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2019年10月13日日曜日

『別冊 音楽と人×フジファブリック』[志村正彦LN236]

 10月初旬、『別冊 音楽と人×フジファブリック』という増刊号が出された。雑誌増刊号ではあるが、フジファブリック単体を対象とする一冊の刊行物としては、単行本『FAB BOOK』フジファブリック(2010/6)以来のことだろう。主な記事を次に掲げる。

・インタビュー「僕とフジファブリック」山内総一郎・加藤慎一・金澤ダイスケ
・音楽と人アーカイブpart1 志村正彦記念館
・音楽と人アーカイブpart2 フジファブリック
・居酒屋でゆるいかトーク

 このうち、3万字に及ぶインタビュー「僕とフジファブリック」は、長年の間フジファブリックの良き取材者である「音楽と人」編集部の樋口靖幸氏による(と思われる)三人のメンバーへのインタビュー記事だ。山内・加藤・金澤の三氏が志村正彦・フジファブリックとの出会いや加入の経緯、自らの性格、作品作り、これからのフジファブリックについて述べている。特にあまり単独の取材対象にならない加藤氏・金澤氏の発言を読むことができる。
 「僕とフジファブリック」というテーマが示すように、三人各々が個人「僕」という視点で「フジファブリック」を語っていて興味深い。志村正彦の関わりについても貴重な証言がある。

 まだ発売されたばかりの雑誌増刊号であるので、「僕とフジファブリック」というテーマに特にかかわる箇所だけ簡潔に引用したい。-以下は樋口氏の問いかけである。


・山内総一郎
-アニバーサリーなのにね。大阪城ホールでワンマンやるし、どんだけ花火が打ち上がってるアルバム[『F』]と思いきや(笑)。
「派手ではないですよね。でも今もフジファブリックっていうバンドをもっと理解したいと思ってますし、自分も裸にならないといけないし、そのために戦わないといけない。それでどうにか、僕らの音楽が誰かの勇気とか喜びとかに繫がっていくのかなって。で、その繰り返しが人生なのかなって」
-でも、今日のこの会話もそうだけど、志村くんが作った曲も含め、総くんはこのバンドで歌を唄うことでしか、裸になれないような気がします。もっと言うと、人生をフジファブリックの曲に導かれてるというか。
「導かれてる……そういうところもあるかもしれないですね」

・加藤慎一
 -フジファブリックらしさって、最初は志村くんが持ってたもので。
「そうですね」
-それを受け継いでるのとは違うけど、もともと加藤さんの中にも同じ〈らしさ〉があるってことなんじゃないか……と、今話をしてて思いました。
「まあでも、それは志村の曲がすごく面白くて、好きだから。そこに惹かれてこのバンドに入ったっていうのもあるし……」

・金澤ダイスケ
-これからフジファブリックの一員として、どうなっていきたいですか?
「やっぱりもっともっと矢面に立てるような存在にならないといけないなと思います。もともと目立ちたがり屋なんだし」
-大阪城ホールっていう大きな舞台に立つわけだし。
「そう。ちゃんと胸を張れるようにしなければいけないですね。そのためにはもっと自分と向き合って、もっと自分を表現できるようになりたいし、そういう曲がもっと書けるようになりたいですね」


 樋口靖幸氏の「人生をフジファブリックの曲に導かれてる」という的確な指摘は山内氏に対すものだが、加藤氏・金澤氏にも当てはまる。この文脈での「フジファブリックの曲」はその多くが志村正彦の作品を指すのだろう。そして、山内氏の「今もフジファブリックっていうバンドをもっと理解したい」という気持ち、加藤氏自身の持つ「フジファブリックらしさ」、金澤氏の「フジファブリックの一員」としての存在への抱負、それぞれが、「志村正彦のフジファブリック」に導かれて歩んできた「僕」の現在を語っている。そして三人ともに、作品作りへの強い想いと自分を自分らしい形で表現することへの決意を述べている。「フジファブリック」は志村正彦の作った「作品」であるのだからそれは必然である。

 この増刊号には二つのアーカイブが収録されている。「音楽と人アーカイブpart1 志村正彦記念館」は2009年までの「音楽と人」記事再録と未公開写真、「音楽と人アーカイブpart2 フジファブリック」は2010年以降の記事再録。特に「志村正彦記念館」には入手困難な記事が再録されているので大切な保存版となる。記念館の扉の33頁に「音楽と人」2004年12月号未掲載カット(撮影:磯部昭子)の横顔の写真が載っている。遠くを見つめている志村の眼差しが印象深い。


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