公演名称

〈太宰治「新樹の言葉」と「走れメロス」 講座・朗読・芝居の会〉の申込

公演概要

日時:2025年11月3日(月、文化の日)開場13:30 開演14:00 終演予定 15:30/会場:こうふ亀屋座 (甲府市丸の内1丁目11-5)/主催:甲府 文と芸の会/料金 無料/要 事前申込・先着90名/内容:第Ⅰ部 講座・朗読 「新樹の言葉」と「走れメロス」講師 小林一之(山梨英和大学特任教授)朗読 エイコ、第Ⅱ部 独り芝居 「走れメロス」俳優 有馬眞胤(劇団四季出身、蜷川幸雄演出作品に20年間参加、一篇の小説を全て覚えて演じます)・下座(三味線)エイコ

申込方法

右下の〈申込フォーム〉から一回につき一名お申し込みできます。記入欄の三つの枠に、 ①名前欄に〈氏名〉②メール欄に〈電子メールアドレス〉③メッセージ欄に〈11月3日公演〉とそれぞれ記入して、送信ボタンをクリックしてください。三つの枠のすべてに記入しないと送信できません(その他、ご要望やご質問がある場合はメッセージ欄にご記入ください)。申し込み後3日以内に受付完了のメールを送信します(3日経ってもこちらからの返信がない場合は、再度、申込フォームの「メッセージ欄」にその旨を書いて送ってください)。 *〈申込フォーム〉での申し込みができない場合やメールアドレスをお持ちでない場合は、チラシ画像に記載の番号へ電話でお申し込みください。 *申込者の皆様のメールアドレスは、本公演に関する事務連絡およびご案内目的のみに利用いたします。本目的以外の用途での利用は一切いたしません。

2019年5月20日月曜日

2009年5月20日、『CHRONICLE』リリース。[志村正彦LN219]

 十年前の今日、2009年5月20日、フジファブリック4thアルバム『CHRONICLE』が発売された。
 初の海外レコーディング音源(スウェーデン・ストックホルム)を中心に全15曲で構成され、「ストックホルム“喜怒哀楽”映像日記」という80分強の映像(『ルーティーン』レコーディングセッションなどを含む)を収録したSpecial DVDが付いた意欲作だった。

 雑誌『音楽と人』2019年2月号に「フジファブリック クロニクル ~アルバム・セルフライナーノーツ~ これまで発表したアルバム/ミニアルバムをバンドの歴史とともに振り返る」という記事(文=樋口靖幸)が掲載されている。
 『CHRONICLE』について、山内総一郎・金澤ダイスケ・加藤慎一の三人が次のように語っている。(雑誌発売から数ヶ月経ったので、この箇所を全て引用させていただく) 


実は僕……この時期に「このアルバムを作り終わったらバンドを辞めようかと思ってて」という相談を加藤さんにしたことがあって……というのも前の反動なのか、志村君がたくさん曲を作ってきたんですけど、これからのフジファブリックは志村君が作った曲にプレイヤーとして関わっていくだけのスタンスになりそうな感じがしたんですよ。(山内) そうそう。志村のギアがものすごく高回転になってる時期でしたね。アクセルがベタ踏み状態というか。誰も止められない、みたいな。(金澤) バンドとしてはけっこう険悪な空気もあった時期で。でもそこからみんなで話し合って、これからも一緒に頑張っていこうっていう気持ち作ったアルバムですね。(山内) そんなひと悶着があってからのストックホルムでのレコーディングだったんですよ。あそこからまたバンドの空気がいい感じになっていったんで、あの海外レコーディングは必然だったんだなって思います。(加藤)


 『CHRONICLE』の制作時期に(発言内容からするとレコーディングというよりその前の準備段階だろうが)、フジファブリックはある「危機」を迎えていた。これまでのいくつかの記事や発言から推測されていた状況が、現メンバーの三人によって証言されている。山内の「バンドを辞めようか」と思っていた発言とその理由にも驚かされる。
 かなり正直にある意味では赤裸々に語られているのは、「デビュー十五年」関連記事という性格の所産かもしれない。そうであるからこそ、僕たちファンはこの発言をそのままに受けとめるべきなのだろう。だが、フジファブリックの創始者、この発言で言及されている志村正彦本人はここにはいない。そのような振り返りである以上、限定的な証言にすぎないということは確認しておきたい。

 「けっこう険悪な空気もあった時期」はストックホルムでのレコーディングで解消されていったようだが、それでも「険悪」という言葉には強い意味合いがある。平穏なものからはほど遠い。バンドは仲良しクラブではないので、様々な葛藤や軋轢もあるだろう。それがどういうものだったか、具体的には想像できないが、『CHRONICLE』の音源、志村の歌の言葉の中に、その痕跡のようなものがある程度まで刻み込まれているかもしれない。

