私が勤めている高校にはフォークソング同好会があり、昨年からその顧問をしている。(顧問といっても、何もしない、何もできない「駄目」顧問なのだが)
「フォークソング」という名を冠しているが、実質的には「軽音楽」「ロック」の同好会だ。最近の軽音楽部はどこも女子部員が多いそうだが、我が校も同じだ。30人くらい所属しているが、その大半が女子。実際に活動しているのは10人ほどで、3年生を中心とするバンドがメイン。構成は男子2人(ギター)女子4人(ギター、ベース、ボーカル)。ドラムやキーボードは不足していて、その都度組み合わせたり、助っ人を呼んだりしている。7月の学園祭でのライブが活動の中心だが、今年度から11月に、近くにある特別支援学校との音楽交流会に参加することになった。十数年続いている会だが、今年度から新しい企画にするということで、生徒会の方からフォークソング同好会に声がかかった。
特別支援学校は、身体に障碍を持つなど、教育上特別の支援を必要とする児童・生徒のための学校である。勤務校では授業や課外活動を通じて近くの支援学校、盲学校との交流を進めている。教室で授業を一緒に受け、実際に交流することによって、生徒は大切なことを学び、社会のあり方について考えを深めていく。
今回の音楽交流会も重要な会なのだが、この時期は、3年生の部員にとって就職試験や進学の推薦試験がようやく終わる頃で、なかなか練習する時間が取れない。一ヶ月ほどの短い期間で準備することになったが、部長から提出された曲目リストは、BUMP OF CHICKEN『ダンデライオン』、 KANA-BOON『ないものねだり』、そして何と!フジファブリック『銀河』だった。びっくりしたのだが、それ以上に、うれしかったのが正直なところだ。
顧問が志村正彦・フジファブリックのファンなのは部員たちはいちおう知っている。年度の初めに、フジファブリックの曲をアコースティックギターでやってみないかと言ったことはあったが、そのことも忘れていた。それにしてもあの『銀河』?、リードギターのパートもリズムギターのパートもテンポが速くて大変そう。大丈夫かと心配になったが、3年生と2年生のギター弾きの男子がチャレンジすると聞いて納得した。この二人はけっこう技術があるからだ。
練習場所に行って聞いてみると、やや不安なところがあるものの、リズムはキープできている。ソロのところも何とかなるかな。なるよな。それにしても難しい曲だ。二つのギターの絡み合いを間近で見て聞いて、フジファブリックの一ファンとして「なるほど」と勉強にもなった。『桜の季節』の節回しで「感動している!」と呟きたくなった。
先週、支援学校との音楽交流会の日を迎えた。会場は支援学校の体育館。合唱部の美しいハーモニー、応援委員会による高等部3年生に向けての心あたたまるエールに続き、フォークソング同好会が登場した。2,3年生によるバンドと1年生バンドの演奏。やはり準備不足のせいで満足できるレベルにはなく、支援学校の生徒には申し訳ない気持ちでいっぱいになった。結局、『銀河』はリードギター・リズムギターの男子二人、ベースの女子によるギターアンサンブルになった。ミスもあったが、リズムはしっかりとしていたのが良かった。彼ら自身にとってよい経験となっただろう。
支援学校からの要望があり、最後は『ちびまる子ちゃん』テーマ曲、B.B.クィーンズの『おどるポンポコリン』。支援学校の生徒たちは今年この曲をテーマソングにしてきたそうだ。フォークソング同好会三人の演奏をバックに、支援学校の生徒二人がサンタクロースの格好や動物の着ぐるみを着て踊る。うちの生徒一人が前に出てヒップホップダンスのようなものを始め、ぐるぐる回る。やがて、みんなで歌ったり踊ったりするようになった。笑顔があふれて、とても楽しい時を過ごすことができた。終わりがたいように、曲を三回繰り返した。音楽には人と人とをつなげる素晴らしい力がある。
今回、このブログではほとんど触れたことのない学校や部活動に関わる話題を書いたのは、志村正彦が高校時代、「富士ファブリック」の原型となった同級生バンドで、富士吉田や近隣にある福祉施設や支援施設の場に出かけて演奏していたと聞いたことがあるからだ。これはバンドの自発的な活動だったようだ。彼の心にどのような理由があったのかは分からないが、高校時代の彼の「志」を読みとることができる。
我がフォークソング同好会は機会を得て演奏したに過ぎないが、彼らなりの想いはあったにちがいない。志村正彦の「志」とは比べられないが、それでも、この冬の季節、彼の作詞作曲した『銀河』を支援学校で演奏した、そのことをここに記しておきたいと考えた。この歌の一節を引いてこの文を終えたい。
U.F.Oの軌道に沿って流れるメロディーと
夜空の果てまで向かおう (『銀河』)
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