2014年4月13日日曜日
二つの時-4/13上映會1 [志村正彦LN78]
『live at 富士五湖文化センター上映會』から甲府に帰ってきた。今日は、この日が終わる前に書きとどめたいことのみを短く記したい。
上映が始まる。
まなざしをスクリーンに置くと、2008年5月31日の会場、志村正彦が歌い、金澤、加藤、山内そして城戸が奏でる像とこちら側で拍手する観客の像が入ってくる。
まなざしをスクリーンから離すと、2014年4月13日の観客が視界の中に入ってくる。私のまなざしのすぐ先には現実の観客、その向こう側には映像の中の観客。
観客が二重になる。今まで経験したことのない不可思議な感覚にとらわれる。
さらに、映像の中の拍手、今日の会場の拍手と混ざり合い、時を超えて、拍手がシンクロするように聞こえてくる。
スクリーンのフレームの内側と外側が溶けて、2008年5月31日と2014年4月13日という二つの時が同時に流れている。
この不可思議な時間の感覚は、きわめて志村正彦らしい主題であることに、しばらくして気づく。
2時間の間、スクリーンの中の志村正彦の歌と言葉を一つひとつ受け止めながら、この時間の感覚について考え続けた。その感覚は次第に変容もしていくのだが、そのことについては稿を改めて書きたい。
上映された楽曲についても簡潔に触れたい。
『茜色の夕日』とその前のMCについては以前にも触れたが、今日あの場で聴いたこと自体がひとつの「経験」として刻み込まれた。
どの曲にも様々な想いを抱いた。
ライブ映像は初めての『Chocolate Panic』はとても印象に残った。
『桜の季節』は、この作品の数あるライブ映像の中でもベストテイクではないだろうか。桜の季節の富士吉田に、この歌は幸せにも遭遇した。
ラストの『陽炎』。
「あの街並 思い出したときに何故だか浮かんだ」という声が聞こえてくると、わけのわからない情動に包まれた。感覚と思考と感情がぐるぐると旋回しだす。
上映の前後に、このDVDと會の担当者であるEMI RECORDSの今村圭介氏の短いが心のこもった挨拶があった。「志村正彦をフジファブリックをよろしくお願いします」の言葉でこの会が締めくくられた。
終了後、会場を出ると、昼には雲に隠れてしまった富士山がうっすらと浮かび上がっていた。
曇天の薄灰色に溶けこむかのような、残雪の多い白色と灰色の富士の山。そのかそけき美しさがこの日によく似合っていた。 (この項続く)
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