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2020年4月25日土曜日

Virtualな四季 [志村正彦LN253]

  「S/R(Songs to Remember)」を4回続けたが、今回は久しぶりに志村正彦ライナーノーツに戻りたい。

 コロナ危機の状況下、大学の新学期は延期され休校状態になっている。僕も在宅勤務が基本となった。「Stay Home」である。
 5月中旬から予定されている遠隔授業、Online授業の環境整備の担当として、教職員、学生、ネットワーク会社と、毎日二十を超えるメールのやりとりをしている。校務の仕事がものすごく増えて、正直、とても疲れている。オンとオフの切り替えができない。実務文書やメールばかり書いているので、ブログのテキストを書くことは一種の解放となる。

 我が家のCDプレーヤーのトレイには通常、フジファブリック『SINGLES 2004-2009』か『シングルB面集 2004-2009』が載せてある。フジファブリックは、PCやネットワークでなく、CD音源ともう20年も愛用している小型のブックシェルフスピーカーを通した音で聴きたいのだ。
 この前、『SINGLES 2004-2009』を久しぶりにかけた。このところ、音楽を聴く気持ちにも慣れないほど仕事に追われていた。そんな状態で、スピーカーが、1. 桜の季節、2. 陽炎、3. 赤黄色の金木犀、4. 銀河と、四季盤の曲を次々に鳴らしていった。目をつぶって志村正彦・フジファブリックの春夏秋冬の歌に耳を傾けた。

 三月末から家にいる時間が多くなり、外の世界と隔てられている。季節から遠ざかっているという感覚だ。そんな自分の身体に、「桜の季節」、「陽炎」の季節、「赤黄色の金木犀」の季節、「きらきらの空」の季節が順々に訪れてくる、そんな気分に浸ることができた。
 僕のまわりに志村正彦が描く季節が動き出していく。「Virtualな四季」を擬似的に経験した。


桜の季節過ぎたら 遠くの町に行くのかい? 桜のように舞い散って しまうのならばやるせない    『桜の季節』


窓からそっと手を出して やんでた雨に気付いて 慌てて家を飛び出して そのうち陽が照りつけて 遠くで陽炎が揺れてる 陽炎が揺れてる    『陽炎』


赤黄色の金木犀の香りがして たまらなくなって 何故か無駄に胸が 騒いでしまう帰り道      『赤黄色の金木犀』


きらきらの空がぐらぐら動き出している! 確かな鼓動が膨らむ 動き出している!    『銀河』


 四季の移り変わりと共に、「遠くの町」「家」「帰り道」「丘」と、場所も動いていく。春夏秋冬の映像が頭の中に浮かんでくる。四季の時間と場所、この二つが連動して、志村正彦の季節の感覚とシンクロナイズしていくような感覚になった。


 時を少し遡りたい。
 3月26日(木) 午後3時08分から、NHK総合テレビで『にっぽん ぐるり「若者のすべて~フジファブリック・志村正彦がのこしたもの~」』(NHK甲府制作)が再放送された。そのことに触れたLN251で、槇原敬之『若者のすべて』の歌とコメントの映像がどうなるのかが気になると書いた。
 結果は、柴崎コウの写真を背景に彼女が歌う『若者のすべて』が流された。当然ではあろうが、やはり変更されていた。柴崎コウの『若者のすべて』の純度の高い声は素晴らしい。

 一昨日、4月23日の夜、日本テレビ「今夜くらべてみました」は、『菅田将暉が熱弁!大切な事は全てJ-POPから学んだ男と女』というタイトルだった。このタイトルに惹かれて、番組を見てみた。菅田将暉は『茜色の夕日』を聴いて音楽を始めようとしたほど志村正彦の作品を敬愛している。もしかするとという予感があった。番組は、ゲストの菅田将暉(20代)、平川美香(30代)、平野ノラ(40代)の3世代が、大切な事を学んだ曲を選んでいくという内容だった。

 「落ち込んでいる時に聴く曲」でくらべてみましたというテーマで、菅田将暉はフジファブリック『夜明けのBEAT』を選んだ。菅田は、「モテキ」の曲です、歌詞も「バクバク鳴ってる」みたいなわりと上げ目の曲で、と紹介していた。『夜明けのBEAT』が志村の声で流されて、画面にはフジファブリックの写真と共に次のような表示が出た。

  フジファブリック「夜明けのBEAT」2010
  ドラマ&映画「モテキ」の主題歌
  心踊る気持ちを疾走感あふれるビートで表現

 もっとコメントがほしかったのだが、こういう構成の番組にそれを求めても仕方がない。菅田将暉のフジファブリック愛が充分に伝わってきた。この後で『若者のすべて』がBGM的に流されるシーンもあった。

 翌日の24日、NHKBS1で「ひとモノガタリ」の『若者のすべて ~“失われた世代”のあなたへ~』が再々放送された。放送局は制作が困難なために、このところ再放送が多くなっている。
 そういう状況下ではあるが、 志村正彦の番組がこれだけ繰り返しオンエアされるのは、彼の人と音楽に対する高い評価があるからだろう。

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