志村正彦の歌、その言葉の世界には、ある特有の分かりにくさがある。言葉の意味をたどっていっても、その意味がたどりきれない。その言葉が展開される文脈、背景が理解しにくい。歌が繰り広げられる舞台が明瞭でない。通常「僕」「私」という言葉で指示される、歌の話者や歌の世界の中の主人公としての主体の把握が難しい。そのような想いを抱いたことがある聴き手が多いであろう。少なくとも私にとって、彼の歌はそのように存在している。例えば、『桜の季節』はその代表ともいえる歌であろう。
もともと、歌や詩の言葉には、意味の飛躍があり、文脈も複雑である。隠喩の解釈が難しい場合もある。しかし、志村の場合、隠喩などの表現は比較的少なく、難解で抽象的な言葉もほとんど見あたらない。にも関わらず、歌の言葉全体を通して聴くと、どこかで意味が意味として結実していかないことがある。あるいは複数の意味が考えられ、どれかに決定できないこともある。このことも志村正彦の歌のある種の分かりにくさとなっている。
しかし、その分かりにくさは、分かることを阻むような、あるいは、分かろうとする者を拒むような、閉じられた狭隘さではなく、歌の構築の仕方が背負わざるを得ないような、不可避のものであり、その分かりにくさは、むしろ、分かろうとする行為や解釈の空白部として、聴き手に開かれている。
志村正彦の歌の聴き手はそのような空白部に触れることによって、彼の歌の魅力に惹きつけられ、彼の歌と対話することになる。分かりにくさの迷路のようなものをたどっていくうちに、聴き手はやがて、その空白を、自分自身の空白としても感じ、それを重ね合わせることで、聴き手にとっての歌の意味が浮かび上がってくる。
公演名称
〈太宰治「新樹の言葉」と「走れメロス」 講座・朗読・芝居の会〉の申込
公演概要
日時:2025年11月3日(月、文化の日)開場13:30 開演14:00 終演予定 15:30/会場:こうふ亀屋座 (甲府市丸の内1丁目11-5)/主催:甲府 文と芸の会/料金 無料/要 事前申込・先着90名/内容:第Ⅰ部 講座・朗読 「新樹の言葉」と「走れメロス」講師 小林一之(山梨英和大学特任教授)朗読 エイコ、第Ⅱ部 独り芝居 「走れメロス」俳優 有馬眞胤(劇団四季出身、蜷川幸雄演出作品に20年間参加、一篇の小説を全て覚えて演じます)・下座(三味線)エイコ
申込方法
右下の〈申込フォーム〉から一回につき一名お申し込みできます。記入欄の三つの枠に、 ①名前欄に〈氏名〉②メール欄に〈電子メールアドレス〉③メッセージ欄に〈11月3日公演〉とそれぞれ記入して、送信ボタンをクリックしてください。三つの枠のすべてに記入しないと送信できません(その他、ご要望やご質問がある場合はメッセージ欄にご記入ください)。申し込み後3日以内に受付完了のメールを送信します(3日経ってもこちらからの返信がない場合は、再度、申込フォームの「メッセージ欄」にその旨を書いて送ってください)。
*〈申込フォーム〉での申し込みができない場合やメールアドレスをお持ちでない場合は、チラシ画像に記載の番号へ電話でお申し込みください。
*申込者の皆様のメールアドレスは、本公演に関する事務連絡およびご案内目的のみに利用いたします。本目的以外の用途での利用は一切いたしません。
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