映画『ここは退屈迎えに来て』(廣木隆一監督)を見てきた。甲府の中心街に一つだけ残っている映画館「甲府シアターセントラルBe館」で今日から上映が始まった。
廣木隆一はかなり前から好きな監督である。現在のフジファブリックが主題歌『Water Lily Flower』と劇伴を担当し、志村正彦の『茜色の夕日』が劇中で歌われていると知って、どうしても見たかった作品だ。甲府での上映は無理かもしれないと思っていたが、シアターセントラルBe館の予定にあり、とても楽しみにしていた。
これから鑑賞される方がいるかもしれないので、映画の具体的内容については触れないが、書いておきたいことが少しある。
原作者山内マリコの故郷である富山県を舞台とする一種のロードムービーである。地方在住者としては、どこにでもある地方都市の郊外のどこにでもある風景に「デジャヴュ」を覚える。東京から帰郷した「私」(橋本愛)と故郷にそのまま残っていた「あたし」(門脇麦)という二人の女性の物語。「椎名くん」(成田凌)という男性が展開の中心にいるのだが、彼は空虚な存在でもある。物語に登場してはいるが、『桐島、部活やめるってよ』(吉田大八監督)の「桐島」にある意味では近い存在かもしれない。この三人は共に、どこにでもある地方都市のどこにでもいる人物である。つまり、僕たち自身であり、僕たちの隣人であるのだ。
撮影が優れている。「場」はあるにはあるのだがそこに「人」があまりいない地方の空間の感触を的確に描き出している。ドライブシーン中の車のフロントガラスに映る周囲の影の動きのイマージュ。ラストシーン近くで「サツキ」(柳ゆり菜)が「私」と「椎名くん」の二人を見つめる際の表情の微妙な変化の演技と演出も素晴らしかった。キャスティングでは山梨出身のマキタスポーツがいい味を出していた。
それに比べて、物語の構成にはもっと練り上げが必要だっただろう。人物がたくさん登場ずる群像劇であり、2004年、2008年、2010年、2013年と時間も交錯するので、展開が把握しにくい。もう少し分かりやすく整理して、モチーフを焦点化した方がよかったのではないか。
フジファブリックの劇伴は、彼らの巧みな演奏力によって安定感があった。『Water Lily Flower』も小波のような余韻を残した。
話題となっている『茜色の夕日』の劇中挿入シーンだが、おそらく賛否両論があるだろう。僕個人としては条件づきではあるが、どちらかというと肯定的である。制作者には失礼な言い方になるかもしれないが、この映画全体を『茜色の夕日』の映画版ミュージックビデオと捉えることもできるからだ。この歌の受容の歴史の中で、この映画は話題作、問題作として記憶に残るだろう。このことはいつか機会を設けて書いてみたい。
甲府シアターセントラルBe館での上映期間は、12月6日までの二週間(水曜日は休館)。山梨在住の志村正彦・フジファブリックのファンであればご覧になることを勧める。『茜色の夕日』が、映画作品という虚構の中ではあるが実在しているのだから。
公演名称
〈太宰治「新樹の言葉」と「走れメロス」 講座・朗読・芝居の会〉の申込
公演概要
日時:2025年11月3日(月、文化の日)開場13:30 開演14:00 終演予定 15:30/会場:こうふ亀屋座 (甲府市丸の内1丁目11-5)/主催:甲府 文と芸の会/料金 無料/要 事前申込・先着90名/内容:第Ⅰ部 講座・朗読 「新樹の言葉」と「走れメロス」講師 小林一之(山梨英和大学特任教授)朗読 エイコ、第Ⅱ部 独り芝居 「走れメロス」俳優 有馬眞胤(劇団四季出身、蜷川幸雄演出作品に20年間参加、一篇の小説を全て覚えて演じます)・下座(三味線)エイコ
申込方法
右下の〈申込フォーム〉から一回につき一名お申し込みできます。記入欄の三つの枠に、 ①名前欄に〈氏名〉②メール欄に〈電子メールアドレス〉③メッセージ欄に〈11月3日公演〉とそれぞれ記入して、送信ボタンをクリックしてください。三つの枠のすべてに記入しないと送信できません(その他、ご要望やご質問がある場合はメッセージ欄にご記入ください)。申し込み後3日以内に受付完了のメールを送信します(3日経ってもこちらからの返信がない場合は、再度、申込フォームの「メッセージ欄」にその旨を書いて送ってください)。
*〈申込フォーム〉での申し込みができない場合やメールアドレスをお持ちでない場合は、チラシ画像に記載の番号へ電話でお申し込みください。
*申込者の皆様のメールアドレスは、本公演に関する事務連絡およびご案内目的のみに利用いたします。本目的以外の用途での利用は一切いたしません。
2018年11月23日金曜日
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