フジファブリック『茜色の夕日・線香花火』カセットテープのジャケット裏は歌詞カードとなっている。写真の解像度が低いので分からないだろうが、「無責任でいいな ラララ」の部分だけ手書きで記されているのが目を引く。この言葉は多様に読むことができることを考えあわせると、手書きには作者志村正彦のある種の意図があるのかもしれない。
右下には演奏者のクレジットも記載されている。重要な情報なので転記したい。
全作詞作曲/志村 正彦
編曲/フジファブリック
Vo&G/志村 正彦
B/加藤 雄一
G/萩原 彰人
Key/田所 幸子
Dr/渡辺 隆之
「全作詞作曲」とあるのは二曲共にという意味だろうが、この「全」という修飾語には志村の自恃も読みとれる。この下に「Info」として当時の携帯電話のメールアドレスと番号が印刷されている。デモテープという目的から連絡先を入れたのだろうが、活字で印刷されているのは少し驚いてしまう。(写真ではこの部分をカセットテープで隠した)
写真から分かるように、歌詞カードの黒地と白い文字、カセットテープのタイトル部分のオレンジ色のコントラストが鮮やかだ。「オレンジ色」と書いたが、やはりこの色は「茜色」と呼ぶべきだろう。ジャケットの表側のイラストにも、少し黒みがかった赤色の球のようなものが描かれている。これも茜色の夕日をイメージしたものかもしれない。さらに「線香花火」の火球のイメージも重なるかもしれない。
「茜色の夕日」が沈むと薄暗い空が闇の黒色へと変化していく。「見えないこともない」「東京の空の星」が広がることもある。「線香花火」の火球と火花、その色合いと光。「短い夏が終わったのに/今 子供の頃のさびしさが無い」(『茜色の夕日』)、「悲しくったってさ 悲しくったってさ/夏は簡単には終わらないのさ」(『線香花火』)。二つの歌は夏の終わりの季節の感覚が色濃く出ている。志村の歌には夏の季節の夕空や夜空の描写も多い。そしてそこには茜色や赤色と黒色の綴れ織りのような色彩感もある。初期の愉快な曲『TAIFU』(詞曲:志村正彦)でも「虹色 赤色 黒色 白!/虹色 赤色 黒色 白!/虹色 赤色 黒色 白!/皆染まっているかのよう!」と連呼されていた。
『茜色の夕日・線香花火』カセットテープのイラスト画からイメージや色彩の連想や連鎖が起きる。志村正彦・フジファブリックの音楽そのものも色彩感が豊かである。
(この項続く)
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