一昨日、11月3日、こうふ亀屋座で〈甲府 文と芸の会〉の第1回公演〈太宰治「新樹の言葉」と「走れメロス」 講座・朗読・芝居の会〉が予定通り開催された。
昼になると青空が広がり、日差しも暖かくなってきた。すがすがしい、おだやかな気分で公演を迎えることができた。三連休の最後、文化の日ということもあって、亀屋座のある「小江戸甲府花小路」の人通りが多く、活気もあった。賑やかな華やぎが甲府の中心街に戻ってきたような気がした。
参加希望者は105名に達した。先着順90名の予定だったが、それを超える申し込みがあったために、2階の客席エリアを広げて対応した。開場は1時半からだったが、1時過ぎには入り口の前にかなりの人々が並んでいた。(亀屋座の担当者が五月のオープン以来初めて見る光景だと言われた)亀屋座前を通る人が何のイベントがあるのだろうと振り返る姿がときどき見られた。
開演の10分ほど前には満員の状態になり、予定通り午後2時に開演した。私がまず〈太宰治「新樹の言葉」と「走れメロス」〉と題して15分ほ話をした後で。エイコさんが「新樹の言葉」の冒頭などの部分を10分ほど朗読した。休憩の後、有馬眞胤さんの独り芝居とエイコさんの下座(三味線)による「走れメロス」の上演があった。有馬さんは作品の全文を覚えて、声による語りと身体の動きによって「走れメロス」を演じきり、エイコさんの三味線が場面の展開に確かな彩りを添えていった。
書物の二次元の世界を声と身体によって三次元の世界に変換していく有馬独り芝居のスタイルは非常に独創的である。観客はこの有馬独り芝居の世界に入り込み、魅了されていく。観客の眼差しが舞台を見つめ、語りの声を聴くことによって、亀屋座そのものが「走れメロス」の空間と化していった。
50分ほどの時間だったが、芝居が終了すると、観客からまさしく「万雷の拍手」が起きた。亀屋座の小さいが濃密な空間が拍手の音で揺れるようだった。カーテンコールの後で主催者代表として私が御礼と感謝の言葉を述べた。来年度も有馬さんとエイコさんを招いて公演を行うことを告げてこの公演を閉じた。
会場で書いていただいたアンケートの言葉を五つほど紹介したい。
- 本物に出会った。そんな思いがしました。
- 有馬さんの迫力ある演技を見て、学生時代に読んだ走れメロスのストーリーが蘇りました。
- 素晴らしい朗読と芝居でした。三味線の音色に津軽の景色が広がりました。
- 有馬さんの声の抑揚、身振り、手振り などとても引き込まれました。発声も素晴らしく、後方で見ていましたが、初めから終わりまで余すことなく楽しめました。
- 久しぶりにお芝居を見てとても満たされました。昔、蜷川幸雄さんが生きていた当時、何度が見に行きました。それ以来というわけではありませんが、久しぶりにお芝居の楽しさを感じました。
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