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2016年4月9日土曜日

『Sakura』2

 Chocolat&Akito meets The Mattson 2の『Sakura』はどのような経緯で作られたのか、ネットで検索してみると、片寄明人氏自身のfacebookの3月23日の記事にこうある。

巷に「桜ソング」はたくさんあるし、むかしプロデュースした名曲、フジファブリック「桜の季節」を超えるなんて到底無理だから、桜モチーフの歌詞だけは書くまい…と、秘かに誓ってたんです。
でもこの曲のサビメロを思いついた時に「桜が咲いたら なんとかなるかな」という言葉も同時についてきてしまいました。奇天烈な曲調だし、きっと「桜の季節」を書いた彼も笑ってくれるんじゃないかなって勝手に思っています。

 『桜の季節』を書いた彼、志村正彦もこの曲をかなり気に入るにちがいない。いつも新しい言葉と楽曲を模索していた彼だからこそ、この『Sakura』の独創性を評価したことだろう。

 このアルバムは8年の歳月をかけて協働して制作された。断続的ではあろうが、かなり長期にわたる時間の蓄積が作品の高い質を支えている。
 The Mattson 2がサウンドを、Chocolat&Akitoがメロディと歌詞を作ったようだが、「桜が咲いたら なんとかなるかな」の一節のメロディと言葉が同時にできたのは幸せなことだ。
 日常的な言葉で日常の現実を歌っているが、日常を受け入れる悦びと受け入れられない翳りが絡み合う。

 前回紹介したミュージックビデオは花井祐介氏の初監督作品らしい。
 冒頭の荒涼としたシーンを見て、僕は何となく、志村正彦『桜の季節』の「桜が枯れた頃」という言葉から想像される世界を思い起こした。
 冬の枯れ果てた世界から春の世界への展開が見事だ。色彩感あふれる映像、英訳詞text、アニメーションの綴れ織りが陰影ある音源と重なり合い、『Sakura』の季節を浮かび上がらせている。

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