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2013年3月4日月曜日

「志村正彦ライナーノーツ」の始まり (志村正彦LN 1 )

 志村正彦の生が原因不明の身体の異変によって、突然閉じられてしまってから三年を超える月日が経つ。彼の喪失の重みは、むしろ時間がたつにつれて、日本語の歌の世界において増してきているように思われる。

 昨年末も、彼の御友人や有志の尽力、御家族の協力によって、一昨年の『志村正彦展 路地裏の僕たち』を継承しつつ、装いを変えて、追悼するイベントが行われた。

 12月22日から24日までの三日間、富士吉田で、夕方5時を告げるチャイムが志村正彦の『若者のすべて』をアレンジしたものに変更された。『若者のすべて』には「夕方5時のチャイム」という一節がある。歌の中の一つのモチーフを、その曲そのものを活かす形で、現実の世界に出現させる、という極めて珍しく、というかほとんどあり得ないような貴重な試みと、それにあわせた、展示会や演奏会が開かれた。

 一人の歌い手を語る方法には様々なものがあるだろうが、ある「場」で生起したものを、その「場」に即しながら、自由に多角的な視点で語ることによって構築していく方法がある。そのような手法で、志村正彦と彼の歌の軌跡を、言葉として定着させること。全体としてかなりの分量になることが予想され、書き手自身もその行きつく先が分からないこのシリーズの名は、「志村正彦ライナーノーツ」とさせていただく。

 今回、私も志村正彦の歌を愛する聴き手の一人として、富士吉田に出かけ、「夕方5時のチャイム」を経験してきた。あの日の富士吉田を「場」として、その前後の日々のことを含め、見て、聴いて、感じ、考えたことを何回かに分けて、このブログに書くことから、《偶景web》の「志村正彦ライナーノーツ」を始めたい。(時に「ライナーノーツ」は「LN」と略記させていただく)

2 件のコメント:

  1. ブログの開設、おめでとうございます。
    何よりも心待ちにしていた出来事で、興奮覚めやらぬままこのコメントを書いております。
    先生の鋭い感受性と豊かな語彙をもって、山梨の地から志村正彦君の世界についてぜひ綴って下さい。同郷のフジファブリックファンとして、心より応援しております。

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  2. 初コメント、どうもありがとうございます。

    そもそも、私がこのようなblogを始めたのも、Jack Russellさんの「Fujifabric International Fan Site 」に出会ったことが大きなきっかけとなっています。志村展を始めとする様々なイベントや動きについての的確で丁寧でそして配慮の行き届いた文章、そして彼の歌を世界へ伝えていこうとする翻訳という行為、そのようなあなたの試みから「勇気」をいただいて、《偶景web》を作り、「志村正彦ライナーノーツ」を歩み始めることを決意しました。

     拙い方法ではありますが、私なりに書いていくことで、志村正彦についての対話の場ができることを望んでいます。blogを開設するのは簡単ですが、持続することは大変でしょうね。週1回ほどのペースになるかと思いますが、なんとか進んでいきたいです。

    これからもご批評やコメントをお願いいたします。今日はありがとうございました。

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