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2015年11月19日木曜日

Ryo Hamamoto - the fairest of the seasons、甲府・桜座。

 ここ数日、毎朝、桜の紅葉の変化を眺めていた。

 今朝は昨夜からの雨が上がり、近づく冬の清澄な光があふれていた。あの桜紅葉の樹は、ついにと言うべきなのだろうか、その葉をおおかた地面に落としていた。幾日か続いた冷たい雨に打たれて、葉としての命が尽きた。
 この場所、この桜の樹の下から、富士が望める。盆地のはるか向こう側ではあるが、降雪した白色の部分が増してきた。

 10月に甲府の桜座で開催された「Analogfish & mooolsと行く、巨大丸太転がしツアー2015 甲府 〜MARUTA FES!〜 巨大丸太がやって来た。ゴロ!ゴロ!ゴロ!」。
 三番目に登場したRyo Hamamoto(浜本亮)の映像がyoutubeにupされていることを最近知った。曲は『The Fairest Of The Seasons』。本人が許可した公開とあるので、ここでも紹介させていただく。  

            Ryo Hamamoto - the fairest of the seasons                             

 当日の雰囲気がよく再現されている。youtube音源という制約はあるが、桜座の独特の響きも何となく伝わってくる。MCにあるように、この曲はイントロからやり直した。最後もあんな風に終わり、小さな喝采をあびていた。
 Ryo Hamamotoの声やギターの音色はとても繊細で、透明な広がりがある。5歳から11歳までアメリカで暮らしていたそうで、発音も綺麗。しかし、ステージに上ることへの一種の衒いなのか、どこかもてあましているような感じもして、その対照が愉快だった。

 『The Fairest Of The Seasons』は、Nicoの歌で知られている。The Velvet Undergroundを離れてリリースしたソロ1stの『Chelsea Girl』に収録。ネットで調べると、「Written by Jackson Browne & Greg Copeland」とあった。あのJackson Browneの作とは全く知らなかった(Greg Copelandは彼の高校時代の友人で何曲か共作しているようだ)。70年代のアメリカやカナダのシンガーソングライターはリアルタイムで聴いていた世代なので、Jackson Browneにも親しんでいた。

 Nicoは3rdアルバム『The End...』を学生の頃よく聴いていた。うっすらとした記憶だが、西新宿の輸入レコード屋で手に入れた。ジャケット写真を気に入り、部屋の壁に立て掛けておいた。沈鬱そのものが結晶したようなNicoの声は、出口の見えないような状況にいた二十代前半の日々の感覚にとけこんでいた。

 映像に戻ろう。
 どこか聴き手を、そして歌う自分自身をも突き放しているような印象のあるNicoとは異なり、Ryo Hamamotoの歌はやわらかく聴衆を包み込む。アコースティックギターの美しい音色に、桜座という「箱」も共鳴していた。
 歌詞はこう終わる。

  It's now I know do I stay or do I go
  And it is finally I decide
  That I'll be leaving
  In the fairest of the seasons

 「In the fairest of the seasons」とは「季節の最も美しい時に」あるいは「最も美しい季節に」という意味なのか。それとも別の意味なのか、分からないが、この歌を聴きながら、朝の桜紅葉の光景を想い出した。
 あの桜にとって、季節の最も美しい時とはどのような瞬間だったのか、そんなことを考えた。

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