S/R(Songs to Remember)は、洋楽と邦楽を交互に取り上げている。邦楽は、フジファブリック、HINTO、メレンゲ、そしてAnalogfishと続いてきた。HINTO、メレンゲ、Analogfishは、志村正彦とのつながりの流れだと受けとめられるかもしれない。自然にそう思われることはその通りなのだろうが、そうではないという気持ちの方がはるかに強い。この三つのバンドは日本語ロックの最高水準にある。安部コウセイ、クボケンジ、下岡晃の歌詞、そして楽曲、バンド演奏も、洋楽・邦楽を超えてロック音楽の「Songs to Remember記憶すべき歌」に入る。
Analogfish 『 I say 』は2013年リリースのアルバム『NEWCLEAR』収録曲。アルバムではバンドサウンドだが、映像『Analogfish - I say / TOKYO ACOUSTIC SESSION』では、下岡晃、佐々木健太郎、斉藤州一郎の3人によるコーラスとアコースティックギターがとても美しい音楽を響かせている。クレジットには「Sunday 25th of August 2013 経堂 しゅとカフェ」とある。8月の日曜日のカフェ。やわらかい光と樹の緑に囲まれている。
これと対照的なのがもう一つの映像『 “I say”【下岡晃バージョン】』。クレジットは「@代官山ノエル 2018/12/22-23」、クリスマスの前夜に本多記念教会で収録されたものだ。
『Suono Dolce「Music Go Round」』(GUEST : 下岡晃、聞き手 : 小野島大)で、下岡は次のように語っている。
「I Say」は、街を歩いてる時にずらずらっと出てきましたね。
「I Say」みたいな歌詞は、もう完璧にそぎ落として、何度聴いても耐えうるように磨きこんでいく。
この歌街を歩いてる時に出てきてから完璧にそぎ落として磨きこんでいくまで、どれくらいの時間が流れたのだろうか。「夕日が道行く彼女の頬を染めれば/もう済んだ事をなんだか思い出して/テールランプの灯りが夜に滲めば/無い物ばかりがやけに気になって」のところが染み込んでくる。
下岡は日常の光景、見える世界を掴みながら、それを見えない世界、不可視のものへとつなげていく。
「I say / 愛せ」という音の戯れ。音の戯れを通じてあえて語ろうとする愛であろう。愛とは持っていないものを与えることである、というジャック・ラカンの言葉を想い出す。
2013年、TOKYO ACOUSTIC SESSION」versionの夏の昼の光、自然の陽光。Analogfish3人のおだやかな「I say」が漂う。2018年、「代官山ノエル」versionの冬の夜の光、クリスマスのキャンドルの灯り。下岡晃の「祈り」のような「I say」が教会に広がる。
『Analogfish - I say / TOKYO ACOUSTIC SESSION』
Sunday 25th of August 2013 経堂 しゅとカフェ
Editor:Yuko Morita Camera:Tetsuya Yamakawa,
Takaaki Komazaki Director and Producer:Rie Niwa
“I say”【下岡晃バージョン】@代官山ノエル 2018/12/22-23
撮影:澤崎昌文 (VANESSA+embrasse) 制作補助:有吉達宏
ディレクター:西川啓
アナログフィッシュ 『 I say 』
作詞:下岡晃
作曲:アナログフィッシュ
悲しいときは泣いたら見つけてくれた
パパはいないよママもいないよ
なんにも言わずにただ抱きしめてくれた
人はいないよ君に会いたいよ
愛されたいより愛せ
I say ただI say
ただ愛せ
夕日が道行く彼女の頬を染めれば
もう済んだ事をなんだか思い出して
テールランプの灯りが夜に滲めば
無い物ばかりがやけに気になって
愛されたいより愛せ
I say ただI say
ただ愛せ
悲しいときは泣いたら見つけてくれた
パパはいないよもうママもいないよ
なんにも言わずにただ抱きしめてくれた
人はいないよ君に会いたいよ
愛されたいより愛せ
I say ただI say
ただ愛せ
世界じゃなくても
時代でもなくても
卵が先でも
鶏が先でも
I say ただI say
ただ愛せ
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