公演名称

〈太宰治「新樹の言葉」と「走れメロス」 講座・朗読・芝居の会〉の申込

公演概要

日時:2025年11月3日(月、文化の日)開場13:30 開演14:00 終演予定 15:30/会場:こうふ亀屋座 (甲府市丸の内1丁目11-5)/主催:甲府 文と芸の会/料金 無料/要 事前申込・先着90名/内容:第Ⅰ部 講座・朗読 「新樹の言葉」と「走れメロス」講師 小林一之(山梨英和大学特任教授)朗読 エイコ、第Ⅱ部 独り芝居 「走れメロス」俳優 有馬眞胤(劇団四季出身、蜷川幸雄演出作品に20年間参加、一篇の小説を全て覚えて演じます)・下座(三味線)エイコ

申込方法

右下の〈申込フォーム〉から一回につき一名お申し込みできます。記入欄の三つの枠に、 ①名前欄に〈氏名〉②メール欄に〈電子メールアドレス〉③メッセージ欄に〈11月3日公演〉とそれぞれ記入して、送信ボタンをクリックしてください。三つの枠のすべてに記入しないと送信できません(その他、ご要望やご質問がある場合はメッセージ欄にご記入ください)。申し込み後3日以内に受付完了のメールを送信します(3日経ってもこちらからの返信がない場合は、再度、申込フォームの「メッセージ欄」にその旨を書いて送ってください)。 *〈申込フォーム〉での申し込みができない場合やメールアドレスをお持ちでない場合は、チラシ画像に記載の番号へ電話でお申し込みください。 *申込者の皆様のメールアドレスは、本公演に関する事務連絡およびご案内目的のみに利用いたします。本目的以外の用途での利用は一切いたしません。

2016年10月16日日曜日

《変わらない》 HINTO『WC』

 HINTOの新アルバム『WC』から前々回まで二回に分けて、『なつかしい人』と『花をかう』を取り上げた。


 書きあげてから気づいたのだが、この二つには重なる言葉があった。「変わらずいよう」と「変わらない為の理由を探しながら」である。
 このアルバムで作者の安部コウセイは《変わらない》というモチーフを追いかけているようだ。

  時間がたったら変わるのが普通だと言うけど
  変わらずいよう
     『なつかしい人』

  俺は今日も変わらない為の理由を
  探しながら 町を歩いて いるよ
     『花をかう』

 『なつかしい人』では「僕達」の誓いの言葉、「変わらずいよう」として、『花をかう』では「俺」の「変わらない為の理由」を探す、自らへの問いかけとして、《変わらない》というモチーフが表されている。ラブソングという枠組の中で、《変わらない》ことが愛を支える、あるいは愛が《変わらない》ことを支えるようにして、歌に織り込まれている。(ここまで書いてきて、脈略なく、堕落モーションFOLK2『夢の中の夢』の最後「変わらない愛を 祈り続けてる」が浮かんできたことを記す。)

 『WC』収録曲には他にも同じような言葉があったはずだ。そう思い、歌詞カードを読み直してみた。『かるま』『風鈴』に「変わらない」、『ザ・ばんど』に「変われない」という言葉があった。『WC』の曲数は九つだが、『なつかしい人』『花をかう』を合わせて、《変わらない》(「変われない」を含めて)というモチーフの歌が五つある。
 
  他人と違うとこ すがるには
  少し大人になりすぎた
  変わらないカルマ 憐れむな
  私なりには大事

  他人と同じとこ 目指すには
  少し大人になりすぎた
  変わらないカルマ 憐れむな
  私なりに生きてく
      『かるま』


 『かるま』の歌の主体「私」は女性。若いのではあるがそう若くもないとも言える「少し大人になりすぎた」女性の視点から、「変わらないカルマ」の日常が語られている。作者のストーリーテリングは巧みだ。「カルマ」はこの言葉の原義の「行為」だと捉えていいだろうか。「お仕事」「飲み」「嘘だらけの毎日」、都市生活の行為。「漫画の新刊」「コンビニ」「満月の夜」、都市生活の風景。「まあまあタイプの顔」だが「退屈すぎる会話」の男。「ぬるい幸せ」の日々。そのような日常を生きる自分を自ら憐れむことはない。「変わらないカルマ」も「私なりには大事」なのだから、「私なりに生きてく」。一見すると表層的な物語のようだが、作者安部コウセイの視線は深いところまで届いている。ひねくれすぐれている。2016年という現在のリアルな都市の詩だ。

 『花をかう』の主体「俺」は男、『かるま』の「私」は女。前者は「変わらない為の理由を探し」、後者は「変わらないカルマ 憐れむな」と自らに言い聞かせる。『WC』という題名はその名が示す通り、男女の間の隔たりを象徴しているそうだが、この二つの歌をみても、《変わらない》ことに対する男女のありかたの差異が伝わる。『なつかしい人』では、「僕」と「貴方」の二人から成る「僕達」は、「変わらずいよう」という「同じ答えが欲しい」ようだが。


  あー 風のままに吹かれて
  そっと 鳴らすよ
  あー なすがままの世界で
  ずっと 変わらない
     『風鈴』

  もうちょっとちゃんとした大人になれる筈だったけど
  依然マイペースさ 成り行きまかせ
  あの日から変われない セブンティーン
     『ザ・ばんど』

 『風鈴』は不思議な歌。歌の中の人間関係が読み取りにくい。もしかすると、この歌の主体は「風鈴」なのかもしれないと思うほどだ。「風鈴」はその姿が忘れ去られるほど変わらない。『ザ・ばんど』は「バンドマンもの」系譜の作品だが、『WC』収録曲の配置の最後にあり、HINTOの変わらない姿を、意外なほど素直に伝えようとしている。


 そもそも、アルバム『WC』の初めの曲『なつかしい人』には、100年という時間の隔たりがあったとしても《変わらない》、そのことへの祈りが込められているのではないだろうか。

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