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2016年12月11日日曜日

パティ・スミスが歌う『はげしい雨が降る』-ディランのノーベル賞授賞式

 昨夜、パティ・スミスがノーベル賞授賞式でボブ・ディランの代わりに『はげしい雨が降る』(A Hard Rain’s A-Gonna Fall)を歌った。もうすぐ七十歳になるパティを見ると別の感慨も覚える。
 公式の映像がyoutubeにある。1:03頃から1:11頃までがそのシーンだ。

 パティは緊張のせいか2番の途中で詰まってしまう。「ごめんなさい。とてもナーバスになっています」と言うと、会場からあたたかい拍手。それに促されるようにして、少し戻ったうえでもう一度歌い始めた。
 パティの声を通じてディランの言葉が会場に静かにしかし強く広がっていく。歌詞に触発されたのだろうか、涙ぐむ女性も映されていた。真摯であたたかい雰囲気に包まれていた。歌詞の一節を引きたい。拙訳を付す。

  Heard the song of a poet who died in the gutter,
  Heard the sound of a clown who cried in the alley,
  And it's a hard, and it's a hard, it's a hard, it's a hard,
  And it's a hard rain's a-gonna fall.

  側溝で死んだ詩人の歌を聞いた
  路地で泣いた道化の声を聞いた
  激しい激しい激しい激しい
  激しい雨が降る

 ボブ・ディランの歌が「文学」であるかどうかというつまらない議論があるようだが、言葉が私たちに作用していく作品は、文字であれ音声であれ、すべて「文学」だと考える。書かれた文学の歴史はまだまだ浅い。もともと歌謡や口承文芸がその根源にある。
 ディランのノーベル賞授賞は、彼の歌、そして広く、ロックの歌、ロックの詩に出会う人が増えていくことに最大の意義があるのだろう。

【付記】
 昨夜放送のNHKスペシャル『ボブディラン ノーベル賞詩人 魔法の言葉 は非常に興味深かった。タルサにある「ボブ・ディラン アーカイブ」に取材に行き、あの『ブルーにこんがらがって』(Tangled Up in Blue)の創作過程を資料に基づいて解説していた。ディランがどれだけの時間をかけて作品を完成していったのかの一端が分かる。12月17日(土) 午前0時10分から再放送される。この番組については回を改めて書いてみたい。
 また、今夜23:00からNHKBSプレミアムで 『BOB DYLAN Master Of Change~ディランは変わる~』も放送される。

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