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2016年4月7日木曜日

『Sakura』 CHOCOLAT & AKITO MEETS THE MATTSON 2

 三月末から四月初めにかけて、テレビ地上波の音楽番組は、いわゆる「桜・春ソング」の特集が多い。幾つか録画して早送りで見たが、フジファブリック・志村正彦の『桜の季節』が取り上げられることはなかった。期待していたわけではなかった。この歌はヒットしたわけではなく、しかも「桜・春ソング」からかなり逸脱している。むしろ、アンチ「桜ソング」の代表曲かもしれない。桜についての紋切り型の叙情を打ち壊している。『桜の季節』は日本的な美学から遠いところにある。

 最近、片寄明人(志村正彦が敬愛していた音楽家。フジファブリックのメジャー1stアルバムのプロデューサー)とショコラによる夫婦デュオ、ショコラ&アキトの新アルバム『CHOCOLAT & AKITO MEETS THE MATTSON 2』を取り寄せた。60年代風のイラストと二つ折りの紙ジャケットという体裁は、昔のLPレコードのミニチュアのような雰囲気を醸し出す。

 ザ・マットソン2という双子(Jared Mattson・Jonathan Mattson)のジャズ・デュオとのコラボレーションによって練り上げられた音源は、日本語の言葉とサウンドの綴れ織りが独特だ。風景を喚起する音楽でここちよい。季節のせいか、『Sakura』という曲をよく聴いている。

 この作品のMVが公式サイトにある。


 
 英訳した歌詞が文字として現れるのが面白い。視覚はアルファベットを追い、聴覚は日本語を追う。日本語ロックと英語ロックの複合のようで、不思議な効果を持っている。英語の意味と日本語の意味がぶつかり、逆に日本語の響きそのものがよく伝わる。

 さくらが さくらが さいたら

 なんとか なんとか なるかな

 ここ数日、この歌詞の一節、声と音がずっとループしている。聞こえるままに平仮名で表記してみた。
 この歌に促されるようにして、僕も自分に問いかけてしまう。

 なんとかなるかな。なんともならないかな。なるかなならないかな。ならないかななるかな。
 
 CHOCOLAT & AKITOとTHE MATTSON 2の『Sakura』は、桜の季節、春の心のざわめき、ゆらぎ、瞬間の断片を美しく細やかに表現している。

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