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2013年8月12日月曜日

「一期一会」 (志村正彦LN 43)

 8月7日、「1番ソングSHOW」の「日本全国47都道府県 地元スター総選挙」という特集で、志村正彦が山梨県の5位になった。レミオロメンや宮沢和史(ザ・ブーム)より下位というのは、一般的な知名度からすると妥当なのだろう。とにかく、彼の名が上がったのは素直に嬉しい。

  前回触れたように、NHK甲府「がんばる甲州人」の「ロックミュージシャン志村正彦さん」には、アナウンサー泉浩司さんとキャスター小倉実華さんの二人による丁寧なコメントと、母志村妙子さんの取材に基づく「一期一会」という言葉と印象深いエピソードについての紹介があった。今回はそのことについて記したい。以下は、該当部分を放送から起こしたものである。(A=泉浩司、B= 小倉実華と略す)

A まず志村さんの音楽の持つ力ですよね、それが今地域の誇りとなってきている。なんかいいですよね。
B そうですよね。志村さんの独特な世界観がこの富士山の麓山梨で生まれたっていうことは素直に嬉しいですし、また山梨の誇りだなっていうふうに感じましたね。
A 今回はですね、色紙ではありません。志村さんのお母さま妙子さんからこんな言葉をいただきました。
一期一会
 (通常の「がんばる甲州人」では、本人が大切にしている言葉を記した色紙が披露される。今回はその代わりに、この言葉が画面に大きく文字として映し出された)
B 妙子さんから伺ったエピソードによりますと、志村さんは一度だけライブの直前に風邪をひいて、いいパフォーマンスができなかったことがあったそうなんです。その時に電話で妙子さん、次のライブで頑張ればいいじゃないと励ましました。すると志村さんは、次に同じお客さんに会えるかはまあ分からないと、だから今回限りの覚悟で演奏に臨まなくてはいけないんだと話していたそうなんですね。妙子さんそれが最も印象に残っていると話していました。
A はい、この放送自体が志村さんとの一期一会という方もいるかと思うんですよね。
B  そうですね。
A フジファブリックは志村さん亡き後も残った3人のメンバーで活動を続けています。

 「一期一会」、一生に一度だけの機会。志村正彦は、いつもこの言葉の通り、「今回限りの覚悟で演奏に臨まなくてはいけないんだ」と考えて、一つひとつのライブに向き合っていたのだろう。彼らしい「志」である。確かに、残されたどのライブ映像にも、そのような志を宿しているかのような眼差しと佇まいを感じ取ってしまう。歌い手としての責任が強く伝わる。

  ただし、茶道では、「一期一会」を「どの茶会でも一生に一度のものと心得て、主客ともに誠意を尽くすべきだ」という心得だと教えているようだ。この「主客ともに」というのを音楽にあてはめると、「歌い手聴き手ともに」ということになろう。だとすれば、「一期一会」の一つひとつのコンサートを成立させるのは、歌い手側だけではなく、聴き手側の一人ひとりも「誠意を尽くす」ことが不可欠となる。
 このことを、私たち聴き手も忘れるべきではないだろう。

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