マカロニえんぴつの存在を知ったのは四年前のことだった。「山梨学」という授業で、志村正彦・フジファブリックを取り上げた時に、学生が書いた振り返り文のなかで「山梨県出身のボーカルがいるマカロニえんぴつも聴いてみてください」とあった。youtubeにあった音源からは、サウンドの完成度と歌詞の独自性がうかがわれた。いつかこのブログでも書きたいと思っていたのだがなかなかその機会がなかった。
この四月、山梨学院高校が優勝した春の選抜高校野球大会のMBS毎日放送の公式テーマソングが「マカロニえんぴつ」の新曲「PRAY.」であることを知った。この歌に触発されて、ここ数回書き続けてきた。NHKの「おかえり音楽室 マカロニえんぴつ はっとり」での発言や母校での演奏も参考になった。
「PRAY.」の歌詞にはこうある。
トンボは夜を越えて 飛べないキミのためと
哀しく唄う
優しく回る
正しく消える
〈トンボ〉は〈僕〉と〈祈り〉と〈君〉のために飛翔し、〈哀しく唄う〉〈優しく回る〉と旋回して、最後は〈正しく消える〉。この〈正しく消える〉がずっと気になっていた。
そのうちに「青春と一瞬」に次の一節があることに気づいた。
青春と一瞬はセットなんだぜ
間違いだらけの正義なんだぜ
風と友に贈る歌だぜ
はっとりはここで、〈青春〉を〈間違いだらけの正義〉と捉えている。「青春と一瞬」は、「二十歳過ぎてから作って、当時を思い浮かべながら、高校生とかの時の自分を書いた曲」だとされている。たとえ間違いだらけであったとしても、いや、間違いだらけであるかもしれないからこそ、〈青春〉は〈一瞬〉の輝きを放つ。そのようなメッセージを受けとることができる。
「PRAY.」は、三十歳近くになった作者はっとりが高校生の頃の自分を振り返った歌だろう。この歌の〈正しく〉は、「青春と一瞬」の〈正義〉につながる言葉だと捉えてみたい。
〈青春〉の〈間違いだらけの正義〉は、時を経て、〈哀しく唄う〉〈優しく回る〉〈正しく消える〉という軌跡を描いた、あるいは描いている、もしくは描こうとしている、ことになるだろうか。
〈間違いだらけの正義〉が〈正しく消える〉のが青年の軌跡だとしたら、それはいくぶんか苦いものでもある。ただし、正義が消えたあとに、ふたたび、もう一つの正義が飛翔すると考えてみてはどうだろうか。
はっとりにとって〈正義〉や〈正しく〉というのが大切な言葉であることは間違いない。この想いはどのようなものか。まだ充分にマカロニえんぴつの作品を聴きこんでいないので、これ以上論じることはできないが、いつかその機会を設けたい。
0 件のコメント:
コメントを投稿