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2016年12月28日水曜日

2016年を振り返る[志村正彦LN146]

 今年は、折に触れてこのblogで触れたが、志村正彦・フジファブリックの作品が地上波テレビなどで何度も取り上げられた。映像メディアも多様化しているが、やはり地上波の力は大きい。反響の度合いが格段に違う。

・ 5月19日、NHKEテレ、『ミュージック・ポートレイト』「妻夫木聡×満島ひかり 第2夜」。俳優の妻夫木聡が『茜色の夕日』を人に贈りたい曲として選んだ。

・ 8月18日深夜、フジテレビ、アニメ『バッテリー』第6回。エンディング曲として『若者のすべて』(anderlustによるカバーヴァージョン)が流された。

・ 11月15日、NHKBSプレミアム、ドラマ『プリンセスメゾン』第4回「憧れのライフスタイル」。『茜色の夕日』が挿入歌として使われた。

・ 12月1日、NHKEテレ、『ミュージック・ポートレイト』「古舘伊知郎×大根仁 第2夜」。映画監督の大根仁が『夜明けのBEAT』を人生の転機となった大切な曲として紹介した。

 確認できていないだけで、この他にもあったかもしれない。twitterなどで、季節の折々に、例えば夏の花火の季節に『若者のすべて』が色々な場所で流されたという報告があった。anderlustによる『若者のすべて』カバーはCD音源化されたが、ライブなどで志村と縁のある音楽家を中心に、フジファブリック作品が演奏されたという話も少なくなかった。

 年末、志村正彦の故郷、山梨県富士吉田市では、夕方5時にフジファブリック『茜色の夕日』のチャイムが流された。彼の同級生を中心とした集まり「路地裏の僕たち」や市役所のおかげだ。
 昨夜は「Yahoo!JAPAN」の「エンタメ」ニュース欄で「志村正彦さん 防災無線で追悼という毎日新聞の記事が配信されていた(12/27(火) 17:29)。東京から来た女性の「青春時代に聴いた志村さんの音楽と人間性にひかれます。地元でチャイムを流し続けてくれているので、また来たいです」というコメント、24日下吉田駅前にファンが集っている写真が載せられていた。
 チャイムが流される。ただそれだけのことかもしれないが、それはそれだけで終わらない。大切な何かが確実に伝わっていく。

 「路地裏の僕たち」のメンバーは5月から地元ラジオ局の「エフエムふじごこ」で、『路地裏の僕たちでずらずら言わせて』(日曜日14:00~14:30、再放送水曜日20:30~21:00)を始めた。「都留信用組合プレゼンツ」とあり、スポンサーのローカル色が強いのがいい。
 同級生ならではの思い出話。時に甲州弁が混じるのがとてもいい。彼らも参加し、9月に開催された「SHINJUKU LOFT 40TH ANNIVERSARY MUSIC FES DREAM MATCH 2016」出演アーティストによる志村正彦についてのコメントもあった。最近、「富士ファブリック」オリジナルメンバーの3人による結成時の話が数回放送されたが、志村が当時好きだったブラジル音楽などが紹介され、非常に興味深い内容だった。(ネットラジオの録音方法が分からないので、外出中で聞けない日もあるのが残念だが)

 今年は1月にデビッド・ボウイ、11月にレナード・コーエンが亡くなった。60年代70年代から活躍してきた「ロックの詩人」の生が閉じられていく時代を迎えている。ボブ・ディランは歌い続け、ノーベル文学賞を受賞した。「ロックの詩」の文学としての価値が歴史に刻まれた。
 このblogは、その折々の出来事、偶発性に触発されることは重視しているので、洋楽の話題が多くなった。僕にとってロックの原点は英米にある。現在の音楽シーンで最も好きなバンド、AnalogfishとHINTOについて何度も書いた。この二つのバンドの作品とライブは今日の都市音楽の最高の達成点だと断言する。ポルトガルの詩人フェルナンド・ペソアの足跡を訪ねる小さな旅のノートも綴ることができた。地元の愛すべきクラブ、ヴァンフォーレ甲府のこと、サッカースタジアムという場についても触れた。

 歌や詩の言葉、音楽の作品やライブを縦軸に、甲府や山梨という場、時には旅の地を横軸にして、この偶景webは織り込まれていく。その中心点にいるのは志村正彦なのだが、今年は相対的に、彼の作品を取り上げることが少なくなってしまった。関心が低下しているのではなく、むしろその逆である。書いてみたい様々なモチーフが蓄積されているのだが、僕の記述ペースではこの回数と分量が限界だった。(それでも今回で82回を数えた。4日に1回の割合に近い)来年は少しスタイルを変えてみたい。

 今年、志村正彦に関する私自身の仕事に関して一つの進展があった。
  『変わる! 高校国語の新しい理論と実践―「資質・能力」の確実な育成をめざして』(編著大滝一登・幸田国広、大修館書店、2016/11/20)という書籍に、 『思考の仕方を捉え、文化を深く考察する―随筆、歌詞、評論を関連付けて読む―』という原稿を執筆した。三つの作品、俵万智の随筆『さくらさくらさくら』、志村正彦・フジファブリックの歌詞『桜の季節』、社会学者佐藤俊樹の評論『桜が創った「日本」』を横断的に教材化して、生徒の思考と表現を触発させ、「桜」という不可思議な存在、言語文化的な主題について探究する授業を報告し分析したものである。十回分の授業を十二頁に集約させたために概要的な記述になっている(全体のバランスと分量の制約があり、志村正彦に関する部分も当初書いた原稿を削除せざるを得なかった)。拙いものではあるが、ここ数年試みてきた「思考と表現の構造化」の学習、「志村正彦の歌詞」の教材化によって、新しい高校国語の方向の一つを素描することはできたのかもしれない。
 この本の詳細についてはあらためて書いてみたい。

 12月14日、フジファブリックのニューアルバム『STAND!!』が発表された。2014年9月リリースの『LIFE』から二年ぶりの新作だ。現メンバーの3人が数曲ずつ曲を作ったそうだ。どのような世界を作り上げたのだろうか。変化しているのだろうか。最近注文したのでまだ届いていないのだが、冬休みの間に聴いてみたい。 

 2016年も、志村正彦・フジファブリックの作品はかけがえのないものとして、人々に届けられている。

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