観客に打ちだす。

 「一子」は、強くなるための闘いというよりも、むしろ、弱くなるための闘いというか、「弱さ」を研ぎすますための闘いに挑んでいるのではないだろうか。
 研ぎすまされた「弱さ」がやがて強さともなり、そのようにしてはぐくまれる愛がある。そのことを、激しく痛く、一撃のように、私は受けとった。

 ロック音楽が映像の良き伴奏者となっている。「一子」の日常を奏でるブルース・ロック、「一子」が変わり始める際のハード・ロック。
 そして、エンディングに流れるクリープハイプ『百八円の恋』がこちら側に《声》の拳を打ちこんでくる。   
     (この項続く)

付記  『百円の恋』の方はまだ上映しているようなので、山梨にお住まいの「映画 and ロック音楽」ファンの方はご覧になられたらいかかでしょうか。私たちの時は観客が5人でしたので、おせっかいではありますが、応援したくなりました。

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