公演名称

11月3日午後1時30分開場、こうふ亀屋座でお待ちしております。〈太宰治「新樹の言葉」と「走れメロス」 講座・朗読・芝居の会〉

公演概要

日時:2025年11月3日(月、文化の日)開場13:30 開演14:00 終演予定 15:30/会場:こうふ亀屋座 (甲府市丸の内1丁目11-5)/主催:甲府 文と芸の会/料金 無料/要 事前申込・先着90名/内容:第Ⅰ部 講座・朗読 「新樹の言葉」と「走れメロス」講師 小林一之(山梨英和大学特任教授)朗読 エイコ、第Ⅱ部 独り芝居 「走れメロス」俳優 有馬眞胤(劇団四季出身、蜷川幸雄演出作品に20年間参加、一篇の小説を全て覚えて演じます)・下座(三味線)エイコ

申込方法

右下の〈申込フォーム〉から一回につき一名お申し込みできます。記入欄の三つの枠に、 ①名前欄に〈氏名〉②メール欄に〈電子メールアドレス〉③メッセージ欄に〈11月3日公演〉とそれぞれ記入して、送信ボタンをクリックしてください。三つの枠のすべてに記入しないと送信できません(その他、ご要望やご質問がある場合はメッセージ欄にご記入ください)。申し込み後3日以内に受付完了のメールを送信します(3日経ってもこちらからの返信がない場合は、再度、申込フォームの「メッセージ欄」にその旨を書いて送ってください)。 *〈申込フォーム〉での申し込みができない場合やメールアドレスをお持ちでない場合は、チラシ画像に記載の番号へ電話でお申し込みください。 *申込者の皆様のメールアドレスは、本公演に関する事務連絡およびご案内目的のみに利用いたします。本目的以外の用途での利用は一切いたしません。

2017年4月17日月曜日

Felix Pappalardiの手紙

 今夜は激しい雨が降っている。
 桜の季節の終わりには冷たい大粒の雨が降る。毎年そうとは限らない。でも、いつもそんな気がする。

 ブログを書き始めるとき、一年前に何を書いたのか振り返ることがたまにある。昨年の今日、4月17日は「Felix Pappalardiの悲劇」という題だった。この日は彼の命日。それから1年後の今日も再び彼に関するある出来事に触れてみたい。『桜の季節』の「愛をこめて手紙をしたためよう」に触発されてなのか、ある手紙のことを思い出している。

 僕はFelix Pappalardi(フェリックス・パッパラルディ)に手紙を書いたことがある。1973年夏の武道館ライブの後のことなので、その年の秋だったように思う。もう四十数年の時が流れているので記憶はおぼろげだ。

 当時の僕は中学三年生。そのレベルの拙い英語で何を書きたかったのか、どうしてファンレターを書く気になったのかもはっきりしないが、Mountain(マウンテン)の武道館ライブを直に聴いた感動を言葉にして伝えたい欲望があったとしか言いようがない。(それはこのようなブログを書いている今とどこかでつながっているのかもしれない)
 後にも先にもこれ以外にファンレターを書いたことはない。もちろん初めてのAir Mailだった。ほとんど自己満足のようなものだから、書けばそれで終わりでもよかったのだろうが、結局、僕は投函した。宛先は所属先のアメリカのレコード会社だった。

 冬が近づく頃、Air Mailの手紙を生まれて初めて受け取った。どうして海外から手紙が届くのか、よく分からないままに封筒を見ると、Felix Pappalardiという文字があった。信じられないまま開封すると、すべて自筆で書かれた便箋三枚があった。末尾にFelix PappalardiとGail Collins の連名の署名があった。便箋はロサンゼルスのホテルのもので、とても薄くて独特の手触りの紙だったことをよく覚えている。滞在先のホテルで二人が書いたのだろう。

  ファンレターに対する形式的な内容の返信かもしれないとも思ったが文面を読むと、僕の手紙に対する本人の言葉としか思えない感触が確かにあった。武道館ライブの感想に対する感謝の言葉、制作中のアルバム(名前はなかったが、翌年の1974年にリリースの『Avalanche(雪崩)』というアルバムを指していたのだろう)についての言及、日本に対する印象や関心が綴られていたと記憶している。記憶しているとしか書けないのは、その後、東京での学生生活を含め三度ほどの転居でその手紙が行方不明になってしまったからだ。(まだどこかにあるのではないかという望みは捨てていない。僕にとっての宝物であるこの手紙を失うことは残念というよりも、申し訳ないというか罪のようなものを感じてしまう)

 制作中のアルバムのコピーを送ってもよいとも書かれてあったが、畏れ多いような気持ちになって、どう返事を書こうかなどと考えているうち に時間が経ち、返信の機会を失くしてしまった。そのことにもどこか罪の気持ちが残っている。
 極東の国の素性も分からない一少年からのたどたどしいファンレターに、Felix PappalardiとGail Collins は誠実にあたたかい文面の手紙を返してくれた。今日はそのことをこの場に記しておきたかった。

 70年代前半の時代にはまだどこかに、ロック音楽を通じた音楽家と聴き手との間のつながり、音楽を通じた共同体という理想が共有されていたのかもしれない。それはある種の美しい幻想だったのだろうが、Felix Pappalardiからの手紙は現実の出来事だった。

 Felix Pappalardiが歌う映像をネットで探した。Mountain の『Theme For An Imaginary Western (想像されたウェスタンのテーマ)』。Pappalardi/Collinsのオリジナル作品ではなく、作曲JACK BRUCE /作詞 PETE BROWNだ。JACK BRUCEのソロアルバムで発表され、後にMountainがレコーディングした。
 映像は1970年夏の「the Cincinnati Pop Festival」を収録した番組「Midsummer Rock Festival」のもの。タイムコードが入っているので編集段階のようだ。画質が粗いが、あの時代のロックフェスティバルの雰囲気が濃厚だ。四人のオリジナルメンバー、ギターLeslie West(レスリー・ウェスト)、ドラムスCorky Laingコーキー・レイング、キーボードSteve Knight(スティーヴ・ナイト)と共に演奏しているのも貴重だ。

 彼の声は憂愁をおびているが、のびやかで力強く広がっていく。




  手紙を受け取った十年後、1983年にFelix Pappalardiは亡くなった。彼の手紙が行方不明のままだということがずっと心の痛みとなっている。

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