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2019年10月22日火曜日

金木犀の香り、ふたたび。 [志村正彦LN237]

 一週間ほど前からだが、ほのかに金木犀の香りがする。九月の下旬に香り始めたと以前書いた。でもすぐに消えてしまった。今年はほんの短い間だけなのかと思っていたら、このところふたたび金木犀の香りが漂う。どういうことなのか。花についても植物についても知識がないが、一部の花が咲き始め、遅れて、別の花が咲いたということなのか。とにかく例年にない現象だ。不思議である。

 20日、フジファブリック 15th anniversaryのSPECIAL LIVE at 大阪城ホール2019「IN MY TOWN」が成功のうちに終わったようだ。フジファブリックのファンにとって特別なライブだったのだろう。そのことは祝福したい。12月にwowowで放送されるのでそれを待ちたい。

 今日は朝から冷たい雨が降っていた。祝日で一日家にいたが、冬物を取り出した。ついこの前まで夏の暑さが続いていた。台風が来て、悲惨な災害が起きた。山梨は東京方面の交通が断絶した。季節の変調が続いている。
 夕方、「富士山で初冠雪 例年より22日遅く」とニュースが伝えていた。一日でかなり雪を被った富士山の映像。これまでは夏山のような富士山だったのに、一日で景色が変わった。

 金木犀の香りに戻りたい。今年の不思議な香り方は、金木犀がその香りの名残を惜しんでいたのかもしれない。過ぎ去ってしまわないようにと。
 志村正彦・フジファブリックの『赤黄色の金木犀』は、時間や季節の流れ方を歌っている。過ぎ去ったものを追いかけていく。


  もしも 過ぎ去りしあなたに 全て 伝えられるのならば
  それは 叶えられないとしても 心の中 準備をしていた


 「過ぎ去りしあなた」に伝えることは「叶えられない」。時を遡ることは不可能だが、そうだとしても「準備をしていた」「心の中」は何を追い求めていたのか。準備するのは時間との対話でもある。


  冷夏が続いたせいか今年は なんだか時が進むのが早い
  僕は残りの月にする事を 決めて歩くスピードを上げた


 「時が進むのが早い」ことに気づいた「僕」は「歩くスピード」を上げて、「残りの月」にする何を決めたのか。歩行の速度がその何かを追いかけていく。

 すべては「冷夏が続いた」せいなのか。季節の変調に呼応するかのように、「僕」は時の速度を感じ、時の流れを想う。「僕」は「過ぎ去りし」ひとやものやことを追いかけようとする。ほんとうは逆転していて、「過ぎ去りし」ひとやものやことが「僕」を追いかけてくるのかもしれない。


  赤黄色の金木犀の香りがして たまらなくなって
  何故か無駄に胸が 騒いでしまう帰り道


 一度消えてからふたたび香り始めた金木犀。香りがその香りを想起させるためにもう一度、いや何度も漂いだすかのように。なんだかたまらなくなった。追いかけていくもの。追いかけてくるもの。過ぎ去っていくもの。回帰してくるもの。

 今年の秋は、金木犀がふたたび香り、「たまらなくなって 何故か無駄に胸が 騒いでしまう」ような経験をした。そのことをこれからも想いだすだろう。
 秋は短く、もう冬が訪れる。

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