公演名称

〈太宰治「新樹の言葉」と「走れメロス」 講座・朗読・芝居の会〉の申込

公演概要

日時:2025年11月3日(月、文化の日)開場13:30 開演14:00 終演予定 15:30/会場:こうふ亀屋座 (甲府市丸の内1丁目11-5)/主催:甲府 文と芸の会/料金 無料/要 事前申込・先着90名/内容:第Ⅰ部 講座・朗読 「新樹の言葉」と「走れメロス」講師 小林一之(山梨英和大学特任教授)朗読 エイコ、第Ⅱ部 独り芝居 「走れメロス」俳優 有馬眞胤(劇団四季出身、蜷川幸雄演出作品に20年間参加、一篇の小説を全て覚えて演じます)・下座(三味線)エイコ

申込方法

右下の〈申込フォーム〉から一回につき一名お申し込みできます。記入欄の三つの枠に、 ①名前欄に〈氏名〉②メール欄に〈電子メールアドレス〉③メッセージ欄に〈11月3日公演〉とそれぞれ記入して、送信ボタンをクリックしてください。三つの枠のすべてに記入しないと送信できません(その他、ご要望やご質問がある場合はメッセージ欄にご記入ください)。申し込み後3日以内に受付完了のメールを送信します(3日経ってもこちらからの返信がない場合は、再度、申込フォームの「メッセージ欄」にその旨を書いて送ってください)。 *〈申込フォーム〉での申し込みができない場合やメールアドレスをお持ちでない場合は、チラシ画像に記載の番号へ電話でお申し込みください。 *申込者の皆様のメールアドレスは、本公演に関する事務連絡およびご案内目的のみに利用いたします。本目的以外の用途での利用は一切いたしません。

2023年7月30日日曜日

「睡眠作曲」[志村正彦LN334]

 志村正彦は〈フジファブリック 『FAB FOX』インタビュー〉で、『唇のソレ』は〈夢の中で作ったんですよ〉と述べている。『志村日記』(『東京、音楽、ロックンロール』)の2004年10月20日分は「睡眠作曲」と題して、次のことが書かれている。

      

 ライブ、ラジオ、取材、リハ、ライブ、ラジオ、取材、リハ。つて感じの毎日で忙しいです。はい。
 それもあって、遂に!
 やりました…やりましたよ!
 夢の中で曲を作りました! これ、ずつとやりたかったことです。この日が来ることを待ってました。
 夢の中でですね、バンドで新曲作りのセッションをしていたのです。そしてある程度まとまつてきたところで俺は気付いたのです。
「これ、夢だ…まずい! 起きたら忘れてしまう!」と。そしてメンバーに、「多分、今、夢の中だから起きたら忘れてしまいそうだから、もう何回か確認のために通してもらっていい?」と言って、各パートを覚えました。そして、「もう大丈夫だ。起きるぞ!」と言って目を覚まし、すぐレコーダーに吹き込んだのでした。
 あのポール・マッカートニーも名曲“イエスタデイ”を寝てる時に作ったらしいです。でもまあ、そこまでちゃんとしたものでは全然なかったのですが。
 しかしこれ。毎夜できたなら最高です。何故なら今、曲作りに費やしている時間を、映画観に行ったり本読んだり、バッティングセンター行ったり、漫画喫茶に行ったりできますし。で、寝て、朝起きたら曲がポン!ですよ。そこを目指したいと思います。
 それに朝ちょっと体が重いとき、「曲作りをする為に寝ますわ」と言えますしね。


 この2004年10月20日の「睡眠作曲」という日記には具体的な曲名は記されていないが、先ほど引用したインタビューでは『唇のソレ』と明記されている。また、『FAB BOOK』にも『唇のソレ』について次のコメントが載っている。


「睡眠作曲って言ってるんですけど、これは夢の中でつくった曲で、その夢の中で加藤さんがこういうふうに弾いてたんで、そのとおりに弾いてくれっていう話をしたんです」(志村)


 『志村日記』2004年10月20日の〈夢の中で曲を作りました! これ、ずつとやりたかったことです。この日が来ることを待ってました〉というのは『唇のソレ』であると考えて間違いはないだろう。つまり、「睡眠作曲」による初めての完成作がこの曲だった。


 「睡眠作曲」とはどのようなものか。「睡眠作曲」とは厳密にいえば「睡眠作曲の夢」によって作られる曲であるので、夢の形成という観点から考えてみたい。

 まず自分自身の夢を振り返ると、音楽が聞こえてくる夢を見たことはほどんどない。ほとんどない、と書いたのは、ロックバンドのライブ演奏の夢を見たことは何度かあるからだ。(その中の一つはフジファブリックだったような気もする。実際の演奏を聞いたことはないのだが)それでも、そういう夢はライブ演奏の場にいるという出来事が中心である。覚醒直後はその場面の映像の記憶はある程度残る。しかし、音は補助的なものにすぎないためか、その記憶は残らない。

 志村正彦の場合、流石と言うべきか、夢の中で音楽を演奏し作曲している。精神分析の創始者ジグムント・フロイトは、『夢解釈』(1900年)で、夢は欲望の成就であると説いた。フロイトの夢理論に依拠すれば、志村の作曲への欲望が「睡眠作曲」の夢をもたらしたと考えられる。夢は無意識によって形成される。志村が無意識の中で作曲を進めていた楽曲が、自らの欲望成就のプロセスによって、顕在的な夢として生み出されたのだろう。

 そう考えているうちに、文章を書いている夢を見たことが何度もあることを思い出した。言葉が文字として見えてくる。その文字つなげていくと何らかの意味が作られていく。夢の中ではある種の手応えを感じることもあるのだが、夢からの覚醒後は何も覚えていない。文字はすぐに消えていった。僕の場合は、言葉、文字に対する無意識の欲望を成就する夢だったのであろう。


 『志村日記』2005年1月10日「再び山梨に。」では、曲作りについて〈今年は地道につくっていきたいですね。あ、睡眠作曲はやっていきますけど。〉とある。『唇のソレ』以降、「睡眠作曲」によって作られた完成曲があるかどうかは分からないが、夢や無意識の形成物が志村正彦の作品に深く影響を与えていた、と考えることはできるかもしれない。


   [この項続く]


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