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2020年6月5日金曜日

「Educate yourself」

 Sly & The Family Stone『Family Affair』が作られた1970年代の前半は、日本でもアメリカでも60年代後半の雰囲気を濃厚に残す時代だった。荒々しいものがまだうごめく動きと共に次第にその動きが収束していく。その二つの動きが交錯する時代だった。

 60年代後半から70年代後半の時代から50年、半世紀が経った。
 今、アメリカのミネソタ州ミネアポリスで警官に拘束されて死亡したアフリカ系アメリカ人ジョージ・フロイド氏の事件に抗議するデモが世界中に広がっている。「正義なければ平和ない」と、フロイドさんに連帯を示すデモは欧州各地で連日繰り広げられている。

 アメリカでは暴動や略奪も起きてしまった。そのことに対して、弟のテレンス・フロイド氏が「Educate yourself」と訴えていた。「自分自身を教育して、誰に投票するか決めるんだ」「別のやり方でやろう」という文脈の表現だった。この映像がネットに上がっているのでぜひ見てほしい。

 この「educate yourself」について考えてみた。「educate」の語源については幾つかの説があるが、「人を外へ(ex-)引っ張り(duco)伸ばしていくこと」が基本的な意味らしい。このことから、人の力と能力を育成し、開発していくことと捉えることもできる。この言葉の定訳である「教育」には、誰かが誰かに教え込むという意味合いがある。もともとはそうではなく、自らが自らを育てていくという方に近い。「educate yourself」となると、自分自身が自分の力を育て伸ばしていくことになる。自分が主体であり自分が対象である。誰かから、学校や教師から教えられるのではない。自分が自分自身を育てていく。自らの能力や知性を伸ばしていく。
 以前、ジョセフ・ジャコトとジャック・ランシエールの『無知な教師 知性の解放について』について書いたことがある。人間は本質的に平等であり、人間は自分で知性を育成し、自身を解放することができる。「educate yourself」はその教えにも重なっていく。

 テレンス・フロイド氏の「自分自身を教育して、誰に投票するか決めるんだ」という言葉は、私たちの国も激しく揺さぶる。
 私たち一人ひとりが「educate yourself」を実践することによって、この日本も変化していくだろう。いや、変化させなければならない。
 私たちも問われているのだ。

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