公演名称

〈太宰治「新樹の言葉」と「走れメロス」 講座・朗読・芝居の会〉の申込

公演概要

日時:2025年11月3日(月、文化の日)開場13:30 開演14:00 終演予定 15:30/会場:こうふ亀屋座 (甲府市丸の内1丁目11-5)/主催:甲府 文と芸の会/料金 無料/要 事前申込・先着90名/内容:第Ⅰ部 講座・朗読 「新樹の言葉」と「走れメロス」講師 小林一之(山梨英和大学特任教授)朗読 エイコ、第Ⅱ部 独り芝居 「走れメロス」俳優 有馬眞胤(劇団四季出身、蜷川幸雄演出作品に20年間参加、一篇の小説を全て覚えて演じます)・下座(三味線)エイコ

申込方法

右下の〈申込フォーム〉から一回につき一名お申し込みできます。記入欄の三つの枠に、 ①名前欄に〈氏名〉②メール欄に〈電子メールアドレス〉③メッセージ欄に〈11月3日公演〉とそれぞれ記入して、送信ボタンをクリックしてください。三つの枠のすべてに記入しないと送信できません(その他、ご要望やご質問がある場合はメッセージ欄にご記入ください)。申し込み後3日以内に受付完了のメールを送信します(3日経ってもこちらからの返信がない場合は、再度、申込フォームの「メッセージ欄」にその旨を書いて送ってください)。 *〈申込フォーム〉での申し込みができない場合やメールアドレスをお持ちでない場合は、チラシ画像に記載の番号へ電話でお申し込みください。 *申込者の皆様のメールアドレスは、本公演に関する事務連絡およびご案内目的のみに利用いたします。本目的以外の用途での利用は一切いたしません。

2024年2月29日木曜日

妄想的なあまりに妄想的な……「花屋の娘」[志村正彦LN343]

 フジファブリック『花屋の娘』は、志村正彦的なあまりに志村正彦的な歌である。フジファブリック Official Channelにある楽曲をまず聴いて、歌詞も読んでみよう。



    花屋の娘(作詞・作曲:志村正彦)


  夕暮れの路面電車 人気は無いのに
  座らないで外見てた
  暇つぶしに駅前の花屋さんの娘にちょっと恋をした


  どこに行きましょうか?と僕を見る
  その瞳が眩しくて
  そのうち消えてしまった そのあの娘は
  野に咲く花の様

  その娘の名前を菫(すみれ)と名付けました

  妄想が更に膨らんで 二人でちょっと
  公園に行ってみたんです
  かくれんぼ 通せんぼ ブランコに乗ったり
  追いかけっこしたりして

  どこにいきましょうか?と僕を見る
  その瞳が眩しくて
  そのうち消えてしまった そのあの娘は
  野に咲く花の様

  夕暮れの路面電車 人気は無いのに
  座らないで外見てた
  暇つぶしに駅前の花屋さんの娘にちょっと恋をした


 歌の主体は路面電車の中から外へと眼差しを向けている。その視界に〈駅前の花屋さんの娘〉が現れる。実際に見ているというより、心の中のスクリーンで見ているのだろう。電車の窓がスクリーンの枠となる。ここまでなら、主体が外の風景を見て何らかの想像をするという歌で終わっていただろう。これはよくあるパターンでもある。しかし、志村はそのようなパターンを超えていく。

 歌の主体は〈暇つぶし〉に花屋の娘に〈ちょっと恋をした〉。恋をしたというように〈た〉という完了形が使われているので、すでに刹那の瞬間に、恋は成立したのだ。だからこそ、花屋の娘が〈どこに行きましょうか?〉と声をかける。

 花屋の娘の〈瞳〉は眩しく、その眼差しは幾分か誘惑的だ。僕の欲望は昂じるのだが、娘はそのうち消えてしまう。〈そのあの娘は〉というフレーズが秀逸だ。志村は、所謂「こそあど言葉」の使い方が巧みだ。〈その娘〉から〈あの娘〉へと眼差しの対象が変化し、娘の像は消えていく。歌の主体と娘の眼差しは、結局、すれちがいに終わったようだ。恋は消滅した。

 その結果、想像というよりも妄想的な世界が広がっていく。〈娘〉は〈野に咲く花〉のようであり、さらに、〈菫(すみれ)〉と名付けられる。妄想はさらに膨らみ、二人は〈公園〉に行く。〈かくれんぼ 通せんぼ〉する二人。〈ブランコに乗ったり/追いかけっこしたり〉する二人。妄想の世界では二人の眼差しが互いを見つめあう。


  ロフトプロジェクトの「現時点で最高の音が詰まった2ndミニ・アルバム『アラモード』、遂にリリース!」というインタビューで、志村は〈今回の歌詞で特に思い入れがあるのは?〉という問いにこう答えている。

志村 1曲目の「花屋の娘」ですね。これはなんか勝手に、とある女子を見て、その人が気になって妄想して…今まで割と格好つける感じの「悲しくったってさ」とか強がるのがあったんですけど、それとは別に「はかない」って言ってるのも別の軸でありつつ、あんまり考えずに、気持ち悪いとか、人間の誰しもある、人には見せられない恥ずかしい部分というか、そういうのもやってしまおうと。もっと気持ち悪いのもたくさんあります(笑)。


 妄想とは確かに〈人には見せられない恥ずかしい部分〉でもある。だからこそ、妄想はその人が隠し持つ享楽に触れる。「花屋の娘」は志村の享楽も解放しているのだろう。


 ここで『FAB LIST I  2004~2009』のファン投票の1位から10位までの作品を振り返ってみよう。

   1 .赤黄色の金木犀
   2. 星降る夜になったら
   3. 若者のすべて
   4. 茜色の夕日
   5. バウムクーヘン
   6. 虹
   7. 陽炎
   8. サボテンレコード
   9. 銀河 (Album ver.)
  10. 花屋の娘


 一般的な知名度は低いのだろうが、「花屋の娘」は10位に輝いている。妄想的なあまりに妄想的なこの歌を愛する人が多いのだろう。人はみな妄想する、とジャック・ラカンも語っている。

 楽曲、アレンジ、演奏もすばらしい。最後の「恋をした」でピシッと終わるのも良い。妄想を断ち切るようにして、歌が閉じられていく。


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