 『CHRONICLE』発売後の6月から7月にかけて「CHRONICLE TOUR」が行われた。今年7月、その映像が『FAB BOX III』、「Official Bootleg Live & Documentary Movies of “CHRONICLE TOUR"」DVDとしてリリースされる。
 この記録映像も、フジファブリックにとって、というよりも、志村正彦にとって『CHRONICLE』がどのような作品であったのかという「問い」に対する「答え」の一つになるのだろうか。

2019年5月5日日曜日

『FAB LIST』の三曲 [志村正彦LN218]

 7月6日(土)11:00からと16:00からの二回ふじさんホールで開催されるフジファブリック志村正彦没後10年『FAB BOX III 上映會』。僕たちも何とか赤富士通信先行予約でチケットを入手できた。あと二ヶ月ほどだが楽しみにしている。

 上映時間は2時間ということで、『FAB BOX III』の『Official Bootleg Live & Documentary Movies of "CHRONICLE TOUR"』『Official Bootleg Movies of "デビュー5周年ツアーGoGoGoGoGoooood!!!!!"』の二つの映像作品からダイジェスト編集した特別先行上映となるようだ。僕個人としては『ルーティーン』を聴いてみたいがどうなるだろうか。2014年の上映會でもこみ上げるものがあったので冷静に鑑賞していられるかこころもとないが、どのような感情が去来してもそれをそのまま受けとめたい。志村正彦・フジファブリックの2009年の「ライブ」を観客のみんなと共有できるのは希有な経験になるであろう。

 フジファブリックの公式サイトから、ファンが選ぶPLAYLIST ALBUM『FAB LIST』リリース決定というアナウンスもあった。『FAB LIST』2004~2009はかつて在籍していたEMI Records / ユニバーサルミュージックから、『FAB LIST II』2010~2019は現在在籍しているSony Musicからリリースされる。収録曲は今までリリースした作品を対象として5/19(日)までの期間内に「FAB LIST」特設サイトで三曲を投票して決定される。『FAB LIST』の発売日等は後日発表となるそうだ。

 僕自身は以前書いたように、すでにリリースされているCD『SINGLES 2004-2009』と、『FAB BOX』【完全生産限定BOX】中の1枚としてリリースされたCD『シングルB面集 2004-2009』を合体させた『コンプリート・シングル集』を発売してほしいと思っている。志村正彦・フジファブリックの事実上のベスト盤となるからだ。できるだけ安価のパッケージ盤にして若者たちに届けてほしいのだ。

 だから今回の『FAB LIST』の企画には複雑な想いもあるが、肯定的に捉えれば、シングルには収録されていない曲が入る可能性があること、ファンの投票による選曲にも新鮮さがあることになる。また、『FAB LIST I』(2004~2009)は全曲リマスタリングで収録ということで音源の質に期待できる。だから2019年という年の試みの一つとしては理解もできる。2004~2009と2010~2019という年代別に二枚に分けたことは英断である。この二つの時代には明らかな断絶があるからだ。

 『FAB LIST I』(2004~2009)にはプレデビュー盤『アラモルト』からシングルまでこの時代の全曲から選ぶことができるのがいい。三曲までの投票ということでファンはみんな考え込んでしまうだろう。
 僕ならどの曲を選ぶか。三曲に絞ることなど到底できないという前提がある。だからある観点を設けて選ぶことになる。別の観点を設定すれば異なる選曲になる。選択する時期や季節、時代や年齢も関係するだろう。今回の投票に加わる全ての人に各々の観点がある。現時点で選択された観点が集積すると『FAB LIST』が構成できるのだろう。

 2019年5月、僕の選曲の観点は、「君」に対する想いを叙述しその想いが限りなく祈りに近づいていく歌であること、志村正彦でなければ創作しえない曲であることの二つである。
 その観点から選ぶと、『花』、『セレナーデ』、『ルーティーン』の三つになる。


『花』
花のように儚くて色褪せてゆく
君を初めて見た日のことも

『セレナーデ』
明日は君にとって 幸せでありますように
そしてそれを僕に 分けてくれ

『ルーティーン』
折れちゃいそうな心だけど
君からもらった心がある


 この三つの歌をつなぎ合わせると、志村正彦の「君」への想い、少なくとも「君」への想いというモチーフの変化を感じる。変化というよりも成熟として捉えられる。『花』は高校時代にその原型が考えられていたようだ。『茜色の夕日』とは少し異なる感受性が刻まれている。この二曲と『浮雲』を合わせた3曲が志村の原点と言える。(この三曲を投票するという観点もあるあろう)

 『セレナーデ』と『ルーティーン』については何度も書いてきたので新たに書けることもないのだが、一つ付言するのなら、「明日」(『セレナーデ』)、「昨日もね 明日も 明後日も 明々後日も」(『ルーティーン』)とあるように、過ぎ去った時よりもこれから到来するであろう時の中に「君」への想いを歌ったことである。 

 「君」への想いを述べた素晴らしい歌は数多くある。『FAB LIST《君への想い》』というアルバムを夢想するのもいいかもしれない。