日曜日の朝、この原稿を書いている。
 二月の中旬を超え、厳しい寒さが次第に過ぎ去り、日差しが明るくやわらかくなってきた。今朝は快晴。『茜色の夕日』の「晴れた心の日曜日の朝」を想起させる。
  茜色の夕日眺めてたら
  少し思い出すものがありました
  晴れた心の日曜日の朝
  誰もいない道 歩いたこと
 『茜色の夕日』は歩むことの歌である。記憶への歩みであり、作中の世界でも歌の主体は歩いているという設定ではないだろうか。
 歌詞の引用部分は、「少し思い出すもの」、記憶の光景として、ある日曜の朝の「誰もいない道 歩いたこと」が浮かび上がってくる。「茜色の夕日眺めてたら」という時の只中で。これはあくまで推測であるが、歌の主体は夕日を眺める直前まで、街路か路地か散歩道かどこか分からないが、人通りのない道を一人で歩いていたのではないだろうか。そして、界隈が茜色に染まりだすのに気づくと、立ち止まり、「茜色の夕日」を眺める。歩行と停止、風景の色調の変化は回想を促す。思い出の中の「誰もいない道 歩いたこと」につながっていく。
 『茜色の夕日・線香花火』カセットテープ版『茜色の夕日』のイントロは、ドラムの細やかなリズムの刻みが楽曲のテンポとなり、歩行の律動を奏でているように聞える。オルガン音がのびやかに上昇しおだやかに下降するのも歩行時の身体の所作を思わせる。楽曲のテンポは完成版だとされる6thシングル版と比べるとかなり速い。
 『茜色の夕日』のスタジオ収録の四つの音源の演奏時間を比較してみる。音源時間の歩みを振り返りたい。
1.2001年夏(推定)カセットテープ版
    4分40秒  
( 志村正彦:ボーカル・ギター、渡辺隆之:ドラムス、田所幸子:キーボード、萩原彰人:ギター、加藤雄一:ベース )
2.2002年10月21日CDミニアルバム『アラカルト』版
    4分52秒
( 志村正彦:ボーカル・ギター、渡辺隆之:ドラムス、田所幸子:キーボード、萩原彰人:ギター、加藤雄一:ベース )
3.2004年2月CDミニアルバム『アラモルト』版
   5分12秒
( 志村正彦:ボーカル・ギター、金澤ダイスケ:キーボード、加藤慎一:ベース、山内総一郎:ギター、足立房文:ドラムス )
4.2005年9月6thシングル版・2005年11月2ndCDアルバム『FAB FOX』版
   5分36秒
( 志村正彦:ボーカル・ギター、金澤ダイスケ:キーボード、加藤慎一:ベース、山内総一郎:ギター、足立房文:ドラムス )
 再生ソフトの示す時間を読みとると、カセットテープ版 4:40→『アラカルト』版 4:52→『アラモルト』版 5:12→シングル・『FAB FOX』版 5:36 と、イントロ・間奏などのアレンジ面の差異を考慮しないでを単純に曲の時間で比べると、最終的には1分ほど長くなっている。
 歩行という視点から捉えなおすと、歩行の速度が次第にゆっくりとゆったりとしてきたと捉えることもできる。四つのヴァージョンを聴き比べると、『茜色の夕日』という歌の演奏時間は、志村正彦・フジファブリックの歩みの過程と共に、変化してきたことが伝わってくる。
  (この項続く)
公演名称
〈太宰治「新樹の言葉」と「走れメロス」 講座・朗読・芝居の会〉の申込
公演概要
日時:2025年11月3日(月、文化の日)開場13:30 開演14:00 終演予定 15:30/会場:こうふ亀屋座 (甲府市丸の内1丁目11-5)/主催:甲府 文と芸の会/料金 無料/要 事前申込・先着90名/内容:第Ⅰ部 講座・朗読 「新樹の言葉」と「走れメロス」講師 小林一之(山梨英和大学特任教授)朗読 エイコ、第Ⅱ部 独り芝居 「走れメロス」俳優 有馬眞胤(劇団四季出身、蜷川幸雄演出作品に20年間参加、一篇の小説を全て覚えて演じます)・下座(三味線)エイコ
申込方法
右下の〈申込フォーム〉から一回につき一名お申し込みできます。記入欄の三つの枠に、 ①名前欄に〈氏名〉②メール欄に〈電子メールアドレス〉③メッセージ欄に〈11月3日公演〉とそれぞれ記入して、送信ボタンをクリックしてください。三つの枠のすべてに記入しないと送信できません(その他、ご要望やご質問がある場合はメッセージ欄にご記入ください)。申し込み後3日以内に受付完了のメールを送信します(3日経ってもこちらからの返信がない場合は、再度、申込フォームの「メッセージ欄」にその旨を書いて送ってください)。
*〈申込フォーム〉での申し込みができない場合やメールアドレスをお持ちでない場合は、チラシ画像に記載の番号へ電話でお申し込みください。
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