ページ

2019年12月12日木曜日

チャペルアワー「やすかれ、わがこころよ」

 山梨英和大学にはチャペルアワーという時間が毎日ある。昨日12月11日、中村哲氏を追悼する礼拝が行われた。学生や教職員が数十名集まった。壇上の横には氏の写真が置かれていた。

 「讃美歌21」の532番『やすかれ、わがこころよ』がパイプオルガンで演奏され、皆で祈りを込めて歌った。「やすかれ、わがこころよ、なみかぜ猛るときも、恐れも悲しみをも みむねにすべて委ねん」という歌詞が胸に刻まれた。その後、ヨハネによる福音書12章24節「一粒の麦は、地に落ちて死ななければ、一粒のままである。だが、死ねば、多くの実を結ぶ」が朗読された。

 中村氏と親交があった宗教主任が、短い時間ではあったが、中村哲氏を追悼した。1987年の出会いの時には、中村氏は日本キリスト教海外医療協力会からパキスタンのペシャワールにある「ペシャワール・クリスチャン・ホスピタル」に派遣され、ハンセン病の治療のために働いていた。その後思うところがあって、ペシャワール会を立ち上げたそうである。8月の山梨英和130周年記念講演会のことも振り返った。

 ここ一週間ほど様々なメディアで報道された中村氏の言葉を読んできた。今日は二つの記事を紹介したい。一つ目は、日本での最後の講演となった11月19日北九州市での講演会の記事である(朝日新聞デジタル2019.12.5)。支援者が海外で受け入れられる要点という質問に対する中村氏の返答を引用する。


援助する側の『頭の高さ』が気づかずに出ることがある。それを取り除かないと相手の心は開かれない。地元の習慣や文化に偏見なく接すること、我々の物差しを一時捨てることが必要では。


 援助する側の『頭の高さ』を取り除くこと。我々の物差しを一時捨てること。特別な支援という状況だけではなく、どのような場面であっても、私たちが人と応対するときに心に刻み込むべき言葉であろう。生活でも仕事でも、「頭」を高くしないこと。このようなブログを書くときでも、そのことを戒めとしたい。
 そして、自分の「物差し」を時には捨て去って考えていくことも大切である。そのことも肝に銘じたい。考えるためには一つの「物差し」を作る必要があるが、時にはその「物差し」から離れる必要もある。ある物差しともう一つの物差し、さらに異なる他の物差し。それらの対話から考えることは展開していく。

  二つ目は、HUFFPOST(2019.12.7)に掲載された、世界的なロックバンド「U2」が5日、13年ぶりの来日公演で、アフガニスタンで銃撃され死亡した中村哲医師を追悼した、という記事である。以下引用する。


観客らが撮影したとみられるTwitterに投稿された動画によると、会場のさいたまスーパーアリーナは照明が落とされ、ボーカルのボノさんが「この会場を大聖堂に変えよう。携帯をキャンドルに変えよう」と呼びかけた。呼びかけに応じた観客が、スマートフォンのライトを点灯させ、無数の光が揺れた。(中略)
ボーカルのボノさんは5日のライブ中に「偉大な中村医師を追悼するひとときを持とう」「中村哲さんのために」と中村さんを追悼。ボノさんは、楽曲の合間にも何度も「テツ・ナカムラ」「ペシャワール会」と祈るようにつぶやいた。ライブでは、アメリカの公民権運動の指導者で、1968年に暗殺されたマーティン・ルーサー・キング牧師に捧げて作ったと言われる「プライド」も歌われた。「プライド」には「彼らは命を奪ったが、誇りまでは奪うことはできなかった」という歌詞がある。


 言うまでもなく、ロック音楽、ロック文化と60年代以降の欧米での反戦平和運動、現在に至る世界人権保護活動には密接な関係がある。ロックの根本にはそのような「志」がある。志村正彦は『東京、音楽、ロックンロール』(志村日記2008.01.25)で次のように述べている。


「ロック」…何それ。知らない。どーでもいい。から、しょうもないことをつらつら書きます。「ロック」とは、何かを打ち破ろうとする反骨精神、逆らうべきところは逆らうという精神じゃねえのかな~。でもこれ、さんざんみんな言ってるね。だから…分かりやすく例えるならば、PUNKSが頭を逆立てるのはロックなのであり、PUNKなのであります。なぜなら地球の重力に逆らっているから。


 「ロック」とは、何かを打ち破ろうとする反骨精神、逆らうべきところは逆らうという精神、という言葉は、志村らしくないようであるが、本質的にはきわめて志村らしい表現だと言える。彼の音楽は、日本語ロックの限界を打ち破ろうとする意志によるものだった。二十九年という短い生涯の中で「逆らうべきところは逆らう」姿勢で、彼は闘ったのである。

 志村正彦を追悼する番組が、明日12月13日、NHK甲府で放送される。その「ヤマナシ・クエスト 若者のすべて~フジファブリック志村正彦がのこしたもの~」という番組が今夜の甲府局「Newsかいドキ」で3分に及んで紹介された。没後十年、志村正彦がのこしたものを受けとめたい。

0 件のコメント:

コメントを投稿