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2016年1月5日火曜日

桜座という「場」

 志村正彦の歌を中心とするblogを設けているにも関わらず、正直に言うと、僕は日常の中でいつも音楽に接しているタイプの人間ではない。音楽、特に歌を聴く時間はそのことに集中したい。だから、生活の中の一部の時間を切り取り、音楽に向き合うことになる。それゆえ、ほとんど聴かない日が続くこともある。しかし、ライブについては、その場その時という「一回性」があるので、関心の高い音楽家については、できるかぎり時間を作って出かけるようにしている。山梨開催のものは特に。

 昨年の暮れ12月は、13日富士吉田リトルロボットでの佐々木健太郎&下岡晃、20日東京メルパルクホールでの鈴木慶一(45周年記念ライブ)、26日甲府CONVICTIONでのTRICERATOPS(“SHOUT TO THE STARLIGHT TOUR”追加公演)、29日甲府桜座での三上寛(「深沢七郎の世界観」ライブ)と半月ほどの間に、色々な場所に行った。中高年世代ゆえにけっこうきついものがあるが、「一回性」を逃したくないとこのような次第になる。(我ながら少しあきれてしまうが、行けるうちは行かなきゃね)いずれも様々なことを感じ、そして考えさせられた。(鈴木慶一、和田唱・TRICERATOPS、三上寛のことは後日書いてみたい)

 音楽を生で聴く場合、当然のことだが、それを聴く「場」が重要になる。
 甲府で暮らしている僕にとって、現在最も身近で大切な場が「桜座」だ。その桜座は2005年6月にオープンしたので、昨年、創立十周年を迎えた。

桜座・入口(2015年5月末撮影)

 桜座という場の魅力についてはこのblogで何度も触れてきた。オーナーの丹沢良治氏は、山梨の地場産業である貴金属業を営み、甲府で新しい街作りも進め、最近は甲府駅北口に「甲州夢小路」を展開している。
 桜座の企画や運営を担当しているのは事務局長の龍野治徳氏。地元のメディアで取り上げられたこともあったので、「新宿ピットイン」のマネージャーだったことはおぼろげに知っていたが、実際の経歴については知らなかった。ところが、昨年11月、浜野智氏のblog『毎日黄昏』(昨年末から休止中だがアーカイブを読むことはできる)の「桜座の怪物くん」を読んで、新宿というジャズの場における龍野氏の経歴や人柄の一端を知ることができた。浜野氏との交流の場面も愉快だ。

 ネットで調べてみた。90年代後半、富士見高原(長野にあるが、山梨との県境に近い)で夏に「八ヶ岳PARTY PARTY」というジャズフェスティバルが開催されていた。僕も二度ほど行った。富士見高原というあまり観光地化していない「場」であることがよかった。緑につつまれた清々しい場に、これまた商業主義的な感じがあまりない運営という組み合わせが、くつろげる雰囲気をかもしだしていた。

 好みの音楽家が多く出演し、特に森山威男(山梨の勝沼町生まれ、甲府で高校時代を過ごす)やDavid Murrayの演奏が印象深かった。(僕はDavid Murrayのサックスのファンだった。通り道を歩いていたら彼が佇んでいたので、握手してもらった。にこやかな顔、やわらかい手の感触をよく覚えている)その企画や運営を担当していたのも龍野氏のようだ。その頃から山梨に縁があったのだろうか。このジャズ・フェスティバルは確か99年を最後に(記憶が違っているかもしれないが)終わってしまい、すごく残念だった。

 この十年間で、桜座が甲府にもたらしたものはHPの「過去の公演」の記録を見ると一目瞭然だ。龍野治徳氏の力によるところが大きいのだろう。
 しかし残念なのは、地元の聴き手が少ないという現実だ。東京に近いということもあった関東圏からの客が多い。そのことはそのことでむしろ歓迎すべきなのだが、それに加えて山梨の方がたくさん来場するようになれば、より理想的な場となるだろう。

 今年は桜座でどんな出会いがあるのだろうか。

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