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2024年8月11日日曜日

Xの呟きから 「THE BEST MOMENT」ライブ[志村正彦LN351]

  フジファブリック20周年記念ライブ「THE BEST MOMENT」から一週間が過ぎた。あの夜、なかなか眠れないなかでXの呟きを読んだ。4日と5日の呟きのなかで心を動かされたものについて触れてみたい。


 はじめは、メジャーファーストアルバムのプロデューサー片寄明人氏@akitokatayose。


Aug 5 ひっそり参加するつもりでしたが、金澤くんのMCでまさかの紹介をして頂いたので…1stアルバムのプロデュース以来、20年ぶりにお手伝いをさせて頂きました。2024年のフジファブリックのステージに志村正彦を呼んで共に祝おうと、志村家、メンバー、スタッフ、みんなで考えた選曲、演出、映像でした。

Aug 5 志村くんの歌とギターは、EMI期ディレクター今村くんに相談し、志村くんが当時OKを出したマスターを借り、エンジニアの上條雄次と2人でMIX用に施されたエフェクトや調整を外し、歌った瞬間、弾いた瞬間を封じ込めた生々しい処理に仕上げました。そこに今のフジの演奏が重なった時、それは魔法でした。


 志村は片寄氏を音楽的にも人物的にもとても慕っていた。その片寄氏が演出に加わったことが「THE BEST MOMENT」の成功につながった。彼の呟きから、志村正彦をステージに呼んで共に祝うという意図があったこと、志村家、メンバー、スタッフ、そして、片寄明人氏、今村圭介氏、上條雄次氏(山梨県出身のレコーディングエンジニア。志村日記にも登場する)が協力したことが分かる。

 具体的な作業としては、録音マスターテープからMIX用のたエフェクトや調整を外して音源を作成した。確かに、8月4日の志村正彦の声にはある種の生々しさがあった。まさにその場で生で歌っているような臨場感と言ってもよい。山内総一郎・金澤ダイスケ・加藤慎一と二人のサポーターメンバーの演奏との重ね合わせもかなりリハーサルが必要だっただろう。さらに、編集された映像とのタイミングの調整もある。丁寧に時間をかけて演出されたステージは確かに魔法をかけられたようだった。魔法ではあるのだが、極めてリアルな魔法、現実のような魔法であった。

 今村圭介氏 @KeisukeImamura の呟きも記しておきたい。

Aug 4 フジファブリックのデビュー20周年記念スペシャルライブへ。感情が溢れすぎて止まらなかった。終演後、同じくライブに来てたエンジニアの川面さんとKJと合流して色々語り合ったら少し元気になりました笑   またいつか! 

  KJとは上條雄次氏のことだと思われる。今村氏は志村在籍EMI時代の4枚のアルバムの制作を担当し、志村を支えた方なので、いろいろな感情が溢れてきたのだろう。


 音楽関係者が多いなかで、映画監督の塚本晋也氏のX@tsukamoto_shiny  が目にとまった。

Aug 4 ふとした機会を得、フジファブリック20年記念ライブに。『悪夢探偵』で蒼い鳥を作ってもらった。映像の志村正彦と生のバンドがうまくミックスされ、そこに志村がいるようだった。画面の下を見るとメンバーは激しく動いているが、マイクの前は無人。あの頃から若い人が亡くなることへの恐れが強くなった


 塚本晋也監督は志村正彦の音楽を深く理解していた。『悪夢探偵』のエンディングテーマ曲『蒼い鳥』の制作を依頼した。二人は『QRANK』という雑誌で対談しているが、音楽と映画、その関係について考える上で非常に貴重なものである。(後日、この対談について書いてみたい)

 塚本監督の代表作『鉄男』はリアルタイムで見ている。とにかく衝撃だった。それ以来ほとんどの作品を見てきた。映画監督として異能を発揮してきたが、俳優としても独自の存在感を持つ。


 ライブの翌日、新宿のシネマカリテでピエール・フォルデス監督のアニメ映画『めくらやなぎと眠る女』日本語版を見てから甲府に帰った。

 この作品は、村上春樹の六つの短編「かえるくん、東京を救う」「バースデイ・ガール」「かいつぶり」「ねじまき鳥と火曜日の女たち」「UFOが釧路に降りる」「めくらやなぎと、眠る女」を自由に組み合わせて作られた。今年度は前期のゼミナールで、「UFOが釧路に降りる」「かえるくん、東京を救う」を含む連作短編集『神の子どもたちはみな踊る』を学生と一緒に読んできたこともあって、ぜひ見てみたい作品だった。

 中心人物は「UFOが釧路に降りる」の小村だが、それに続く重要人物が「かえるくん、東京を救う」の片桐だ。片桐はある信用金庫新宿支店の係長補佐を勤める中年男性。原作では〈私はとても平凡な人間です。いや、平凡以下です〉と述べているが、かえるくんが東京を地震から救うことに協力する重要な役割を持つ。私のゼミでも学生たちは、この片桐という存在をどう捉えるか、活発に議論していた。

 このアニメには字幕版と日本語版の二つのヴァージョンがあるが、日本語で吹き替えて制作された日本語版で、片桐の声優を担当したのが塚本晋也だった。その声と語りは片桐のイメージに重なるところが多かった。難しいキャラクターの微妙な心の陰影を塚本は的確に表現していた。声優としての才能も抜群であることが分かった。


 塚本監督のXを読み、特に〈あの頃から若い人が亡くなることへの恐れが強くなった〉という言葉に心を動かされた。その翌日、声優としての声を存分に聞くことができた。片桐がリアルな存在として迫ってくるような魔法の声だった。その偶然が心のなかに深く刻まれた。


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