公演名称

〈太宰治「新樹の言葉」と「走れメロス」 講座・朗読・芝居の会〉の申込

公演概要

日時:2025年11月3日(月、文化の日)開場13:30 開演14:00 終演予定 15:30/会場:こうふ亀屋座 (甲府市丸の内1丁目11-5)/主催:甲府 文と芸の会/料金 無料/要 事前申込・先着90名/内容:第Ⅰ部 講座・朗読 「新樹の言葉」と「走れメロス」講師 小林一之(山梨英和大学特任教授)朗読 エイコ、第Ⅱ部 独り芝居 「走れメロス」俳優 有馬眞胤(劇団四季出身、蜷川幸雄演出作品に20年間参加、一篇の小説を全て覚えて演じます)・下座(三味線)エイコ

申込方法

右下の〈申込フォーム〉から一回につき一名お申し込みできます。記入欄の三つの枠に、 ①名前欄に〈氏名〉②メール欄に〈電子メールアドレス〉③メッセージ欄に〈11月3日公演〉とそれぞれ記入して、送信ボタンをクリックしてください。三つの枠のすべてに記入しないと送信できません(その他、ご要望やご質問がある場合はメッセージ欄にご記入ください)。申し込み後3日以内に受付完了のメールを送信します(3日経ってもこちらからの返信がない場合は、再度、申込フォームの「メッセージ欄」にその旨を書いて送ってください)。 *〈申込フォーム〉での申し込みができない場合やメールアドレスをお持ちでない場合は、チラシ画像に記載の番号へ電話でお申し込みください。 *申込者の皆様のメールアドレスは、本公演に関する事務連絡およびご案内目的のみに利用いたします。本目的以外の用途での利用は一切いたしません。

2023年9月10日日曜日

夢の領野の〈ソレ〉 [志村正彦LN337]

 志村正彦・フジファブリック『唇のソレ』(詞・曲:志村正彦)の楽曲は夢のなかで「睡眠作曲」によって作られたが、歌詞も夢に影響によって作られたのではないだろうか。「催眠作詞」、夢工作による作詞の過程である。

 『唇のソレ』の結びの一節である。


  それでもやっぱそれでいてやっぱり唇のソレがいい!


  〈それでも〉〈それでいて〉〈ソレがいい〉の〈それ〉音の反復と連鎖。〈やっぱ〉〈やっぱり〉の音の反復。それらの音がもつれ合いながら複雑に絡み合って、〈唇のソレがいい!〉と歌われる。音の連鎖と反復によって〈ソレ〉は発話されたのだが、イメージとしても夢の領野に登場したのではないだろうか。


 ジャック・ラカンは『精神分析の四基本概念』の「Ⅵ 目と眼差しの分裂」で、〈夢の領野ではさまざまなイメージの特徴とは、「それが現れる」ということです〉と指摘し、次のように述べている。(改訳文庫版「上」p.166-167)


  夢テクストを座標の中に位置づけ直してみてください。そうすれば「それが現れる」が前面に出ているのが解るでしょう。それは、それを位置づけるさまざまな特徴とともにあまりに前面に出ているので――それらの特徴は、覚醒状態において熟視されているものなら持つはずの地平という性質を持たず、閉じているということや、また夢のイメージの方から出現してきたり、陰影をなしたり、シミになったりするという性質、さらにはそれらのイメージの色が強調されたりすることなどですが――夢における我われの位置は、結局のところ本質的には見ている人の位置とは言えないほどです。


 夢の中で〈それ〉が現れる。〈それ〉はあまりにも前面に出ている。〈それ〉は陰翳をなしたり、シミになったり、色が強調されている。夢の中の〈それ〉とは〈それ〉としか名付けられないものである。私たちは夢の中で〈それ〉に出会う。〈それ〉は人であったり物であったり風景であったりするが、現実の〈それ〉とは異なっている。また、説明しようもなく、〈それ〉としか伝えられない感触がある。〈それ〉は覚醒後に消えていく。覚醒直後は記憶が残っていたとしても、時間の経過と共に、実質が失われ、〈それ〉としか言いようのないものに変質する。


 志村正彦が『唇のソレ』で歌いたかった〈ソレ〉は、具体的には〈唇の脇の素敵なホクロ〉だった。唇の〈ホクロ〉は、〈僕〉の欲望の対象である。フロイトもラカンも、夢は主体の欲望を成就すると述べている。

 唇の〈ホクロ〉が〈僕〉の夢のスクリーンに登場する。〈ホクロ〉は夢の前面に現れて、陰翳をなし、シミのように浮かんでくる。〈ホクロ〉は次第にその具象性を剥ぎ取られ、〈ソレ〉としか名付けられない、曖昧なとらえがたいものに変換されてゆく。夢のなかで欲望の対象は次第に享楽の対象となっていく。〈ソレ〉は〈僕〉の享楽の対象と化す。


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